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製造業がDXを実現するために意識しておきたい「攻めのIT投資」とは

レンテックインサイト編集部

IT Insight 製造業がDXを実現するために意識しておきたい「攻めのIT投資」とは

攻めのIT投資を行うことは、製造業がDXを実現するために重要な要素です。経済産業省が発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」では、レガシーシステムの刷新やサポートが終了する基幹システムの移行といった守りのIT投資が目立つことが日本企業の課題として挙げられており、攻めのIT投資への転換が必要であることが示唆されていました。

このことは製造業にとっても同様であり、企業が今後も成長し続けるためには守りのIT投資から攻めのIT投資へ転換することが求められています。今回は、製造業にとっての攻めのIT投資について考えていきます。

攻めのIT投資の定義

まずは、守りのIT投資、攻めのIT投資がそれぞれどのようなものか整理してみましょう。

守りのIT投資は、主に業務の効率化やコスト削減を目的としたものだと考えられています。既存のビジネスモデルを円滑に運用したり、維持したりするための消極的なIT投資というイメージです。例として、次のような内容が挙げられます。

  • 既存システムの定期的な更新やメンテナンスを行う
  • アナログな業務をIT化することにより、業務効率化やコストダウンを図る
  • 法規制や顧客要求へ対応する

企業にとっては、守りのIT投資も重要なことであり、完全になくせるわけでもありません。しかし、国際的な競争が激化している昨今では、既存のビジネスモデルを維持しているだけでは先進的な海外企業との競争に敗れてしまう可能性が高まりつつあります。守りのIT投資を行っているだけでは、企業が成長し続けるのは難しくなっていくでしょう。

一方で、攻めのIT投資は、新たな顧客を開拓したり、顧客満足度を高めたりして収益力を向上させるための積極的なIT投資だと考えられています。例として、次のような内容が挙げられます。

  • 製品やサービスの開発を強化する
  • ビジネスモデルの変革に取り組む
  • 新規顧客を開拓する
  • 顧客ニーズへの対応によって満足度を向上させる
  • 事業内容や製品群を拡大する

攻めのIT投資は、製造業がDXを実現して競争力を高めることに直結します。現状、日本企業は守りのIT投資の比重が大きく、攻めのIT投資に十分な予算を投入できていないことが課題と言われています。自社のIT投資のバランスを見直し、攻めのIT投資の比重を大きくしていくことを意識するのがよいでしょう。

アフターコロナを見据えて検討しておきたいSCM

製造業は攻めのIT投資としてどのようなことを行えばよいのでしょうか。選択肢の一つとして検討しておきたいのが、コロナ禍で重要性を再認識することになったSCM(サプライチェーン・マネジメント)の改善です。

SCMとは、原材料や部品が製品になって顧客の手元に渡るまでの一連のプロセス(サプライチェーン)を管理することです。製造業においては、調達・生産・物流・販売といったプロセスを経て製品が作られて、顧客の手元に渡っていきます。SCMの目的は、これらのプロセスでの部分最適を図りつつ、情報共有や連携をさせることで全体としての最適化を実現することだといえます。

コロナ禍では、人やモノの移動が制限される、需要が激しく変動する、といった想定外の事態が発生しました。その結果、SCMが脆弱で柔軟な対応ができなかった製造業は次に挙げるような影響を受けてしまいます。

  • 海外からの原材料や部品の供給が滞り生産停止に陥る
  • 急激な需要の減少で在庫を抱えてしまう
  • 急激な需要の増加に生産が追いつかずに機会損失をしてしまう

日本の製造業では、エクセルなどの比較的アナログなツールを用いてSCMを行っており、情報共有や連携がスムーズにできていないケースが多くなっています。また、一部の熟練した管理者によってサプライチェーンが成り立っていることも多く、属人化していることも課題となっています。そのようなSCMの脆弱性が、コロナ禍によって浮き彫りになったといえるでしょう。

緊急事態にも強くて柔軟な対応ができるSCMを実現するためには、IT投資によってデジタル技術を導入し、情報共有や連携がスムーズに行えるようにすることが重要です。今後もし同じような緊急事態が発生しても、原材料の部品の調達先を変更する判断が素早くできたり、需要変動を敏感に察知して生産調整を行ったりできるようになります。

SCMの改善は、業務の効率化やコスト削減を目的とする守りのIT投資の一部です。しかし、販売機会を失わずに売上を高めたり、顧客からの信頼性を向上させるための攻めのIT投資でもあります。SCMをデジタル化することは変化への対応力を高め、企業全体の最適化につながることが期待できます。

SCMのデジタル化事例を一つ紹介します。アメリカの大手電子機器メーカーでは、生産現場や設備の製造データや倉庫の在庫データ、需要データといったサプライチェーン全体のデータを収集・分析できるプラットフォームをクラウド上に構築しています。あらゆるデータを基にして生産計画や在庫管理の最適化を進めており、生産計画にかける時間を2日から4時間まで短縮することに成功。生産の歩留まりも30%削減することができたといいます。また、世界中に存在する数百社のサプライヤーの管理もしやすくなり、リードタイムを短縮する効果をあげています。

IT Insight 製造業がDXを実現するために意識しておきたい「攻めのIT投資」とは

攻めのIT投資で製造業DXを実現しましょう

今回は、製造業にとっての「攻めのIT投資」の定義や、投資先の選択肢の一つとしてSCMを紹介しました。

   

  海外企業が成長し、国際的な競争が激化している状況下において、既存のビジネスモデルを維持・運用するための守りのIT投資だけを行っていては競争力が失われてしまう可能性がありますので、製品やサービスの開発を強化したり、ビジネスモデルの変革に取り組んだりといった攻めのIT投資を行うことを意識していくことが重要です。

  また、企業の全体最適を目指したSCMの改善は、製造業がDXを実現するための第一歩になり得ます。コロナ禍で重要性を再認識した今こそ、SCMの改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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