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RECAIUS™フィールドボイスインカムで新たなコミュニケーションの創造へ~東芝デジタルソリューションズ株式会社訪問レポート~

レンテックインサイト編集部

IT Insight RECAIUS™フィールドボイスインカムで新たなコミュニケーションの創造へ~東芝デジタルソリューションズ株式会社訪問レポート~

東芝デジタルソリューションズ株式会社ICTソリューション事業部(左から)
リカイアス営業部 主任 三重野 芳典氏
リカイアス技術部 チーフエバンジェリスト 香川弘一氏
リカイアス技術部 参事 掛村 篤氏
リカイアス営業部 部長代理 岸本 麻須美氏

長い歴史の中で得た知見を最大限に活用

東芝デジタルソリューションズ株式会社は、東芝グループの中でデジタルソリューションの領域を担っています。東芝グループでシステムインテグレーションに携わる部署が各社にあったことから、知見を集結するべく同社が設立されました。現在ではテクノロジー、クリエイティブ、ビジネスの領域のスペシャリストが在籍し、システムインテグレーションの枠にとどまらない価値の提供に取り組んでいます。

2021年2月15日には株式会社 東芝 スマートコミュニティセンター内に共創センター「Creative Circuit™」がオープンしました。事業戦略や構想の段階から顧客と東芝グループがコラボレーションをするためのスペースで、3Dプリンターや大型ディスプレイ、壁面や可動のホワイトボードなどを完備しています。検討の中で生まれた発想を元に3Dプリンターで試作し、IoTデバイスなどの製品を開発するといったことも可能です。

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ユーザーイノベーションを”共創”する環境が用意されている

人とのコミュニケーションを支えるRECAIUS

 同社内にIoTやAIによる価値提供を目的として誕生したのが、RECAIUS(リカイアス)です。「もともと東芝グループでは、AIの黎明期から研究を続けてきました」と香川氏が語るように、例えば封筒・はがきに書かれる郵便番号を光学文字認識(OCR)で識別して仕分けする郵便区分機やワープロでの予測変換など、昔からある製品にも東芝グループのAI技術が活用されています。

研究所のAI関連の特許が蓄積されたため、それを有効活用するべく生まれたソリューションがRECAIUSです。「理解(リカイ)+us(アス)」と「AI」を融合させた造語なのだそうです。「音声認識」「音声合成」「音声対話」「知識処理」の独自技術により、人との関わりの中で新たなコミュニケーションの価値を創造していきます。「音声認識は他社でも提供していますが、用途に応じてカスタマイズできるのが強みです」(香川氏)。

RECAIUSはユーザーの課題に応じてさまざまな利用形態が選べます。ローカルデバイスに組み込まれるソフトウエア開発キットや必要となるDB・APIを一式で提供する製品、顧客が開発するアプリケーションから呼び出すAPIのほか、スマートフォンやPC向けに提供されるアプリケーションのサービスがあります。

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ユーザーの課題に応じて、必要なサービスが選べる製品ラインアップ

用途としては、大きく分けて「ワークスタイル変革」と「組込機器・コンテンツ制作」の二つがあります。議事録の作成支援や営業担当者の日報入力を音声で行うなど、コミュニケーション改善や作業の効率化を目的とした用途と、カーナビのナビゲーションや翻訳機、駅構内におけるアナウンスといった音声合成の用途で活用されています。

RECAIUSフィールドボイスインカムで目指す“コミュニケーション革命”

今回は、RECAIUSのワークスタイル変革を支援するサービスの一つ、「RECAIUSフィールドボイスインカム」を紹介していただきました。

口頭によるコミュニケーションは、意思疎通を図り迅速なアクションにつなげるために欠かせないものですが、一方で指示漏れや認識の齟齬が生まれやすくなります。RECAIUSフィールドボイスインカムはこうした課題を解決し、音声を中心とした新たなコミュニケーションを生み出すツールです。

「既存の運用のままで導入できる構成のため、実務を行う人に負担がかかりません」と掛村氏が語る通り、インカムの変わりにスマートフォンにマイク付きのイヤフォンを接続して使うというシンプルな構成です。「スマートフォンを活用できるため、インカムと変わらない価格感での導入も可能です」(掛村氏)。

音声は全て文字化され、チャット形式で表示されます。また会話の再生ボタンをタップすれば、音声が再生されるようになっています。誰がどんなことを言ったか、後から音声とテキストで振り返りができます。

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音声の会話がチャット形式で表示され、過去にどんな会話があったのか確認できる。

RECAIUSフィールドボイスインカムはスマホアプリだけでなく、PCからも操作できます。PCから文字を打ち込むと、音声合成で発言ができます。「場所を選ばずにコミュニケーションをとることができるため、利用できるシーンも広がります」(香川氏)。

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テキストで発言する場合の操作。マイクを使えない時にも活用できる。

音声による通知だけでなく、IoT機器との連携も可能です。例えば構内で機器が故障した時、処置が必要であることをスタッフに一斉に通知する、といった用途が考えられます。またその後に誰が対応するかといったアクションについても情報を共有できます。「故障について通知を受けても、誰が対応するかわからないのでスタッフが一斉に機器の場所に集まってしまうといった問題があります。RECAIUSフィールドボイスインカムなら一番近くの人が『私が対応します』と全員に伝えることもできます」(掛村氏)。

RECAIUSフィールドボイスインカムの事例

RECAIUSフィールドボイスインカムは、旅館・ホテルや店舗、施設、イベントなどの業務において、チームの連携やコミュニケーションの改善に貢献した事例が数多くあります。そのうちの二つを紹介していただきました。

顧客情報をリアルタイムに共有し、顧客満足度を高める(元湯 陣屋旅館)

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神奈川県鶴巻温泉「元湯 陣屋旅館」は感動を与えるホスピタリティで知られ、宿泊客の多くがリピーターという圧倒的な支持を得ています。過去には倒産危機でスタッフの人数を3分の1まで減らしたということもあり、IoTなどの技術を取り入れながらスタッフがマルチタスクで効率的に業務をこなす工夫をしてきました。
陣屋旅館では期待を上回るサービスを目指し、宿泊客についての鮮度の高い情報を集める取り組みをしています。以前にタブレットをスタッフに携帯させ、接客で得た情報を入力させる仕組みを作りましたが、常に動き回っているスタッフがタブレットから入力するのは困難でした。
そこでRECAIUSフィールドボイスインカムを導入。顧客情報も音声認識で文字に残しつつ、リアルタイムな共有が可能になりました。それまでスタッフは大型のトランシーバーとタブレットを両方抱えて仕事をしていましたが、今ではタブレットだけ持ち運べば済むようになっています。
また温泉の温度が変化したり、タオルが少なくなったりした場合にも、RECAIUSフィールドボイスインカムがIoT機器と連携してスタッフに通知します。「施設が山の斜面に建っているので、浴室を見回るだけでもスタッフに負担がかかります。IoT機器とRECAIUSフィールドボイスインカムを連携することで効率化を実現しました」(香川氏)。

現場を可視化して連携の改善につなげる(リッチモンドホテル)

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提携ホテルも含めて全国に展開するリッチモンドホテルでは、フロントと清掃スタッフとの連携に頭を悩ませていました。例えば予定より早くチェックインした宿泊客がいる場合、フロントでは部屋の清掃が終わっているか確認する必要があります。今までフロントスタッフは接客後にバックヤードに行ってインカムで監督者に伝え、監督者から該当する清掃スタッフに作業指示の変更を伝達していました。そのため指示がタイムリーにスタッフまで届かず、指示の数が多いため作業漏れが発生するという問題を抱えていました。
そこでRECAIUSフィールドボイスインカムを一部の店舗で導入。フロントスタッフが監督者と清掃スタッフに情報を共有し、清掃に関わる作業指示に関わる手間を8割削減することができました。音声だけでなく、キーボードから指示入力が可能であることもサービス品質向上に貢献しています。フロントのスタッフは接客をしながらキーボードで指示を入力するため、より迅速な対応が可能になったのです。
同ホテルでは、現場の業務分析にもRECAIUSフィールドボイスインカムを活用しています。RECAIUSの知識処理エンジンにより、コミュニケーションと指示系統についてスコアリングし、施設毎の特徴を可視化し課題を抽出し改善するといった取り組みも始めました。「お客さまや経営層の方から“これは画期的なサービスだ”とお言葉をいただくほど、業務が劇的に改善した事例です」(香川氏)。

明日のコミュニケーションをイノベートする

コロナ禍により三密を避けるニューノーマルな時代になり、コミュニケーションの問題はより複雑になっています。香川氏は「コミュニケーションの可視化が問題解決につながる」と指摘します。RECAIUSフィールドボイスインカムで会話数を集計し、会話がどういう時間帯に発生しているのか、数が突出している日に何が起こっているのかを調べるだけでも、改善に結びつくのだそうです。

RECAIUSフィールドボイスインカムについての展望を伺うと「RECAIUSフィールドボイスインカムが目指すところは、単なるインカムの置き換えではありません。現場チームのコミュニケーションをイノベートすることを目指しています」と三重野氏はサービスに対する思いを語りました。

人手不足は深刻な社会問題となっています。エッセンシャルワーカー等が減少することでロボットへの置き換えが検討されていますが、「完全には置き換わらないのではないか」と三重野氏は見ています。ロボットと人とをつなぎ、仕事が楽しくなるような支援をすることがRECAIUSフィールドボイスインカムの役割になっていくのでしょう。「人手不足を辛く感じるのではなく、テクノロジーの力を使って仕事を楽しくできるようにしたいという思いを持ってものづくりをしています」(掛村氏)。

同社ではこのような目標を達成するべく、パートナーの支援や事例の発信、機能強化に力を入れています。「現場の方に喜ばれる事例が増えており、これからも課題を解決する共創パートナーとして、ご支援できればと考えています」と香川氏は締めくくりました。

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