
SaaS(Software as a Service)とは、インターネット経由でソフトウエアを利用できるクラウドサービスの形態のことです。近年、SlackやZoom、Google WorkspaceなどのSaaSは、業務に欠かせないツールとなっています。これらのSaaSを社内で適切に管理しないと、契約の重複による無駄なコストの増加や、セキュリティリスクの高まりにつながりかねません。
本記事では、SaaS管理が重要な理由やよくある課題、進め方などを分かりやすく解説します。
SaaS管理とは、企業が利用しているSaaSについて、契約内容、利用者のアカウント、ライセンス、利用状況、セキュリティ設定などを一元的に把握・管理することです。利用するSaaSが増えるほど管理は複雑になるため、部門をまたいで情報を整理し、継続的に更新する仕組みが求められます。

SaaS管理が重要な理由は、大きく以下の二つです。
SaaSは月額・年額の定額制が多く、利用状況を把握していないと無駄なコストが積み重なります。例えば、退職した従業員のアカウントに対する課金が続いていたり、複数の部署が同じ機能を持つツールを別々に契約していたりすることがあります。SaaS管理を徹底することで、こうした無駄なライセンス費用を可視化し、コストを最適化できます。
情報システム部門の承認や管理を受けずに利用されているSaaSでは、保存される情報やアクセス権限を企業側が把握できず、個人情報や機密情報の漏洩につながるおそれがあります。また、退職・異動した従業員のアカウントが削除されずに残っていると、本人や第三者による不正アクセスの原因になりかねません。
利用中のSaaSを可視化し、未承認のサービスへの対応や不要なアカウントの削除、アクセス権限の見直しを行うことで、情報漏洩や不正アクセスのリスクを軽減できます。
SaaS管理を進める際に生じやすい課題は、次の三つです。
企業では、部門単位・担当者単位で個別にSaaSが導入されるケースが少なくないため、全社的な利用状況の把握が難しいのが大きな課題です。情報システム部門が把握しないまま、社内で承認されていないSaaSが利用される「シャドーIT」が生じたり、ほとんど利用されていないサービスの契約が残ったりする可能性があります。
まずは社内で利用しているSaaSを洗い出し、利用状況を可視化することが重要です。
複数の部門が類似するSaaSを個別に契約していたり、退職者や利用していない従業員のライセンスが残っていたりすると、不要な費用が発生します。また、契約更新日や解約期限を把握していない場合、利用していないサービスが意図せず自動更新されることもあります。
一つひとつの契約金額が小さくても、契約数が増えると全体の支出は大きくなります。契約内容と利用状況を定期的に確認し、不要な契約やライセンスを見直すことが重要です。
利用中のSaaSを一元的に把握できていないと、各サービスの承認状況、利用者、アクセス権限、セキュリティ設定を継続的に確認することが難しくなります。その結果、不要なアカウントや過剰な権限が残り、情報漏洩や不正アクセスにつながるおそれがあります。
アカウントの棚卸しやアクセス権限の見直しを定期的に行い、不要なアカウントは速やかに削除しましょう。
社内でSaaS管理を進める際は、管理対象を決め、必要な情報を収集・一覧化したうえで、継続的に更新する仕組みを整えます。具体的には、次の4ステップで進めます。
まず、SaaS管理の対象範囲を明確にします。一部の部門を対象にするのか、全社を対象にするのかによって、必要な工数や関係者は異なります。全社での対応が難しい場合は、一部の部門を対象に試行し、運用方法を確認しながら段階的に範囲を広げる方法があります。
対象範囲が決まったら、各部門の担当者へのヒアリングや、契約書、請求書、経費精算データ、各SaaSの管理画面などから必要な情報を収集します。主な確認項目は次のとおりです。
収集した情報を一覧表にまとめ、対象範囲内におけるSaaSの契約状況と利用状況を可視化します。利用目的、利用者、費用、契約更新日、承認状況などを同じ形式で整理することで、重複契約や未使用ライセンス、管理上の不備を確認しやすくなります。
スプレッドシートや管理ツールなどを活用し、関係者が必要な情報を確認できる環境を整えます。あわせて、更新担当者や更新のタイミングを決め、情報を継続的に更新できる運用にしましょう。
SaaS管理は、情報を一覧化して終わりではありません。新規導入や契約変更、組織変更、従業員の入社・異動・退職に伴い、契約内容、利用者、ライセンス数、アクセス権限などは変化します。定期的な棚卸しに加え、変更が発生した時点で一覧表を更新し、不要な契約やアカウントの削除、権限の見直しを行う仕組みを整えましょう。
SaaS管理を効率的に行うのであれば、SaaS管理ツールの導入がおすすめです。ここでは、SaaS管理ツールのメリット・デメリットについて解説します。
SaaS管理ツールのメリットは、社内で利用しているSaaSの契約状況やアカウントを一元管理できる点です。ツールを導入することで、スプレッドシートによる手作業の管理に比べて、情報の更新漏れや入力ミスを大幅に減らせます。
また、契約更新日が近付くと自動で通知が届く機能を持つツールも多く、更新漏れや意図しない自動更新を防げるのもメリットです。情シス担当者の管理工数を大きく削減できるでしょう。
SaaS管理ツールは導入コストがかかるため、管理するSaaSの数が少ない段階では費用対効果が見えにくい場合があります。また、既存のシステムやほかのツールとの連携に手間がかかるケースも見られます。
SaaS管理ツールを選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。
SaaS管理ツールを導入しても、自社で使っているSaaSと連携できなければ、管理情報を手動で入力する手間が発生し、導入効果が半減してしまいます。社内で利用頻度の高いツールと自動連携できるかどうかを事前に確認しましょう。
SaaS管理ツールは、情シス担当者だけでなく、各部門の担当者が利用するケースもあります。画面が分かりやすく、直感的に操作できるツールを選ぶことで、社内への定着がスムーズになります。無料トライアルを活用して、実際の使い勝手を確認してから導入を決めるのがおすすめです。
SaaS管理ツールには、社内の契約情報やアカウント情報など、機密性の高いデータが集約されます。アクセス権限の細かい設定や、通信の暗号化、ログの記録・監査機能など、セキュリティ面の充実度を必ず確認しましょう。
導入後に操作方法が分からない場合や、トラブルが発生した際に迅速に対応してもらえるサポート体制が整っているかも重要なポイントです。日本語対応のサポート窓口があるか、問い合わせ方法(電話・チャット・メールなど)が自社のニーズに合っているかを事前に確認しておきましょう。
SaaS管理でよくある質問と回答をまとめましたので、参考にしてください。
SaaS管理を行わないと、主に「コスト」と「セキュリティ」の二つの面でリスクが生じます。コスト面では、未使用のライセンスへの課金や契約の重複が発生し、気付かないまま無駄な費用が積み重なる可能性があります。
セキュリティ面では、退職した従業員のアカウントが残ったままになったり、情シス担当者が把握していないシャドーITが増えたりすることで、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。
情報システム部門(情シス)が中心となって担当するのが一般的です。中小企業など情シス専任担当者がいない場合は、総務部門が兼任するケースもあります。SaaS管理では、契約・支払いに関わる経理部門や、現場でSaaSを利用する各部門とも連携しながら進めることが重要です。
SaaS管理ツールを導入することで、社内で利用しているSaaSの契約状況やアカウントを一元管理できるようになります。また、スプレッドシートによる手作業の管理と比べて、情シス担当者の業務負担を軽減できる点もメリットです。
今回は、SaaS管理が重要な理由や、管理上の課題、具体的な進め方を解説しました。社内で利用するSaaSを適切に管理できていないと、重複契約や未使用ライセンスによるコストの増加に加え、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。まずは管理対象とする範囲を決め、利用中のSaaSに関する情報を収集・一覧化することから始めましょう。その後も、契約内容や利用者、アクセス権限などを継続的に見直すことが重要です。