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情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドラインとは

レンテックインサイト編集部

情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドラインとは

ソフトウエアやウェブアプリケーションに脆弱性が見つかった場合、その情報を早期に公開しすぎると攻撃者に悪用される危険があり、逆に公開が遅れても被害拡大につながるおそれがあります。

日本国内における脆弱性情報を安全かつ適切に扱うために策定されたのが「情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン」です。

本記事では、ガイドラインの背景、関係者ごとの基本プロセス、実務での運用上のポイントを解説します。

ガイドラインの背景と位置付け

2000年代以降、インターネットへの依存が高まる中で、脆弱性を悪用した不正アクセスや情報漏洩が増加しました。これを受け、日本では2004年に「ソフトウエア等脆弱性関連情報取扱基準」を制定し、脆弱性の報告・対応の枠組みを定めました。2017年には対象と手続きを明確化した「ソフトウエア製品等の脆弱性関連情報に関する取扱規程」が施行され、さらにこの規定の2024年の改正に合わせて「情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン」が公開されています。

このガイドラインの特徴は、脆弱性発見時における関係者間の「安全な情報連携」を制度として明文化している点です。届出はIPA(情報処理推進機構)が受け付け、ソフトウエア製品の場合はJPCERT/CC(一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター)が開発者と連絡・調整を行います。対象は日本国内で利用されるソフトウエアやウェブアプリケーションで、最終的にはJVN(Japan Vulnerability Notes)にて脆弱性情報が公表され、利用者が対策を確認できるようになっています。

関係者ごとの基本プロセス

本ガイドラインでは、脆弱性情報の発見者、製品の開発者、ウェブサイトの運営者に分けて対応のプロセスが明文化されています。

発見者の行動指針

脆弱性を発見した場合は、まずIPAへの届出を検討します。届出の際には、発見や取得の経緯が法令に抵触していないこと、情報を適切に管理し外部へ漏洩しないよう対策していることが求められます。専用様式に従い連絡先および発見者情報の取扱い方針などを登録すると、IPAが内容を確認し、ソフトウエア製品であればJPCERT/CC、ウェブアプリであれば運営者へ通知します。

発見者の情報は原則非公開で、必要がなければ第三者に開示されません。必要に応じて意見照会が行われ、双方が合意した場合には発見者と開発者、ウェブサイト運営者が直接情報共有することもあります。脆弱性の公表までの期間は非開示が原則で、悪用を防ぎながら対応が進められます。

製品開発者の対応

JPCERT/CCから通知を受けた製品開発者は、脆弱性の内容について検証および影響調査を実施し、その結果をJPCERT/CCに報告します。脆弱性が確認された場合は、公表予定日(原則45日以内)に合わせて修正パッチや対策方法を準備します。

IPAの判断により公表が見送られるケースもありますが、一方でJPCERT/CCと製品開発者の間で連絡不能や協議不成立となった際に、条件を満たした場合は、公表判定委員会により製品名などが公表される場合があります。開発者には、常に窓口情報を最新に保ち、連絡体制を維持することが求められます。

ウェブサイト運営者の対応

ウェブアプリケーションに関する届出はIPAが直接運営者に連絡します。運営者はIPAから通知を受けてから3カ月以内を目安に内容検証および影響範囲を把握し、その結果の報告および修正を行います。基本的にウェブサイト運営者が脆弱性情報を公表する必要はありませんが、個人情報の漏洩が疑われる場合は、情報開示や問い合わせ対応を行う必要があります。

情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドラインとは 挿絵

実務における運用ポイント

脆弱性情報が発見されてからの対応フローや情報管理ルール、連絡先不明時の対応などが明文化されることで、セキュリティリスクを防ぎます。

期間目安と情報管理

本ガイドラインでは、「いつまでに」「どの段階で誰に通知するか」が明文化されています。ソフトウエア製品では45日を目安に公表日が調整され、ウェブアプリでは修正完了までの期間を概ね3カ月以内としています。公表前の非開示管理が大前提で、漏洩は製品利用者の被害リスクを高める恐れがあります。情報管理ルールを整備しておくことが、脆弱性発見時の備えとなり混乱を防止できます。

連絡不能、調整不能への対応

連絡先が不明確、あるいは開発者との協議が進まない場合には、公表判定委員会が公表の可否を判断します。これは、開発者が対応しないまま時間が経過し、利用者を危険に晒さないための仕組みです。日頃から連絡体制を更新し、窓口情報を整備しておくことが、開発者にとっての信頼確保につながります。

脆弱性対応を「制度」から「運用」へ

「情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン」は、脆弱性発見後の情報共有を安全に進めるための仕組みです。しかし制度を知っているだけでは十分ではありません。連絡窓口の整備、初動対応の手順化、情報管理体制の構築など、実務レベルでの運用が求められます。制度を日常的に活用できる体制を整えることで、脆弱性対応の迅速化と攻撃被害の未然防止、そして利用者からの信頼確保につながるでしょう。

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