ホームITサーバーの冗長化とは?方法やメリット・デメリットを解説

IT Insight

サーバーの冗長化とは?方法やメリット・デメリットを解説

レンテックインサイト編集部

サーバーの冗長化とは?方法やメリット・デメリットを解説

企業のシステムやサービスは、常に安定して稼働することが求められています。サーバーに障害が発生すると、システムやサービスを一時的に停止せざるを得なくなり、業務の中断や顧客の信頼低下といったリスクにつながりかねません。

こうしたリスクを回避する手段の一つが「サーバーの冗長化」です。本記事では、サーバーを冗長化する方法やメリット・デメリットについて解説します。

サーバーの冗長化とは

サーバーの冗長化とは、サーバーにトラブルが発生した際にシステムが停止しないように、あらかじめ予備のサーバーを用意しておくことです。本来「冗長」という言葉は「無駄」「長い」といった意味になりますが、IT分野では「複数のシステムや機器を配置して信頼性を高めること」を指します。

具体的には、サーバーやネットワーク機器、ストレージなどのハードウエアを多重化することを意味します。

二重化との違い

二重化とは、同じシステムを二つ用意し、どちらかが故障してももう一方のシステムで稼働できるようにする仕組みのことです。一方、冗長化は二重化を含む、より広い概念として使われています。

バックアップとの違い

バックアップは、システムのデータや環境を別の場所に保存し、障害やデータ消失が起きた際に復元できるようにする仕組みです。冗長化が「システムを止めないこと」を目的とするのに対し、バックアップは「失われたデータを復旧すること」を目的としています。

サーバーの冗長化を検討すべきシステムは?

サーバーの冗長化は、すべてのシステムに適用しなければいけないわけではありません。業務において稼働停止が許されないシステムや、企業の基盤として重要な役割を果たすシステムは、冗長化を検討すべき対象といえます。具体的には、下記のようなシステムが挙げられます。

●金融機関におけるオンラインバンキングシステム
●医療施設で利用される電子カルテシステム
●売上に直結するECサイト
●航空会社の予約システム

自社の業務や収益に直結する重要なシステムを冗長化することで、障害発生時のリスクを最小限に抑え、安定したサービス提供が可能になります。

サーバーを冗長化する方法4選

サーバーを冗長化する方法は、大きく下記の4つに分けられます。

●アクティブ/スタンバイ構成
●アクティブ/アクティブ構成
●マスター/スレーブ構成
●マルチマスター構成

ここでは、それぞれの特徴について解説します。

アクティブ/スタンバイ構成

アクティブ/スタンバイ構成とは、メインサーバーにトラブルが発生した際に、同等のスペックを持つ予備サーバーに切り替えて稼働を継続する方式です。予備サーバーの待機方法には「ホットスタンバイ」と「コールドスタンバイ」の2種類があります。

ホットスタンバイは、メインサーバーと予備サーバーがお互いを監視し、異常を検知すると予備サーバーが自動的に稼働する方式です。切り替えが速く、停止時間を最小限に抑えられます。

コールドスタンバイとは、障害発生時に手動または自動で予備サーバーの電源を入れ、データを同期させてから稼働させる方式です。コストを抑えられますが、復旧までに時間がかかる点がデメリットです。

アクティブ/アクティブ構成

アクティブ/アクティブ構成は、複数のサーバーを同時に稼働させ、負荷を分散しながら処理を行う方式です。障害が発生した場合でも残りのサーバーが処理を引き継ぐため、高い可用性を実現できます。また、負荷分散によりパフォーマンスの向上も期待できます。

マスター/スレーブ構成

マスター・スレーブ構成とは、マスター機が通常の処理を行い、スレーブ機がデータを複製して待機する方法のことです。マスターに問題が発生した場合はスレーブが処理を引き継ぎ、システムの停止を防止します。

マルチマスター構成

マルチマスター構成は、マスター/スレーブ構成をさらに発展させた方式であり、すべてのサーバーがマスターとして稼働できる仕組みです。複数の拠点で同時に更新や処理を行えるため、可用性の向上につながります。一方で、データの整合性を維持するための仕組みが複雑になりやすく、構築や運用にかかるコストが高くなる点には注意が必要です。

サーバーを冗長化するメリット

サーバーを冗長化することで、企業は多くのメリットを得られます。ここでは、代表的なメリットを三つご紹介します。

サービスの停止時間を短縮できる

サーバーを冗長化すれば、仮にメインサーバーに障害が発生した場合でも予備サーバーに切り替えることで、サービスの停止時間を最小限に抑えられます。特にアクティブ/スタンバイやアクティブ/アクティブ構成では切り替えが迅速に行われるため、顧客への影響を軽減できます。こうした仕組みにより、安定したサービス提供が可能になり、結果として顧客からの信頼向上にもつながるのです。

BCP対策につながる

BCP対策(事業継続計画対策)とは、自然災害やシステム障害などの不測の事態が発生しても、事業の継続や早期の復旧を図るための計画のことです。サーバーの冗長化は、このBCP対策においても非常に有効です。サーバーを冗長化しておけば、自然災害やシステム障害が発生しても業務への影響を最小限に抑えられます。

サーバーの負担を軽減できる

アクティブ/アクティブ構成のような複数のサーバーを同時稼働させる方式では、1台あたりのサーバーの負担を軽減することが可能です。その結果、処理性能の向上やレスポンス速度の改善、サーバー機器の寿命延長といった効果が期待できます。

サーバーを冗長化するデメリット

サーバーの冗長化には多くのメリットがある一方で、導入や運用の過程で負担となる可能性もあります。代表的なデメリットは下記の二つです。

●運用・管理コストが増加する
●運用保守の負担が増加する

運用・管理コストが増加する

冗長化するためには、サーバーやネットワーク機器を複数用意する必要があり、その分コストが増加します。オンプレミスの場合はハードウエアやライセンス費用、クラウドの場合はインスタンスやデータ転送費用などがかさみやすくなるため注意が必要です。

運用保守の負担が増加する

冗長化によってシステム停止のリスクは軽減できますが、その分サーバー構成が複雑になり、運用や保守の負担が増加します。特にサーバー間のデータ同期や監視ポイントが増えることで、障害発生時の原因特定やトラブルシュートに時間がかかる可能性があるため注意しましょう。

サーバーを冗長化して安定したシステム運用を実現しよう

今回は、サーバーを冗長化する方法やメリット・デメリットについて解説しました。冗長化は、サービス停止のリスクを最小限に抑え、安定したシステム運用を支える重要な仕組みです。ただし、導入や運用時にはコストや管理負担の増加といった課題も伴います。

冗長化を検討する際は、自社にとってどのシステムが重要なのかを見極めることが大切です。優先順位を付けてから実施しましょう。

IT Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next