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GPUクラウドサービス事業を拡大するハイレゾ

レンテックインサイト編集部

GPUクラウドサービス事業を拡大するハイレゾ

 生成AIの研究開発が日本国内でも活発化する中、株式会社ハイレゾ(東京都新宿区)が展開するGPUクラウドサービス「GPUSOROBAN」への引き合いが拡大しています。画像生成AIやLLM(大規模言語モデル)などの膨大な計算処理を高速化するGPUクラウドサービスで、非常に高性能でありながら業界最安級を実現していることなどが特徴です。

 ハイレゾの設立は2007年12月。携帯電話向けのシステム開発やインターネット広告の事業などを展開する中で、GPUサーバーを扱うようになり、2017年ごろからGPUクラウドサービスを開始。2019年に石川県志賀町で国内初となるGPUデータセンターを立ち上げ、現在ではGPUデータセンター事業者として国内でも有数の規模を誇ります。また、同社はエヌビディアからエリートパートナーとして国内で初めて認定を受けた企業でもあります。

 GPUクラウドサービス「GPUSOROBAN」の大きな特徴の一つが、そのコストパフォーマンスの高さです。メガクラウドに比べて50%以上安く、業界最安級の1時間50円から利用でき、初期費用やデータ転送料の追加コストもかかりません。また、優れたUI/UXに加え、安定性や冗長性も高い水準で備えています。「GPUサーバーをただ単に貸し出すのではなく、お客さまの要望する環境を整備して、安定してご利用いただけるところまでサポートし、アップデートについても当社で適切に対応することで、お客さまが開発に集中できる環境を提供することを重要視している」といいます。

 こうした点がユーザーからの高い評価につながっており、IT業界を中心に、建設業界や大学研究機関などでも利用され、これまでに1000件を超える利用実績を誇ります。また、近年は製造業からの引き合いも拡大しているといいます。そして生成AIの開発・研究用途を中心にGPUの計算基盤の需要が高まり、政府レベルで生成AI関連の取り組みが強化されていることなどを受け、「提供しているGPUサーバーはフル稼働の状況にある。新たに利用を希望されている方についてはお待ちいただいている状態にある」といいます。

データセンター拠点を続々開設

 拠点としては、石川県志賀町で2019年にGPU専用データセンターを、2022年8月に第2データセンターを開設。そして、拡大する需要に対応すべく、これらのGPU専用データセンターに続く拠点の整備を香川県高松市および佐賀県玄海町で進め、香川県の拠点は2024年12月19日に「高松市データセンター」として、佐賀県の拠点は2025年8月に「玄海町データセンター」として開設しました。

 高松市データセンターは、エヌビディアの最新GPU「H200」を搭載したサーバー408基を備えており、最先端のAI開発環境を提供するクラウドサービスを業界最安級の価格で展開しています。延べ床面積は約687㎡で、投資額は約100億円。同センターは2024年4月に経済産業省の「クラウドプログラム」供給確保計画に認定されており、最大77億円の助成が決定しています。なお、ハイレゾは香川県綾川町でも廃校を活用した新たなGPU専用データセンターの開設を計画しています。

 玄海町データセンターは、2015年に廃校となった旧有徳小学校をGPUデータセンターとして改装した施設で、廃校を利活用することで建設コストと工期を大幅に削減しました。延べ床面積は約2089㎡で、エヌビディアの「NVIDIA RTX A4000」を搭載したサーバーが120台導入されました。

KDDIらとも連携

 2024年12月には、第三者割当増資によって約12億円の資金調達を実施しました。出資者はWCP HR投資事業有限責任組合、株式会社サードウェーブ、長瀬産業株式会社で、融資を含む累計での資金調達額は約41億円となりました。調達した資金の一部は、香川県内のデータセンターを運用するグループ会社である株式会社ハイレゾ香川に出資しました。なお、ハイレゾ香川は、ハイレゾからの出資に加え、株式会社日本政策投資銀行(DBJ)、株式会社みずほ銀行、ジャパン・インフラストラクチャー第一号投資事業有限責任組合、大和エナジー・インフラ株式会社、グローバル・インフラ・マネジメント株式会社などからも出資を受けています。また、DBJをアレンジャーとして、香川県内の地域金融機関である株式会社百十四銀行、株式会社香川銀行、高松信用金庫によるシンジケート・ローンも組成。これにより、ハイレゾ香川は総額約100億円(借入枠含む)の資金調達を実施しました。

 ハイレゾは、2025年4月には、KDDI株式会社、さくらインターネット株式会社とGPUクラウドサービスでの連携を検討することを明らかにしました。生成AI市場の拡大などを受け、高性能GPUを活用したデータセンターの需要が世界中で拡大する一方で、ユーザーのニーズが多様化しています。例えば、大学・研究機関では大規模生成AIモデルを迅速に開発したいといったニーズが高く、スタートアップ企業は利用料金の抑制、研究開発部門用途では秒単位の利用といったニーズがあります。そして、GPUクラウドサービス事業者には、こうした用途に応じて最適なGPUの提供が求められています。そこで、3社で連携することにより安定かつ迅速なGPUの利用が可能な体制の構築を目指しています。

 KDDIはシャープ堺工場の一部を取得し、「大阪堺データセンター」として、兆単位パラメーターの大規模生成AIモデルを高速に開発できる「NVIDIA GB200 NVL72」などの導入を計画しています。さくらインターネットは、秒単位利用から専有しての大規模処理まで対応できるクラウドサービス「高火力」、そしてハイレゾは業界最安級のGPUクラウドサービス「GPUSOROBAN」を展開しており、3社はこうしたサービスを相互に利用できる体制を構築。そしてGPUを安定的に提供し、需要の増減にも柔軟に対応できる体制を整備します。

 今後の市場環境について、ハイレゾは「AI開発に使用する計算基盤の利用コストを比較すると、実は日本のコストは世界的に見て非常に安い。また、日本は諸外国と比べて著作権の法規制が厳しくない。こうした特徴により、生成AIなどの研究開発において日本が最適、言い換えれば〝計算立国 日本〟のような流れが生まれていく可能性もあると見ている」といいます。その中でハイレゾとして、2027年度ごろをめどに、グループ全体で15EFLOPSの計算基盤を構築し、「コストパフォーマンスやクオリティーが高く、これまで以上に使いやすい計算基盤を整えて提供し、AI開発を支える存在となっていく」ことを目指しています。

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