レガシーマイグレーションは、古いシステム（レガシーシステム）を最新の環境へ移行する取り組みです。レガシーシステムを放置すると、セキュリティリスクの増大や保守性の低下など、さまざまな問題を引き起こす可能性があるため、早急な対応が求められます。

本記事では、レガシーマイグレーションの代表的な手法や進め方を分かりやすく解説します。レガシーシステムから最新インフラへの移行を円滑に進めたい企業は、ぜひ参考にしてください。

レガシーマイグレーションとは

レガシーマイグレーションは、長年稼働してきたレガシーシステムを最新の技術基盤やアーキテクチャに移行する取り組みのことを指します。はじめに、混同しやすい「モダナイゼーション」との違いやレガシーシステムの問題点、レガシーマイグレーションが必要な理由について見ていきましょう。

モダナイゼーションとの違い

モダナイゼーション（modernization）とは、既存のシステムを再構築して、現行の業務や技術変化に対応できるようにする取り組みのことです。一方、レガシーマイグレーションは、主に古いシステムを新しい環境やプラットフォームへ移行することに焦点を当てています。

つまり、モダナイゼーションが「構造の変革」を目的としているのに対し、レガシーマイグレーションは「環境の移行」に重点を置いている点が大きな違いです。

レガシーシステムの問題点

レガシーシステムは、長年の改修や機能追加によって構造が複雑化しているケースが多く、維持・運用にかかるコストが年々増加する傾向があります。さらに、障害対応や新機能の追加が難しくなり、セキュリティリスクの増大にもつながるでしょう。

レガシーマイグレーションが必要な理由

上記の問題点によって、レガシーシステムは新しいサービス開発や業務改善を妨げる要因にもなり得ます。企業はビジネスの継続性と競争力を維持するためにも、レガシーシステムから脱却する必要があるのです。

レガシーマイグレーションの手法

ここでは、レガシーマイグレーションの代表的な手法を三つご紹介します。

リホスト

リホストは、システム基盤（ハードウエアやOS、ミドルウエアなど）を新しい環境へ移行する手法です。例えば、オンプレミス環境のシステムをクラウドに移行するケースが該当します。

リホストはシステム基盤を大きく変更しないため、移行期間が短い点や、コストを抑えやすい点などがメリットとして挙げられます。一方で、アプリケーション内部の課題（技術的負債やブラックボックス化など）は解決されず、クラウドネイティブな機能を十分に活かせないケースもあるため注意が必要です。

リホストは、現行システムをクラウドへ安全に移行したい企業や、段階的にシステムを改善していきたい企業などに適しています。

リライト

リライトは、アプリケーションの仕様を維持したまま、プログラミング言語やフレームワークを最新のものに書き換える手法です。老朽化したコードを刷新し、モダンな開発環境に対応させることを目的としています。

リライトのメリットは、老朽化したコードを刷新することで、システムの保守性を高められる点です。新しい技術を取り入れることで、パフォーマンスの改善やセキュリティの強化も期待できます。その一方で、移行期間はリホストよりも長期になる可能性があり、コストも高くなる傾向があります。また、新しい言語やフレームワークに精通したエンジニアを確保しなければなりません。

リライトは、既存システムの構造を活かしながら技術基盤を刷新したい企業や、長期的な保守コストの削減や品質向上を図りたい企業に適しています。

リビルド

リビルドとは、新しいシステムをゼロから再構築する手法のことです。システムを一から作り直すため、最も自由度が高く、ビジネス要件に合わせた設計が可能になります。

リビルドのメリットは、最新技術を活用することで、性能やセキュリティ、拡張性などを大幅に向上できる点です。その一方で、移行期間は最も長く、コストも高額になりやすい傾向があります。加えて、高度な技術力を持つ人材の確保が必要です。

リビルドは、老朽化したシステムを抜本的に刷新したい企業や、新規事業・大規模な業務改革を見据えて最新技術を最大限活用したい企業などに適しています。

レガシーマイグレーションの進め方

レガシーマイグレーションは下記のステップで進めるのが一般的です。

・システム領域に精通した人材を確保する
・移行計画を策定する
・現状調査・棚卸しを実施する
・改善点を明確にする
・移行手法を選定する

それぞれのポイントを見ていきましょう。

システム領域に精通した人材を確保する

まずは、システム領域に精通した人材を確保しましょう。レガシーマイグレーションを成功させるためには、レガシーシステムの構造を理解でき、新しい技術にも対応できる人材が不可欠です。移行作業を実施する際は、システムやデータの構造を正確に把握し、互換性も考慮する必要があります。

移行計画を策定する

続いて、移行計画を策定しましょう。具体的には、システムを実装する順序やデータ移行のタイミング、方法（段階的移行か一括移行か）などを明確にします。関係部門と綿密に連携しながら計画を策定することで、トラブルを最小限に抑えることが可能です。

現状調査・棚卸しを実施する

次に、現行システムの機能や構成、性能、セキュリティ、依存関係などを整理しましょう。どのシステムがどの業務と連携しているか、どのデータがどこで使用されているかを明確にすることで、移行の範囲と影響を正確に見極められます。

改善点を明確にする

続いて、現状分析の結果をもとに、業務フローに合わない機能や使用頻度の低い機能、操作が煩雑な画面などを洗い出し、必要な機能と不要な機能を整理しましょう。これにより、業務に即した効率的な設計が可能になります。

移行手法を選定する

次に、目的に適した移行手法を選定します。基本的な構造を変えずに環境のみを移行したい場合は「リホスト」、プログラム言語やフレームワークを刷新する場合は「リライト」、システム全体をゼロから再構築する場合は「リビルド」がおすすめです。

各手法のメリット・デメリットを比較し、自社の目的やシステム状況に適した手法を選定しましょう。

レガシーマイグレーションで安定したシステム運用を実現しよう

今回は、レガシーマイグレーションの代表的な手法や進め方などについて詳しく解説しました。レガシーマイグレーションを実施し、新たなIT基盤へ移行することで、保守や運用にかかる負荷を大幅に軽減できます。さらに、システムの脆弱性を解消し、セキュリティ水準を大幅に向上させることも可能です。 安定したシステム運用を実現するためにも、まずはシステム領域に精通した人材を確保することから始めていきましょう。