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製造業におけるプラットフォーム戦略のメリットと三つの事例を紹介

レンテックインサイト編集部

IT Insight 製造業におけるプラットフォーム戦略のメリットと三つの事例を紹介

アメリカのGAFAを始めとする巨大なIT企業は、プラットフォーマーとして世界中に影響を与える存在になりました。しかし、プラットフォーム戦略はIT企業だけの戦略ではありません。製造業にとってもプラットフォーム戦略は非常に効果的であり、先進的な取り組みを進めている企業は、既に市場での存在感を高めつつあります。

この記事では、製造業におけるプラットフォーム戦略について、事例も交えつつ解説していきます。

製造業のプラットフォーム戦略のメリット

製造業に関わらず、デジタル技術の活用によって企業を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きなトピックとなっています。

プラットフォーム戦略は製造業におけるDXの方向性の一つであり、企業が競争力を高めて成長し続けるために有効な手段といえるでしょう。

製造業がプラットフォーム戦略に取り組むメリットを紹介します。

プラットフォームによる囲い込み

一つのプラットフォーム上でさまざまな製品やサービスを提供することで、顧客にとっての利便性が向上するため、囲い込みができます。また、顧客の集まるプラットフォームにはパートナー企業も多く参入してくるようになるため、プラットフォーム内で集客と利便性の向上という好循環が生まれます。

サービスを提供するビジネスモデルへの変革

技術の発展や新興国の成長によって、製造業はモノの製造・販売だけでは付加価値を出しにくい状況になりつつあります。従来のモノ売りだけのビジネスモデルでは継続的な成長が難しくなっている中で、プラットフォームを通じて顧客にメリットのあるサービスを提供するというビジネスモデルに変革できます。

ビッグデータの活用による継続的な成長戦略

プラットフォームには、多くの顧客データが集まるようになります。それらを活用して顧客のニーズを掴むことで、顧客にメリットのある新たな製品やサービスを継続的に創出できるようになるでしょう。

IT Insight 製造業におけるプラットフォーム戦略のメリットと三つの事例を紹介

製造業のプラットフォーム戦略を学べる三つの事例

上述した通り、プラットフォーム戦略によって製造業が得られるメリットは非常に大きいです。しかし、プラットフォーム戦略で成功することは簡単ではありません。プラットフォームを構築したものの、顧客が集まらずに失敗するというケースは多々あります。プラットフォーム戦略で成功するためのポイントとしては、次の2点が挙げられます。

  • 自社製品に明確な強みがあり、自社だけでも顧客を一定数集められること
  • 適切なオープン化や外部パートナーとの連携によって、プラットフォームの価値を向上させること

これらのポイントを抑えた企業がプラットフォーム戦略を成功させ、競争力を高めることができると考えられます。

自社でどのようなプラットフォーム戦略ができるかを考える上で、他社の事例を知ることは重要です。ここからはプラットフォーム戦略の事例を三つ紹介するので、参考にしていただきたいです。

【事例1】コマツの建設業プラットフォーム

製造業のプラットフォーム戦略について紹介する上で欠かせないのが、建設機器の大手メーカーであるコマツの取り組みです。

コマツはいち早くプラットフォーム戦略に取り組み、まずは自社で製造した建設機械の稼働状況の収集と見える化をする「KOMTRAX(コムトラックス)」というサービスを提供しました。データを活用して施工を高度化するソリューションをセットで提供することで自社の建設機器の付加価値を向上させ、顧客の囲い込みに成功しました。

また、自社製品に関わる領域だけでなく建設現場全体の生産性向上を実現するべく、NTTドコモ、SAPジャパン、オプティムと合同で「LANDLOG(ランドログ)」というオープンプラットフォームを2017年に設立しました。

「LANDLOG」は建設生産に関わるあらゆるモノからデータを収集して見える化するIoTソリューションへと成長しています。さらに、情報をオープンにすることで外部パートナーとの連携を図り、多種多用な強みを持った企業が参加する状況を創り出してプラットフォームの価値を向上させています。

【事例2】IoTプラットフォーム

製造業がDXへ取り組む上で重要視されているのが、モノから取得したデータを活用して業務の見える化や生産性向上に役立てるIoT技術です。

2021年現在、徐々に工場や生産現場でのIoT活用が広がっていますが、その背景には、IoT機器を製造するメーカーなどが提供するIoTプラットフォームの存在があります。

IoTプラットフォームは、IoT技術を活用するための機器やネットワーク機能などを提供するサービスです。メーカーや通信方式などが異なる機器を共通のプラットフォームに接続してデータを一元管理し、見える化するという基本機能を備えているのが一般的です。企業がIoTを導入するときに自社開発したり、専用の機器を導入したりする手間を軽減できるというメリットがあります。

製造業におけるIoT技術の活用はトレンドであり、今後もIoTプラットフォームの需要が高まっていくことが予想できます。

【事例3】製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」

最後に紹介するのは、「CADDi(キャディ)」という製造業の受発注プラットフォームです。金属加工の特注部品などの製造を加工会社に委託するときに利用できるプラットフォームで、3DCADデータをアップロードするだけで最適な品質、価格、納期の加工業者を選定してくれます。

発注者にとっては、加工会社の調査や見積もりにかかる手間を軽減し、最適な加工会社に委託できるというメリットがあります。受注者にとっては、安定した受注量の確保や見積もりの手間の軽減、既存顧客への売上依存の解消など、双方にメリットがあるサービスとして成立しており、多くの製造依頼が集まっています。

プラットフォームに集まる顧客のニーズを元にして、加工だけでなく組み立ての領域に幅を広げるなど新たなサービスの創出にも取り組んでおり、プラットフォーム戦略の成功例だといえるでしょう。

プラットフォーム戦略で継続的な成長を目指しましょう

製造業はプラットフォーム戦略を取ることで単なるモノ売りから脱却して、サービスを提供する新たなビジネスモデルへと変革できます。また、プラットフォームには多くのデータが集まるため、新たな製品やサービスを継続的に創出して成長し続けることができるようになるでしょう。

プラットフォームを構築することは簡単ではありませんが、自社が継続的に成長するために、ぜひ検討していただきたいです。

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