
AIチャットボット「ChatGPT」などの開発で知られるOpenAIが、半導体関連企業との連携を急速に進めています。AIデータセンターの整備計画を次々と打ち出す中、半導体の調達に向けた動きも積極的に進めており、今後半導体市場を見る上で重要な企業の1社となってきそうです。
OpenAIが半導体の調達に関する動きを急速に進めている背景の一つが、オラクルやソフトバンクグループと進めるAIインフラ構築プロジェクト「Stargate」です。米国において4年間で5000億ドル規模の投資を行い、AIデータセンターの整備を行うもので、現在テキサス州アビリーンで工事が進んでいます。さらに、テキサス州シャックルフォード、テキサス州ミラム、ニューメキシコ州ドニャアナ、オハイオ州ローズタウンなどでも拠点の整備が決まるなど、計画が想定より前倒しで進んでおり、投資額が当初計画の5000億ドルを上回る可能性も高まっています。このほか、OpenAIは、AIクラウドコンピューティング企業のCoreWeaveとの取り組みも進めており、米国以外に韓国でも次世代AIデータセンターの整備を検討中で、韓国科学技術情報通信部と覚書を締結しています。
現在のAI市場の火付け役となったOpenAIは当初、ChatGPTをはじめとする先端AI技術を開発する企業という立ち位置でしたが、前述のStargateプロジェクトが示すようにハイパースケーラー(大規模なクラウドサービスを構築・運用する企業)へと変貌しつつあり、OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AIインフラ関連に今後8年間で約1.4兆ドルという日本円で200兆円を超える投資を検討していることを明らかにしています。
こうした超巨大投資を検討するOpenAIは、AIデータセンターで活用する半導体の領域でも連携を急速に拡大しています。その一つとして、2025年9月にエヌビディアと戦略的パートナーシップの締結で基本合意しました。OpenAIは、自社の次世代AIインフラとして、数百万台のGPUなどで構成されるエヌビディアのシステムを用い、10GW以上のAIデータセンターを構築します。最初の1GWは2026年後半に構築し、エヌビディアの最新アーキテクチャー「Rubin」を用いたGPUや最新CPU「Vera」などを導入する予定です。
2025年10月初旬には、サムスングループおよびSKグループと戦略的パートナーシップを締結。サムスンとSKはStargateに参画してDRAMの供給などを行い、その需要は将来的にはウエハー換算で月産90万枚規模になる可能性を示しています。また、同じく2025年10月初旬にはAMDと戦略的提携を発表。OpenAIが構築する6GWのAIインフラに、AMDがGPU製品を提供するもので、最初の1GW分のGPUは2026年後半に導入される見通しです。
さらに、ブロードコムが2025年9月に行った決算発表において、ハイパースケーラーなどのAI半導体分野開発を請け負うXPU(カスタムAIアクセラレーター)事業において大型受注を獲得したことを明らかにし、その相手は当初からOpenAIとみられていましたが、その後OpenAIとの協業を正式に発表しました。10GW分のアクセラレーターとイーサネットソリューションを含むシステムを共同開発するもので、2026年後半から生産を開始し、2029年末までに10GW分のシステム構築を完了させること目指します。なおブロードコムは、決算時に受注額についてXPUをベースとしたAI関連機器も含めて100億ドルを超えると述べています。
こうした半導体関連企業との連携に際して、出資や株式に関する動きも合わせて出ており、エヌビディアは最大1000億ドルを段階的にOpenAIへ投資します。この投資でエヌビディアはOpenAIの株式(議決権のないもの)を取得し、OpenAIは得た資金でエヌビディア製品の購入などを進めます。エヌビディアから見ると、1000億ドルという巨額投資ではありますが、OpenAIによる製品の購入などを加味すると、実質的な投資額は1000億ドルより少なくなり、AI開発の中心的な存在であるOpenAIの株式も取得できます。
一方、AMDは前述したOpenAIとの戦略的提携の一環として、OpenAIに対して1株あたり0.01ドルで最大1億6000万株(AMD株の約10%分に相当)を購入できるワラント(行使価格修正条項付き新株予約権)を発行しました。権利の確定には複数の条件が設定されており、最終的な条件としてAMDの株価が600ドル(提携発表日の終値は203.71ドル)に上昇することが設定されています。つまり、OpenAIはAMDの製品購入に際して費用が発生しますが、その代わりにOpenAIはAMDの株式をほとんど費用を要さずに大量に取得することができ、その株式の価値で製品の購入費用を十分に相殺できる可能性があります。
AMDのジャン・フーCFOによると「OpenAIとの提携は、AMDに数百億ドルの収益をもたらす」としています。
こうした資金調達のほかにも、OpenAIはソフトバンクグループを中心に大手企業から出資を得ており、売上高も2025年に200億ドル超、2030年までに数千億ドル規模に成長すると見込んでいます。しかし、前述のような大規模投資に向けた資金繰りおよびリスクは懸念材料として常に付きまといます。一方でサム・アルトマンCEOは「AIの利用動向や需要拡大の傾向を踏まえると、OpenAIにとって計算能力不足のリスクは過剰投資のリスクよりも深刻だ」とコメントしており、積極的な投資を進める方針です。
コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーによると、OpenAIによるデータセンター投資のうち、半導体を含むコンピューティングハードウエアが約60%を占めるとみられ、仮に200兆円を超える規模の投資が行われた場合、120兆円以上がコンピューティングハードウエアに投じられることになります。その中でサプライチェーンの変化が起これば、大きな業界変動にもつながることになるでしょう。