
日本政府は行政業務の効率化と住民サービスの質向上を目指し、共通AI基盤「ガバメントAI(仮称)」の整備を進めています。この取り組みはデジタル庁が主導し内製した、生成AI利用環境「源内」を中心に、安全性と透明性を両立した行政DXを推進しています。
本記事では、ガバメントAIや「源内」の概要、ガバメントAI導入によって期待される効果について解説します。
ガバメントAIは、府省庁や自治体が共通して利用できる行政向けAI基盤として整備が進められています。2025年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、行政の基盤技術として位置付けられました。文書作成・要約といった定型業務や各種行政手続きにおいてAIを利用できる環境の提供を目的としています。2026年度から本格運用が予定されており、行政の標準業務を横断的に支える存在になると見込まれています。
また、ガバナンス体制の強化も進められ、デジタル庁には「AI利活用アドバイザリーボード」および相談窓口が設置されました。政府全体の生成AI利活用状況を把握し、プロジェクトを横断的に推進する役割を担います。各府省庁には「AI統括責任者(CAIO)」を配置し、AIガバナンスの確立や業務での活用推進を担う体制が整えられました。さらに自治体や民間事業者との協働も重視され、共通基盤を活かして住民体験を向上させる行政サービスを展開できるよう、柔軟かつ安全なAI利活用が可能な環境づくりを進めています。
行政で生成AIを安全かつ効率的に利用するために整備されたのが「源内(げんない)」です。ここでは、行政向けに最適化された利用環境としての仕組みや機能、利用状況についてご紹介します。
「源内(げんない)」はデジタル庁が整備した生成AI利用環境で、ガバメントAIの中心的役割を担うシステムです。職員は庁内ネットワークから安全に「源内」へとアクセスし、文書作成、要約、校正、翻訳といった定型業務のほか、法制度調査や国会答弁検索など、行政実務に特化したアプリケーションを利用できます。実務向けアプリは目的別に最適化され、2025年8月時点で20種類が提供されています。複数のLLM(大規模言語モデル)を選択可能で、今後も新しいモデルへの対応が進められる予定です。
2025年5〜7月に実施されたデジタル庁内での利用状況モニタリングでは、約1000名の職員が「源内」を利用し、利用回数は6万件超に達しました。文書作成や翻訳などの基本機能に加え、国会答弁検索や公用文チェックなど業務特化型のアプリまで広く利用されています。今後はほかの府省庁への段階的な拡大が予定されており、行政全体での利用が進む見込みです。また、2025年10月にはOpenAIとの連携が発表され、より高度な生成AI機能を安全に業務利用できる環境の整備が進められています。

ガバメントAIの導入は、行政内部の業務効率化だけでなく、自治体間の連携強化や住民サービスの向上にもつながります。ここでは、ガバメントAIが行政にもたらす主な効果について整理し、その具体的なメリットをご紹介します。
ガバメントAIの導入により、文書作成や要約、校正といったような表現確認の業務が自動化され、職員は企画立案や判断業務など、より重要度の高い業務に集中できるようになりました。ドラフト作成からAI校正、担当者確認までのワークフローを標準化すれば、品質向上とレビュー工数削減を同時に実現できます。さらに議事録の自動生成、法令調査支援なども改善され、スピードと精度の両立が期待できます。「源内」の利用実績でも、論点整理や表現改善の支援によって思考の外部化を促し、業務の効率向上につながっているとの声が多く上がっています。
ガバメントAIを共通基盤として利用すれば、各自治体に向けて効率的にAIサービスを展開できます。共通アプリやテンプレートを共有することで地域間の格差を縮小し、24時間対応や多言語対応など、住民向けサービスの質を高められます。また、マイナンバーカードのスマホ搭載や行政アプリ統合とあわせてガバメントAIを活用することで、さまざまな手続きに要する入力・照合作業が自動化され、窓口や審査業務の負荷軽減につながります。自治体ごとの負担に合わせた段階的な展開が可能で、地域規模や職員のスキルに応じて無理なく普及が進むことが期待されています。
ガバメントAIは行政全体を支える共通AI基盤として、職員の働き方と住民サービスの質を大きく変える可能性を持ちます。その中核となる「源内」は、文書作成や法令調査などを効率化し、職員が重点業務に集中できる環境を整える役割を果たしています。ガバメントAIの導入は住民にとってもメリットがあり、オンライン手続きの利便性向上や問い合わせの迅速化など、より便利で分かりやすい行政サービスの実現が期待できるでしょう。