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マス・カスタマイゼーションとは? メリットや事例、注意点など体系的に解説!

レンテックインサイト編集部

製造業のサービス化が進むにつれて、多品種生産が求められる流れは加速しました。個別の要望に応えることと、生産効率を高めリードタイムを短縮することは通常相反する関係にあります。その矛盾を解決するカギとなるかもしれないのが「マス・カスタマイゼーション」という考え方です。
本記事ではその考え方や事例、実現方法、注意点などについて解説いたします。

「大量生産」×「個別設計・生産」=マス・カスタマイゼーション

マス・カスタマイゼーションは、「マス・プロダクション(大量生産)」と「カスタマイゼーション(個別設計・生産)」をかけあわせた言葉で、1990年代前半に提唱され始めました。その先駆的な例として挙げられるのが、いわゆるBTO(Build To Order)生産方式によるパソコン製造で、ハードディスク・メモリの容量やOSのスペックなど、選択肢を消費者に示し、“受注してから”生産することで、在庫リスクを低減しながら、大量生産のメリットも得ています。
ドイツが2011年から国を挙げて進めている産業政策「インダストリー4.0」でもマス・カスタマイゼーションが目標として掲げられています。それは、インダストリー4.0の考えを参考に2017年3月に産業目標「コネクテッド・インダストリーズ」を掲げた日本の製造業でも同様でしょう。

マス・カスタマイゼーションの実現方法 カギはスマートファクトリー

マス・カスタマイゼーションを実現するためには以下のような条件を満たすことが求められます。

  1. 顧客ニーズのデータ化
  2. 設計・製造の自動化・効率化
  3. 受発注から製造・出荷までのシステムの連携

大量生産と顧客それぞれの要望に応えるという要素を両方満たすためには、製品の共通部分と可変部分を明確に定義し、柔軟に要望に応えることのできるシステムを構築することが不可欠です。そのためにまずは顧客ニーズをデータ化し、それぞれに応えることのできる体制を整えなければなりません。例えば、自動車業界ではモジュール化とともにメガプラットフォーム戦略が推進され、業界全体で生産の効率化を進める動きもあります。
より顧客のニーズに柔軟に対応するのであれば、PCと人間が共同設計に取り組む「ジェネレーティブデザイン」や、3Dプリンターで積層あるいは付加により製造を進める「アディティブマニュファクチャリング」など最新テクノロジーを取り入れることが重要です。
また、それぞれ異なる大量の発注に対応するためには、生産管理の統合と各システムの連携は欠かせません。また、現実の工場をデジタル上で再現するデジタルツインも生産管理に大いに貢献すると注目を集めています。
1990年代、ジョー・パインによって『マス・カスタマイゼーション革命 : リエンジニアリングが目指す革新的経営』が著され、その概念が広まった当時にはまだまだ実現が難しかったマス・カスタマイゼーションが中小企業も含めた各企業でより現実的な課題となったのはテクノロジーが進化し、先に挙げた条件の達成が可能になったためです。
今後は、マス・カスタマイゼーションの実現という文脈でもスマートファクトリー化をとらえるべきでしょう。

マス・カスタマイゼーションのメリットがわかる2事例

ここでマス・カスタマイゼーションのイメージやメリットをより具体的にするため、二つの事例を見てみましょう。

ハーレー・ダビッドソン

オートバイ専門メーカーとして世界に多くのファンを持ち、「カスタム化」の需要が大きい米ハーレー・ダビッドソン。同社は2011年、「Build your own bike(自分だけのバイクを作ろう)」というウェブサイトを開設し、本格的なマス・カスタマイゼーションを開始しました。
その実現の背景にあるのが、2009年から始まっていたヨーク工場のスマートファクトリー化です。IoTセンサーを工場全体に張り巡らせることで生産状況の常時モニタリングが可能に。さらに、生産管理システムで受注管理、顧客仕様など1台のバイクを組み立てるのに必要なすべての情報をシームレスにつなげることで部品の在庫確認や製造の実行までの過程を効率化しました。
この取り組みは、納品リードタイムの2~3週間の短縮につながり、リーマンショックの打撃を受けた同社の回復に大いに貢献したといいます。

アディダス

ドイツのスポーツ用品メーカーであるアディダスは、靴というより顧客それぞれへのオーダーメイド性が求められる製品のマス・カスタマイゼーションに先鞭をつけた企業として知られています。同社が描いたのが、小売店舗に訪れた消費者の足の形状データをそのまま工場に送信、ロボットによるオートメーション製造によりわずか数時間~数日のリードタイムで、ぴったりのシューズを届けるという計画です。
そのコア技術がARAMIS(アラミス)と呼ばれるキャプチャー技術であり、同技術によって新デザインの製品が生み出された例も存在します。
2020年、同取り組みが開始された米アトランタとドイツアンスバッハの「スピードファクトリー」は閉鎖され、アジアへの移転が実施されています。

マス・カスタマイゼーションのポイント

マス・カスタマイゼーションを行う上で注意したいのが「共通部分と可変部分のバランスを探ること」です。
顧客のニーズすべてに応えることを是とし過ぎると、マス・プロダクション(大量生産)のメリットは失われ、単なる受注生産と化してしまいます。しかし、効率化のために共通化を進めすぎれば、今度はコモディティ化(=均質化)により製品の付加価値が生まれません。そこで、マスのメリットを得るために共通化を進めつつ、一方でユーザーが選べる選択肢を、勘所を押さえて用意するということが重要なのです。
だからこそ、顧客ニーズをデータ化・把握することが第一ステップとなるのでしょう。

少量多品種からマス・カスタマイゼーションへ、という選択肢

マス・カスタマイゼーションの基本的な考え方と事例、実現のポイントについてご紹介しました。多様化した顧客ニーズに対応することが求められる多品種少量生産に苦心する製造業の方々は少なくないはず。もしかしたらマス・カスタマイゼーションが問題解決につながるかもしれません。
一つの考え方としてぜひ取り入れてみてください。

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