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AI・IoTコンサルタント 伊本貴士の経営に役立つ最新技術解体新書 「カスタマーリレーションシップのデジタル化と囲い込み戦略」

レンテックインサイト編集部

最近、大きな注目を集めているDX(デジタル・トランスフォーメーション)。
今後、企業としてはさまざまなものをデジタル化していくことで、経営の効率化を目指すでしょう。

中でも、「顧客との関係(カスタマーリレーションシップ)」を再定義しデジタル化する事は非常に重要になると考えています。

顧客との関係のデジタル化とは

顧客との関係をデジタル化といっても、よく世間で言われているCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の導入を勧めているわけではありません。

企業として顧客との関わり方そのものをデジタル化するという意味です。

例えば、コロナ禍でインターネットでの購入や、通信販売の利用が大幅に増えています。
その中で、現実世界の店舗でしか手に入らない商品も、インターネットからでも手に入るように変化させなければなりません。

しかし、これまでインターネットで販売した事がない商品を、新たにインターネットから注文できるようにするには、さまざまな事を行う必要があります。
まず商品の特長や注意点に関する説明をデジタル化しなければなりません。文章や写真のみならず、動画などで紹介する事が求められます。

また、重要なのがサポートです。電話でサポートする場合、同時に多くの顧客に対して対応する事は難しく、言葉だけでうまく伝える必要があり、人件費も必要になるのであまり効率的とは言えません。
また、電子メールでのサポートも即時性がなく、急ぎの場合に不満が残り、電話以上にコミュニケーションが難しいのが現実です。

そこで最近では、インターネットでのチャットサポートの導入が増えています。
チャットにおける返事は、ボット(ロボットプログラム)が対応する事もありますが、最終的にはチャット専用の担当者が直接対応をします。
チャットの場合、担当者の空きがなくとも、そこに質問を書き込んでおけば順番待ち人数が表示され、担当者の空きができ次第、直接やりとりが可能です。電話のように、イライラしながら待つ必要もなく、別の時間にかけ直す必要もありません。

チャットサポートは、電話と電子メールの中間的な位置づけと考えればよいでしょう。

このように、顧客との接点を、インターネットという空間でどのように効率化できるのか、なおかつ高い満足度を維持する事ができるのか、を再定義しないと顧客との関係をデジタル化する事は難しいでしょう。

一方で、顧客との関係をデジタル化しすぎてはならない商品もあります。
車や家といった高額商品の販売、法人同士の取引の場合は、非常にきめ細やかなサポートと、人間として相手との信頼関係の構築が必要になります。このような場合は、すべてデジタルで済ませようとすると、逆効果になる点に気をつけましょう。

デジタル化の本質

どの程度までデジタル化するのかは、企業や取り扱う商品によって差があるにしろ、ある程度はデジタル化する社会情勢に合わせて、顧客との関係をデジタル化していく必要があります。

顧客との関係に限らず、デジタル化をすると、自動にデータが生まれます。
そのデータを分析し、戦略に活かす事がデジタル化の本質です。

例えば、顧客がどのくらいの頻度で購入するのか、顧客の購買傾向でグループ化が可能か、どのウェブ広告が一番効果的かなど、集めたデータに対してさまざまな方向から分析すれば、効率的に売上を伸ばすことができます。

また、その人が必要になった時に、必要な情報を的確に送付する事も、今後は非常に重要になります。
そのため、マーケティング・オートメーション(MA)というツールが注目されています。

マーケティング・オートメーションは、顧客の購買履歴やウェブサイト上での行動を分析する事で、顧客毎に送る電子メールやメールマガジンなどの広告の内容をカスタマイズして配信するシステムの事です。
例えば、プリンターを新規購入した顧客に対して、1カ月後にインクの購入に関するメールを送付します。ただし、全員に同じルールを適用するのではなく、あくまで個々の属性や行動履歴に沿って配信内容をカスタマイズする事がポイントになります。

このように、顧客との関係をデジタル化する事は、必要な情報を、必要な時だけ発信する事で、顧客の心証を損なうことなく効果的な売上アップを図るためにも非常に重要な事だと思います。

コミュニティ化と囲い込み戦略

コロナ禍をきっかけに、今後はさまざまな企業の主戦場が現実世界からインターネット上に移っていくでしょう。
実際に、例えば住宅販売や賃貸の内覧もインターネットが主流になりつつあります。

それに伴い、従来のサプライチェーン上に構築された関係は崩壊し、非常に激しい顧客争いが発生します。
メーカーは、卸売りや小売を通さずに直接顧客へインターネットを通じて販売が可能になり、卸売りや小売もインターネットでの販売で顧客を囲い込もうとします。
また、全く関係のないインターネットサービス企業が、情報サービスやマッチングサービスとして、新規参入する事も考えられます。

そうなった場合、一体、どの企業が顧客を自身のサイトへ誘導し、自身のサイトで購入させるようになるのかが、今後の業界全体のパワーバランスを決定するでしょう。

サプライチェーンの再構築が起こる今が非常に重要な時期であり、現在の動き方が今後50年を決めると言っても過言ではありません。

顧客を自社のウェブサイトで囲い込むには、ウェブサイトに行くための動機付けとなるデジタルコンテンツが必要になります。
例えば、その商品の詳しい使い方、少し変わった使い方などのノウハウを動画で紹介する。そのサイトにいけば、必ず在庫が豊富にあり、いつでも送料無料で購入できるなどのサービス。いつでも詳しい人がチャットでサポートしてくれる。
さまざまな策はあるかと思いますが、なにか動機付けをして、自身のウェブサイト上で顧客のコミュニティを作り、単なる顧客から企業のファンへと変化させる方策をとらないと、今後企業は生き残っていくことが難しいと考えてよいでしょう。

ただし、インターネットで顧客を集め、囲い込み、維持することは非常に手間と労力を必要とし、決して簡単な事ではありません。

そのため、ライバルに大きく出遅れることがないように、早めに取りかかり、投資を惜しまず、試行錯誤しつつ進めて行く必要があります。

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