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“タッチしないタッチパネル”の技術開発が加速

レンテックインサイト編集部

IT Insight “タッチしないタッチパネル”の技術開発が加速

  新型コロナウイルスの流行により、マスクや除菌関連など、衛生面でのニーズが高まり、要因がウイルスであることで、手に触れるモノに対する警戒感が顕在化しています。現在、多くの人の手が触る公共の場での操作パネルには、機械式ボタンやタッチパネルが採用されていますが、コロナ禍により、これらに潜在的にあった「他人が触ったものに触りたくない」「汚れた手で画面を触りたくない」といったニーズが引き出され、“タッチしないタッチパネル”など非接触操作技術への関心が一気に高まっています。

非接触技術の発表相次ぐ

 非接触技術の研究開発は以前より実施されており、ディスプレイメーカーの株式会社ジャパンディスプレイは、2019年12月に東京ビッグサイトで開催された展示会で、ホバー操作ディスプレイを披露しました。ホバーセンサーは、後付け可能なタイプの透明なセンサーパネルで、例えばカバーガラスのように、エレベーターのボタンの上に設置するだけで、非接触操作ボタンに変えることができます。披露したディスプレイは、指ならば5cm、手の平ならば10cm程度の距離から操作できます。
 電子部品大手でタッチパネルの老舗メーカーでもあるアルプスアルパイン株式会社は、「衛生面に配慮したタッチレス操作パネル」を2020年4月に発表。パネルから10cm離れた位置にある手の存在を検知し、5cmまで近づくと手の位置検知が可能となり、3cmまで近づくと指の位置まで把握することができます。また、フジテック株式会社は、自社展開するエレベーター「エクシオール」シリーズに、非接触ボタンを搭載しました。赤外線センサーに手をかざすことでボタン操作でき、2020年4月から新設向け、2020年8月から既設エレベーター向けに技術を展開しています。新光商事株式会社も、後付け可能なフレームタイプのタッチセンサーを展開し、NECマグナスコミュニケーションズ株式会社が手がける券売機に実装して、2020年7月からタッチレス券売機の実証実験を開始しています。

空中ディスプレイの注目度向上

 非接触操作パネルとしては、空中ディスプレイにも注目が集まっています。名前の通り、空中に映像を表示し、タッチパネルのように手で操作できる技術で、その近未来感からアミューズメント的要素を持つ場所などで採用されています。この空中ディスプレイ技術で存在感を放つのがアスカネット株式会社です。同社が開発した空中結像プレート「ASKA3Dプレート」は、ごく小さなミラーを、数百ミクロン単位で規則的にパターン成型した特殊なプレートです。物体の放つ光線が同プレートを通過することで、その反対側の同じ距離の位置に再び光を集めて、元の映像と同じ像が形成できる仕組みとなっています。これを赤外線センサーなどと組み合わせることで、空中映像でのタッチ操作が可能になります。新光商事や日本電通、凸版印刷、米コンバージェスプロモーションズなどがASKA3Dプレートを採用して空中ディスプレイを開発しており、アスカネットでも同製品を搭載した非接触パネルを、回転寿司チェーンのくら寿司店舗受付機に実証導入しています。
 日本カーバイド工業が手がける「空中ディスプレイ用リフレクター」も採用が進んでいます。光が入った方向に再帰反射する再帰反射シート技術を応用展開したもので、日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社やマクセル株式会社などが採用しています。そのうちマクセルでは関連製品を2021年に市場投入する計画です。
 凸版印刷株式会社では、従来品と比べて筐体の50%薄型化を実現した空中タッチディスプレイを開発し、2021年に量産試作、2022年の本格量産を目指しています。医療用機器、公共施設の設備操作盤、高いセキュリティが要求される施設の入退室管理設備などへの採用を視野に、2022年度に関連受注も含め、20億円の売上高を目指しています。同製品は、世界で初めて、液晶パネルに対して平行位置に空中映像を生成することに成功しており、反射板にはASKA3Dプレートを採用しています。従来のパネルに対して画像が約90度に出現するタイプと比べて、50%薄型化することができ、より直感的な操作を可能にしています。また、独自の高透過率TFT液晶技術と光学設計技術より、従来品に対して約5倍の輝度を有し、ゴースト像が少なく、鮮明な空中映像の生成を可能にしました。

将来的には自動車にも搭載へ

 情報通信研究機構発ベンチャーのパリティ・イノベーションズでは、空中映像・空中ディスプレイの研究開発を行っており、最新のナノテクノロジーを駆使して光学素子「パリティミラー」を開発。小型のパリティミラー(10cm角程度)を用いれば、手が届く程の短距離で空中映像を見ることができるパーソナルな装置も実現でき、自分のスマートフォンを用いて、好きな画像や動画を空中映像として表示することもできます。開発中の専用のアプリをインストールすれば、スマートフォンを空中ディスプレイに変えられるそうです。
 アスカネットが2020年5月に実施した「コロナショック前後のモノとの接触」に関する意識調査(全国の20~60代の男女1204名に実施)によると、実に80%の人がコロナショックでモノとの接触が気になるようになったと回答し、お店や施設などでやってほしい対策1位は「非接触で操作できるパネルやボタンの導入」でした。
 2021年11月竣工の分譲マンション(日鉄興和不動産株式会社)では、マンション内エレベーターにおいて、手をかざすことで操作できる「非接触ボタン」機能を採用すると発表しており、今後は身近なところから非接触操作のシーンが増えていくのは間違いないでしょう。さらに、コロナ禍による衛生面からの非接触ニーズの台頭のほかにも、自動車において、「タッチレス」入力操作はキーワードの一つとなっており、将来の自動車では、手を振ったり、叩いたりする動きで作動するような車内環境も増えていくことになるでしょう。

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