
2023年にBroadcomがVMwareを買収した出来事は、世界中の企業に大きな影響を与えました。特にVMwareを業務で利用しているユーザー企業では、今後もVMwareを継続して利用するのか、それとも移行先を検討するのか、重要な判断を迫られています
本記事では、VMware買収に伴う主な変更点や、代表的な移行先候補について分かりやすく解説します。
BroadcomによるVMware買収に伴い、さまざまな変更が発表されました。
特に注目すべき変更点は下記の三つです。
●サブスクリプションライセンスへの変更
●課金体系の変更
●分散していた製品群を二つのエディションに集約
これまでVMwareでは、一度購入すれば半永久的に利用できる「永続ライセンス」が提供されていました。しかし、Broadcomによる買収後は永続ライセンスが廃止され、サブスクリプションライセンスへ完全移行する方針が示されています。サブスクリプション型は、一定期間ごとに契約を更新し続ける必要がありますが、常に最新機能を利用できるのがメリットです。
従来は「CPUソケット単位」でライセンス料が計算されていましたが、現在は「CPUコア単位」に変更されています。特に大規模システムや高性能CPUを活用する企業の場合、コストの増加が顕著となり、IT予算や運用計画の見直しが必要になるでしょう。
Broadcomは買収後、VMwareの製品群を整理し、2種類のエディションに集約しました。これにより、ライセンス体系は従来よりもシンプルで分かりやすくなりました。その一方で、自社にとって不必要な機能がエディションに含まれることになり、コストの増加につながる可能性が懸念されています。
これまでに挙げた変更によって、ユーザー企業は下記の三つの選択肢を検討する必要があります。
●既存の永続ライセンスを利用する
●サブスクリプションライセンスへ移行する
●代替ソリューションへ移行する
それぞれ解説します。
既に購入済みの永続ライセンスは、当面の間利用することが可能です。追加コストが発生しないメリットがありますが、将来的にサポート終了やセキュリティ更新の停止などのリスクを抱えることになります。
サブスクリプションライセンスへ移行することで、最新機能を継続的に利用できます。運用面での安心感は高い一方で、長期的なコスト負担が増える可能性があり、IT予算に余裕がない企業にとっては大きな課題となるでしょう。
VMware以外のソリューションへ移行するのも有効な選択肢です。移行の手間やコストはかかりますが、将来的なコスト最適化やDX推進につながるメリットがあります。自社のIT戦略に合わせ、最適な移行先を選定することが重要です。
VMwareの主な移行先候補は下記の5つです。
●Microsoft Azure
●AWS
●GCP
●Red Hat OpenShift
●Hyper-V
それぞれの特徴を見ていきましょう。
Microsoft Azureは、Microsoftが提供するクラウドサービスです。「Azure VMware Solution(AVS)」というサービスを利用すれば、既存のVMware環境を容易にMicrosoft Azureへ移行できます。Microsoft Azureは、Microsoft 365やTeamsなど既存のMicrosoft製品との連携性が強みです。
AWS(Amazon Web Services)は、クラウド市場で最大規模の基盤を持つサービスです。Amazon EC2を用いた仮想サーバー運用や、Amazon EKSを利用したコンテナ基盤の活用など、柔軟な選択肢が用意されています。豊富なサービス群と高い拡張性により、将来的なシステム拡張にも対応しやすい点が魅力です。
GCP(Google Cloud Platform)は、Googleが提供するクラウドサービスです。データ分析やAI分野に強みを持ち、BigQueryなどGoogle独自の強力なデータ基盤を活用できます。データ活用やAI導入を重視する企業に適しています。
Red Hat OpenShiftは、Red Hatが提供するコンテナプラットフォームです。Kubernetesをベースとしており、既存アプリケーションをコンテナ化し、クラウドネイティブな環境への移行を進められるのが特徴です。開発スピードを高めたい、システムのモダナイズを進めたい企業に適しています。
Hyper-Vは、Microsoftが提供する仮想化基盤です。Windows Serverとの親和性が高く、既存資産を活かした運用が可能な点がメリットです。オンプレミス環境を維持したい企業に適しています。
VMwareの移行先を検討する際は、自社の業務内容や将来の成長戦略を踏まえることが重要です。近年では、リモートワークが普及しており、災害や障害時でも事業を継続できるようにするBCP(事業継続計画)対策を重視する企業が増えています。このような背景を踏まえると、柔軟にシステムを拡張でき、拠点間の連携やBCP対策に強いクラウドサービスを選ぶのがおすすめです。
特にMicrosoft AzureやAWS、GCPといった大手クラウドサービスは、グローバルなインフラを持ち、セキュリティや運用面でも安心して利用できる点が評価されています。さらに、手厚いサポート体制や最新技術を活用できる点もメリットです。
VMwareから移行する際は、システム全体を一度に切り替えるのではなく、段階的に移行を進めることが推奨されています。これにより、移行に伴うサービス停止やデータ損失といったリスクを抑えることが可能です。
今回は、VMware買収に伴う主な変更点や、代表的な移行先候補について解説しました。VMwareを継続利用するのか、それともほかのクラウド基盤へ移行するのかは、企業の業務内容や将来の戦略によって最適解が異なります。コストや運用体制、セキュリティ、拡張性といった観点から比較検討を行い、自社に最も適した基盤を選択することが重要です。
VMwareから移行する際は、システム全体を一度に切り替えるのではなく、段階的に進めることが推奨されています。自社にシステム移行の知見が少ない場合には、専門家のサポートを活用するのも有効です。移行リスクを抑えながら、安定したシステム運用を実現できるでしょう。