
KDDIは、日本の大手通信キャリアとして知られ、「au」ブランドを中心とした携帯電話サービスをはじめ、インターネット接続サービス「auひかり」、金融サービス、電力サービスなど、幅広い事業を展開しています。そうしたなか、データセンターに関する事業も長年展開しており、世界でもトップクラスの実績を誇ります。また直近はAIデータセンターの整備に向けた投資も進めています
KDDIのデータセンター事業は「Telehouse」というブランド名で約35年にわたる歴史があり、日本だけでなく、欧州、アジア、北米とグローバルで事業を展開しています。現在10カ国以上で、45拠点以上(延べ床面積56万㎡以上)のデータセンターを運営しており、特にコネクティビティデータセンター(クラウド、インターネットエクスチェンジ、通信事業者などの相互接続拠点)に注力しており、Telehouseは、相互接続数において世界4位、通信事業者でみると世界トップを誇ります。
主要拠点としては、相互接続数で世界最大を誇る「Telehouse ロンドン」やフランスで最大の「Telehouse パリ」などのほか、2023年にタイ・バンコクで新たな拠点が竣工しました。また、カナダのアライド プロパティーズ リートからデータセンター事業を2023年8月に譲り受け、2024年4月から「Telehouse カナダ」として事業を開始するなど、拠点整備のペースを近年拡大しています。
国内では2025年6月に、東京都多摩市に新たなデータセンター「Telehouse TOKYO Tama 5-2nd」の建設を開始しました。建物規模は地下1階・地上8階で、提供ラック数は約1900ラック(約5800㎡)。新データセンターは、高品質な通信インフラ、最大18MWのIT電力容量(供給電力容量)を備え、高電力GPUサーバーに求められる水冷方式に対応します。多摩エリアでは、新データセンターを含め最大約100MWの総受電容量となり、AIの活用により高まるデータセンター需要に対応し、開業は2027年秋を予定しています。
AIに関する取り組みが世界規模で進むなか、KDDIでも全社ベースでAI関連が大きなテーマとなっており、2024年5月に発表した「WAKONX」(ワコンクロス)を強化しています。WAKONXは、様々なパートナーと共創して、その業界に最適なネットワーク、データの蓄積・融合・分析、最適化されたAIやソフトウエアを構築してソリューションとして提供するもので、法人企業はWAKONXを利用することで、本業に専念することができます。そして投資を抑制でき、付加価値を生む競争領域へ投資をシフトすることができます。現在、物流、モビリティー、リテール、放送、スマートシティなどの領域で協業の動きが進んでいます。
また、生成AI開発のための大規模計算基盤の整備に、4年間で1000億円規模の投資を行うことを2024年4月に発表し、経済産業省から経済安全保障推進法に基づくクラウドプログラムの供給確保計画として認定も受けました。整備した大規模計算基盤は、KDDIのグループ会社で、LLM(大規模言語モデル)の社会実装を進めるELYZAの計算基盤としての活用も検討しおり、こうした計算基盤がWAKONXのデータ層を支える基盤にもなるとみています。
2025年4月には、シャープの堺工場の土地・建物の一部を取得する売買契約を締結し、引き渡しを完了しました。取得額は100億円。KDDIは譲受した建物に最新のGPU基盤を導入し、兆単位パラメーターの大規模なAI生成モデルを高速に開発できる「大阪堺データセンター」とする計画で、生成AIの開発やその他のAI関連事業に活用するほか、WAKONXを通じて企業などに提供する予定で、2025年度内の稼働を目指しています。
大阪堺データセンターの稼働に向けては、日本ヒューレット・パッカード合同会社との連携を2025年6月に発表しました。日本ヒューレット・パッカードの空冷と直接液冷を併用するハイブリッド型冷却技術を駆使して、環境負荷の低減に配慮したデータセンターの運用開始を目指します。また、大阪堺データセンターを活用したサービスのマーケティングを共同で取り組み、AIソリューションの社会実装を加速していく予定です。
企業連携に関しては、KDDI、さくらインターネット、ハイレゾの3社で、GPUクラウドサービスでの連携を検討しています。さくらインターネットは、秒単位利用から専有しての大規模処理まで対応できるクラウドサービス「高火力」、ハイレゾは業界最安級のGPUクラウドサービス「GPUSOROBAN」を展開しており、3社はこうしたサービスを相互に利用できる体制を構築する方針であり、そしてGPUを安定的に提供し、需要の増減にも柔軟に対応できる体制を整備する計画です。
今後、KDDIが強みを有するコネクティビティデータセンター関連を中心に、まずは欧州での持続的成長、東南アジアといった成長市場の捕捉、Telehouseカナダが始動した北米でのさらなる拡大など、海外市場での事業成長を図る方針です。日本についても安定的な成長を目指すとともに、AI関連などの取り組みを進める見通しです。そして事業面では2023年度1210億円だったデータセンター事業の売り上げを2030年度に2000億円にすることを目指す考えです。