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誰でも簡単に使える時代になってきたマシンビジョン・画像処理も民主化

レンテックインサイト編集部

レンテック・インサイト連載7回目は、「マシンビジョン・画像処理の民主化」です。
いまFA・自動化業界では、マシンビジョンや画像処理が大きな転換期を迎えています。3次元やAI活用といった技術的進化はもちろんのこと、手軽で簡単に使えるようになり、新たな市場開拓が期待されています。

機械や装置の目

ご存知のことかと思いますが、マシンビジョンはその名の通り「機械の目」で、いわゆる産業用カメラで撮影した画像を処理して利用するセンシングのことです。その用途は主に位置決め、識別、計測、検査の4つがあり、英語でその頭文字を取って「GIGI」(Guidance=位置決め、Identification=識別、Gaging=計測、Inspection=検査)と呼ばれたりします。

マシンビジョンは「目」ですから、画像という分かりやすくて有益な情報を多く収集でき、機械や装置稼働の高付加価値化に大きな威力を発揮します。目を閉じて歩くのと目を開けて歩くのでは脳にインプットされる情報量が全然異なり、歩く速度や正確さ、安全性が格段に違うのと同じように、機械や装置にマシンビジョンを活用することで大幅な性能アップが可能になります。またこれまで不可能だった作業もできるようになることから、その市場は年々右肩上がりで拡大しています。
富士経済の調査によると、画像処理システムの世界市場は2019年は1兆2836億円で、これが2022年には1兆5024億円まで大きくなるとのこと。数年前から省人化や目視検査の自動化に向けてマシンビジョンや画像処理システムを導入するのが世界的なトレンドになっています。すでに広く使われていると思われがちですが、案外そうでもなく、ロボット市場の拡大やコロナ禍による自動化需要の盛り上がりで、今後も伸びていくのは間違い無いと見られています。

普及への課題は技術難易度とコストの高さ

一方で課題もあります。マシンビジョンや画像処理は、導入して使うまでに技術的難易度が高く、コストが高いという点です。
精度高く認識して作業に耐えうるシステムに作り込むためには、単に産業用カメラを買ってきて取り付ければいいものではありません。カメラとレンズ、照明などハードウェアの組み合わせ、画像処理ソフトウェアの作成、最適な設置・取り付け、さらにこれらの微妙な調整が必要です。焦点や光の当て方ひとつで精度は大きく異なり、さらにソフトウェアも作り込むとなったら、それを素人がやりきるのは至難の技です。そのため画像処理システムの導入には画像処理に強いメーカーやシステムインテグレータといったビジョン技術に精通した専門家に依頼するのが一般的で、そのためにコストが高くなりがちで、導入したいユーザーにとってはそこが悩みどころとなっています。特に3DやAIを使った画像処理と技術が高度化するにしたがって技術の難易度とコストは高くなる傾向があります。

誰でも使える画像処理へ。マシンビジョンの民主化

「画像処理は難しくて高い」これがこれまでの常識でしたが、最近はその流れが変わってきています。
いまマシンビジョンの技術トレンドは二極化しています。ひとつは従来の延長線上にあるAIや3D技術をより磨いて認識精度や速度を高めるような、いわゆる「高度化」。そしてもう一つが、マシンビジョンをもっと広く普及させていくために使い勝手を良くして誰でも使いこなせるようにする「汎用化」です。格好良くいうと「マシンビジョンの民主化」と言っていいかもしれません。特に後者の汎用化は勢いがあり、多くのメーカーからやさしく導入しやすいマシンビジョンが登場し、目視検査の自動化やマシンビジョンの普及・拡大の追い風になっています。

主要メーカーからも使いやすい画像処理が登場

例えば最新の事例でいえば、オムロンのバラ積みピッキング用の協働ロボット向け3Dビジョンセンサ。従来のバラ積みピッキング用3Dビジョンセンサは生産ラインの上部に固定して取り付けるものが主流で、カメラシステムの調整は専門家でも大変な作業でした。それに対してオムロンの3Dビジョンセンサはアームに取り付けられ、さらにセットアップもウィザードにそって設定するだけという簡単さ。導入や活用しやすい協働ロボットとの相性もピッタリですね。
またFAや画像処理に強いリンクス(東京都品川区)が3月に発表したINSPECTO S70も、AI画像処理に必要な装置とソフトウェアをパッケージ化し、画像処理の専門家でないユーザー企業の現場でも簡単にAI画像処理を導入できるというもの。プログラミング不要で即日検査が開始できるといいます。

これから拡大が加速する画像処理市場。今がチャンス!

今でこそ写真や画像をスマートフォンで撮影して楽しむことが一般的になっていますが、カメラや画像が生活に溶け込んだのはここ2・30年の話。カメラで写真を撮るというのは専門家やカメラ愛好家の領域で、一般の人々の撮影のタイミングは、旅行やイベントごとなど非日常の時だけでした。それが銀塩カメラからコンパクトカメラや使い捨てカメラ、デジタルカメラ、携帯電話のカメラ機能、スマートフォンへと汎用的な方向に技術が進化したことで、ここまで一般的になり、さまざまな楽しみ方や新しい写真文化が醸成されました。
マシンビジョンや画像処理システムも同じで、これまでは技術的な難しさゆえに専門家の領域に止まっていましたが、今はそれが簡易的にできるようになってユーザーの領域まで広がってきました。もう少しすれば、もっと汎用的になり、いろいろなアプリケーションが出てくるでしょう。
目視検査を自動化したい、画像処理を使って作業を効率化したい、マシンビジョンで新しいビジネスを始めたいといった人々には、汎用化のはじまりの今はチャンスかもしれませんね。

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