
近年、AIの市場が拡大する中、ChatGPTの開発企業であるOpenAIの動きが注目されていますが、そのOpenAIのライバル企業と目されているのがAnthropic(アンスロピック)です。AnthropicはAIの大規模言語モデル(LLM)「Claude(クロード)」シリーズを開発している米国のスタートアップ企業で、OpenAIの元幹部や研究者らによって2021年に設立されました。
Anthropicは倫理的なガイドラインに基づいた信頼性の高いAI開発を重視していることが特徴で、Claudeは高度な文脈理解力と倫理的な応答生成能力を持つLLMとして、コンテンツの安全性や、正確で信頼性の高いクリエイティブなサポートを求める企業から特に評価を得ています。また、2025年10月にはアジア圏初の拠点として東京オフィスを開設するなど、グローバルで事業を拡大しています。
先述のようにAnthropicの技術的な特徴の一つとして信頼性の高さがあります。AnthropicのAIモデルには人間の倫理的原則に基づいたルールやガイドラインが与えられており、人間のフィードバックに頼るのではなく、AIがそうしたルールやガイドラインに従って自身の回答を評価・批評し、より倫理的で有害でない回答に修正するように学習することが特徴です。その結果、安全性と有用性を両立させながら、利用者が不快なコンテンツを見る危険性を減らすことができます。また、Claudeは非常に長い文章や複数の資料を同時に読み込んで、その内容を理解、分析、要約する能力が優れています。さらに、非常に自然で人間らしい文章を生成する能力も有しており、日本語の文章生成能力も高く評価されています。
AnthropicはフィジカルAI(物理的な世界と相互作用するAI)に関連する取り組みも進めています。特にロボティクス分野での研究開発を積極的に進めており、2025年11月にはロボット制御実験「Project Fetch」の結果を発表しました。これは、Claudeを四足歩行ロボット(犬型ロボット)の制御に応用する実験で、Claudeを活用することでロボットの開発に関する負荷などを低減できるとことを確認しました。
さらに、新たな動きとして2025年11月に、米国におけるコンピューティングインフラの構築に500億ドルを投資することを発表しました。高性能GPUクラスターを構築および運用するFluidstackとともに、テキサス州とニューヨーク州でデータセンターを建設するもので、2026年に各施設が稼働を開始する予定です。
Anthropicは大手企業とも連携しており、その一つとして2023年9月にAmazonから12億5000万ドルの出資を獲得。その後も2024年3月に27億5000万ドル、同11月に40億ドルの追加出資を得ています。AmazonとAnthropicは連携の一環として、AWS(アマゾンウェブサービス)が設計した半導体「Trainium」および「Inferentia」を使用して、AIアプリケーションを支える基礎モデルをトレーニングする方針を示しています。Trainiumは1000億件以上のパラメーターモデルの深層学習トレーニング専用アクセラレーター、Inferentiaは深層学習推論向けのアクセラレーターで、両社はカスタム半導体の技術開発でも協力しているとみられます。
Anthropicの出資者にはGoogleも名を連ねており、2025年10月にはGoogle CloudがAnthropicに、グーグルのAIチップ「TPU」(Tensor Processing Unit)を最大100万個提供することを明らかにしました。取引価格は数百億ドルに上るとみられており、Anthropicは大規模調達したTPUを用いて、次世代Claudeモデルのトレーニングおよびサービス提供に必要なシステムの構築を行う予定です。その規模は2026年末までに1GWを超える水準になるものとみられており、Anthropicの取り組みはTPUを利用したシステムとしては過去最大規模のものとなる見込みです。
さらに、Anthropic は2025年11月にエヌビディアやマイクロソフトと戦略的提携で合意しました。合意の中には、エヌビディアが最大100億ドル、マイクロソフトが最大50億ドルをAnthropicに出資する内容などが含まれています。
提携の中でAnthropicは、エヌビディアと設計・エンジニアリング分野で協力。加えて、エヌビディアの最新AIコンピューティングシステム「Grace Blackwell」および次世代システム「Vera Rubin」を活用し、初期段階で最大1GWの計算リソースを確保します。また、Anthropicは、マイクロソフトのクラウド基盤「Azure」の計算能力を約300億ドル分購入するとともに、最大で1GW相当の追加購入も計画しています。
OpenAIは自社でAIインフラの整備を計画する中で、独自の半導体開発にも乗り出しています。一方、Anthropicは、自社で半導体を設計してはいませんが、AIモデル開発に必要な高性能半導体を確保するために、大手テクノロジー企業と戦略的な提携を進めています。自社開発よりも外部からの調達と戦略的パートナーシップを重視し、必要な計算資源である半導体を確保することでAI開発競争に対応する考えです。