IT Insight

連載「フカヨミ 製造業界の今を切り取る」国際規格や国際標準の使いこなしが次のビジネスのカギに!?

レンテックインサイト編集部

 レンテック・インサイト連載3回目は、最近よく話にあがる「標準化」を取り上げます。

 社会には色々な規格や基準、標準があります。絶対に守らなければならないもの、そうでもないもの、明文化されているもの、習慣のような無形のものなど。それを守ることで円滑になることもあれば、逆にガチガチに縛られすぎて足かせになることもあります。ほどほどが望ましいですが、なかなかそうはいかないのが現実。とは言え、やっぱり規格や基準、標準は大切で、数多く存在するそれらを熟知し、うまく使いこなしていきましょう!というのが今回の主旨です。

最近、話題にあがる国際規格や国際標準

 最近、お客様と話をしていると、標準化や国際基準など、いわゆる「世界の基準」の話題がよく出てきます。「世界ではこれが標準採用されていて〜」「これがスタンダードになっていて〜」など。日本企業の海外ビジネスが増えてきていることと、海外メーカーが日本市場で世界標準を武器に存在感を出してきていて、日本市場もそれを受け入れはじめたことが理由ではないかと見ています。

 これまでの日本企業の海外進出の多くは、先に進出した日系大手メーカーとの取引を中心としたものでしたが、ある程度年月が経って現地での取引が増え、現地メーカーの要求や基準に合わせる必要が出てきています。特に彼らは日本メーカーの製品を中心に設備やシステムを組んでいるとは限らず、すでに欧米メーカーの製品が入っていて、それと組み合わせることも少なくありません。
 そうした時に、つながらない、連携できない、そもそも規格に適合しないでは大きな不利となります。その国の規格や基準はもちろん、そこから一歩進んで、同じ市場に流通している機器や機械との接続性、親和性、彼らが採用している標準や基準を知り、合わせることの重要性が高まっています。

大手企業の独自規格が国際規格に則るケースが増加

 また逆のパターンで、海外メーカーが日本市場でビジネスを拡大しているという動きもあります。
 国内でも海外メーカーの認知度が高まり、またDXやデジタル化にともなって、国内市場で海外のソフトウェア・ハードウェアメーカーの存在感が高まり、採用ハードルが下がっています。そんななかで「世界標準」「グローバルスタンダード」「海外では多く採用されています」なんて話を聞くと、つい心が傾いてしまいがちです。
 最近は大手企業が、こうした世界で多く使われている、世界標準、国際基準に則った製品を選んだり、自社が独自に設定している社内標準や基準を世界に合わせるという動きも増えてきています。その影響もあって、これまでより多くの企業が、そうした国際標準や基準に目を向けるようになってきている。そんな雰囲気を感じます。

電子機器の製造最適化を目指すIPC。日本で急拡大

 例えばひとつ例を挙げると、電子機器と部品の組立要件と製造要件の標準化を目的とする国際業界団体として「IPC」があります。電子機器を製造して販売するユーザー企業が中心になり、メーカーとEMSとの三位一体で電子機器製造に関する国際標準や基準を作って普及に努めています。電子機器が最適に製造される世界の実現を目指して4000社以上が参加し、アップル、GM、デンソー、パナソニック、フォックスコンなどもメンバーになっています。
 そんなIPCの日本の状況について、IPC日本事務局いわく、世界に比べて日本国内での認知度や広がりは決して高くないが、ここ数年で流れが変わり、IPC標準を採用する企業が急増しているとのことです。
 背景には、IPC標準を採用することで電子機器の製造工程と製品の品質が高めたいという企業の狙いはもちろんのこと、IPCに則っていないことがビジネス上で不利になりかねない世界が少しずつ広がっていることもあるようです。IPCを採用していることが高品質の製造ができる証明になり、最終製品の評価も高めます。製造を受託するEMSでは、IPC採用の有無が取引開始において重要な要素になる例もあるそうです。

国際基準、国際標準を活用してビジネス拡大を!

 自社製品が世界市場で販売されたり、海外メーカーの部品を自社製品に採用したり、サプライチェーンが世界にまたがれば、世界の動きを無視できないのは当たり前の話です。
 国や地域の法律や規制、それのもとになっているような国際規格や標準は、遵守しないとそもそも許可が下りずに出荷できません。しかし、多くの企業が使っている/採用している、着実に広がった結果として国際標準になっているという標準や規格は、案外盲点だったりします。そこでビジネスの有利・不利が決まることもあります。
 特に日本では、大手企業では独自規格が存在し、長年、多くの企業がそれに則った製造を続けてきて、国際標準と距離がありました。しかし今、その距離が一気に縮まろうとしています。海外に販路を求めたい、海外企業と取引を広げたいという企業は、こうした国際標準をもっと活用することが大事です。そうでない企業も、発注元となる大手企業が社内標準を国際標準に寄せてきていることもあり、それを無視することはできません。
 いまトレンドになっているDXやデジタル化もいいですが、こうしたところにもビジネスの種があったり、思わぬ落とし穴があることも覚えておきたいもの。これからのビジネスは、こうした国際規格や国際標準をうまく活用するところが成長すると言っても過言ではないかもしれません。

IT Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next