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NTTデータのデータセンター戦略

レンテックインサイト編集部

NTTデータのデータセンター戦略

 NTTは2025年7月1日、正式な社名を「日本電信電話」から、通称として広く使われていた「NTT」に変更しました。そんなNTTは、ITサービスなどを手がけ58%を出資するNTTデータグループを、2兆3712億円を投じて完全子会社化することを2025年5月に発表しました。こうした巨額を投じる背景の一つにNTTデータが展開するデータセンター事業があります。

データセンター事業者として国内トップ

 NTTデータは、国内13カ所、海外では91カ所にデータセンターを保有しており、データセンター事業者として約6%のグローバルシェアを有し、世界で第3位、国内でトップに位置します。国内にある13カ所のデータセンターの延べ床面積は60万㎡(データセンター利用可能面積は13万㎡)で、電力キャパシティは117MW。新たな施設として、京都府精華町に「京阪奈データセンター」(2026年2月竣工予定、IT電力容量は30MW)と、千葉県白井市に「白井データセンター」(2027年3月竣工予定、IT電力容量は50MW)の整備が進んでいます。

 さらに、栃木市内に「(仮称)栃木データセンター」を整備する計画も推進。2棟で構成され、電力容量は約100MWと関東エリアで最大級のデータセンターとなる見通しで、第1棟の開業は2028年度を予定しています。複数のGPUを搭載した高発熱サーバーを設置できる施設設計を施すほか、直接液冷方式などの最先端冷却技術に対応し、NTTグループが推進する光電融合技術「IOWN」の実装も計画しています。

 こうしたデータセンターの新設を含め、NTTデータは、2025~2027年度にデータセンター関連への投資として7000億円以上を計画しており、2027年度におけるデータセンター事業のEBITDA(利払い税引き前減価償却償却前利益)として1900億円超(23年度実績1216億円)を目標にしています。

千葉県野田市に技術検証施設

 NTTデータのデータセンター事業において、重要な拠点の一つが千葉県野田市にあります。それが「Data Center Trial Field」です。東武アーバンパークラインの野田市駅から車で約10分の距離にある日比谷総合設備の技術研究所(千葉県野田市目吹617)内にある2024年11月に開設された施設で、データセンターにおける液体冷却技術の検証を行っています。

 近年、AI技術の向上などによってサーバーの需要が拡大する中、膨大なデータ処理を行うAIデータセンターは、電力消費の急増やサーバーラックの高集積化による発熱量の増加を引き起こしています。その結果、従来の空気による冷却方式のみでは対応が難しくなっており、冷却効率が高い省エネ水冷サーバーや液浸冷却など液体冷却技術が注目されています。

 しかし、現在の液体冷却技術はメーカーごとに仕様が異なります。かつ従来の空調方式では明確に区別されていたIT領域と建物設備領域が液体冷却技術においては接近するため、液体冷却システムを構築する上で、IT領域と建物設備領域の双方の技術や仕組みの理解が不可欠となります。

 そこでData Center Trial Fieldではデータセンターに関わるさまざまな事業者が参画し、データセンター環境を再現できる検証施設としての役割を果たすとともに、データセンターに関わる各事業者が連携・協働するコミュニケーションの場としても機能しています。そして現在、NTTデータ、日比谷総合設備、桑名金属工業のほか、日比谷通商、Chemours(三井・ケマーズ)、三桜工業、東亜電気工業、ゲットワークス、アステックスなどが参画しており、そのほかにも多くの見学者が訪れているといいます。対象となる業種も、熱源機器メーカー、空調機メーカー、液浸冷却メーカー、ITベンダー、配管材料メーカー、ラック周辺メーカー、電源メーカー、設計施工会社など非常に幅広く、参画に際して年間費用などは発生せず、データセンター分野で事業に取り組んでいる企業、新たに技術展開を検討している企業で課題解決に向けた共同検証に真剣に取り組む意欲がある企業など熱意を重要視しています。

 Data Center Trial Fieldは、日比谷総合設備と桑名金属工業の協力のもと、データセンターの冷却設備を再現し、NTTデータは水冷ラック(Supermicro製)や二相式液浸冷却装置(LiquidStack社製)などを提供しています。そのうち、二相式液浸冷却装置は、温められた液体が蒸発し気化が起こることによって、サーバーからの熱を除去するもので、蒸発した液体は液浸槽内の冷却コイルで冷やされ再び液体となって冷却用の液体として利用されます。空冷と比較して約85%の省スペース化を実現でき、データセンターの冷却効率を示す指標の一つであるPUE(データセンター全体のエネルギーをIT機器の消費エネルギーで割った数値。数値が1.0に近いほど高効率)は限りなく1.0に近い性能を実現できます。

 NTTデータは、Data Center Trial Fieldで検証された技術を、今後自社の新データセンターに展開していき、新たなデータセンターの形を構築していく考えを示しています。Data Center Trial Fieldは、NTTデータがデータセンター事業でさらに飛躍するための重要拠点となり、新生NTTにおける重要な技術検証の一つとなるでしょう。

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