私たちがAIに最新ニュースを尋ねたり、スケジュール管理を任せたりするには、AIが外部の情報源と連携できる仕組みが必要です。しかし、AIがほかのサービスとやりとりするためには、個別にプログラムを開発する必要があり、多大な工数がかかっていました。 こうした問題を解決し、AIがより柔軟に外部サービスと連携できるようにするために生まれたのが、「MCP」です。本記事では、その基本的な仕組みとアーキテクチャ、活用するメリットについて解説します。
MCP(Model Context Protocol)は、生成AIと外部のサービスやツールをスムーズに連携するために設計されたプロトコルです。従来はサービスごとに連携方式が異なり、それぞれ専用のコードを書いて対応しなければなりませんでした。しかし、MCPを使えば、こうしたバラバラのやりとりを共通化し、よりシンプルで柔軟な連携が実現できます。
この共通化の性質から、MCPはしばしばUSB-Type Cに例えられます。USB-Type Cを使えばさまざまな機器を一本のケーブルで接続できるように、MCPを介せば複数の外部サービスを同じ方式でAIに接続できます。
生成AIがMCPに対応すると、ユーザーのリクエストに応じて、天気予報、カレンダー、ドキュメント要約、クラウドファイルの取得など、さまざまな外部サービスにアクセスできるようになります。これにより、AIは複数の情報源やツールを統合して利用するハブとして機能します。
MCPのアーキテクチャでは、生成AIを搭載したアプリ(ホスト)が、内部のクライアントを通じて外部サーバーと連携します。サーバーは、データの取得やツールの実行、応答スタイルの制御といった機能を提供し、ユーザーは複雑な仕組みを意識せずに多様なAI機能を活用できます。
MCPはクライアント-サーバーモデルに基づいて構成されており、ホスト、クライアント、サーバーという三つの役割が連携して動作します。
「MCPホスト」とは、生成AIを搭載したアプリケーションのことです。Claude DesktopやZed、CursorといったAI支援ツールがこれにあたります。ユーザーはこのホストを通じてAIとやりとりしますが、ホスト単体で必要なデータや機能をすべて備えているわけではありません。
そこで必要になるのが「MCPクライアント」です。クライアントはホストの内部に組み込まれており、外部のMCPサーバーとの通信を担当します。ユーザーがAIに指示を出すと、そのリクエストに応じてクライアントが適切な外部サービスへアクセスします。
「MCPサーバー」は外部に存在し、データや処理機能を実際に提供する役割を担います。例えば、ファイルシステムにある情報を提供するサーバーや、インターネット上のデータベース、特定のAPIに連携するサーバーなどが該当します。
ユーザーがAIに「このファイルを要約して」といった指示を出した場合、ホスト内のクライアントがそのリクエストを処理し、ファイルを扱うMCPサーバーへ送信します。結果として得られたデータはAIの応答に組み込まれ、ユーザーの目にはあたかもAIが自力ですべてを行ったかのように見えるのです。
MCPサーバーは大きく分けて、リソース、ツール、プロンプトという三つの機能を提供しており、これらの機能の組み合わせでMCPはさまざまな応用が可能になります。
「リソース」はファイルやデータベース、Webページなどを取得するための仕組みです。例えば、ユーザーの契約書をAIに読ませたり、データベースから特定の情報を引き出したりする操作に利用されます。
「ツール」は、外部のAPIを呼び出したり、計算処理や文書作成などのアクションを実行したりするための機能です。AIがほかのアプリケーションを呼び出して実行する処理の裏には、このツール機能があります。
「プロンプト」は、AIの応答スタイルや言い回しをコントロールするための機能です。例えば、「子どもにも分かるように説明して」といった指示への対応や、あらかじめ指定されたテンプレートやスタイルに沿った返答ができるようになります。
MCPの活用によって、さまざまな外部サービスと連携したAIアプリ開発の効率が向上します。また外部サービスを使う際のセキュリティ対策も用意されています。
通常、AIアプリケーションが外部サービスを利用するには、それぞれのAPI仕様を理解して独自の連携コードを用意しなければならず、時間もコストもかかっていました。
しかし、MCPに準拠することで、外部との通信方式が統一され、共通の手順で連携が進められます。開発者はMCPの仕様に合わせて一度開発すれば、それ以降は複数の外部サービスに簡単に対応できるのです。
さらに、後から新しいサービスを追加する場合も、MCPに対応していれば同じプロトコルでシームレスに連携可能です。これにより、プロジェクトのスケールアップや新機能の追加も柔軟に行えるようになります。
AIが外部サービスにアクセスする際、セキュリティ対策は欠かせません。自由に情報を取得できる状態では、悪意あるアクセスや個人情報の流出といったリスクが生じるため、慎重な制御が必要です。
MCPには、こうしたリスクを低減するための仕組みが組み込まれています。例えば、外部へのアクセス時には、ユーザーの明示的な許可を求めるステップが設けられています。また、すべての通信ログが記録され、不正アクセスの追跡や監査にも対応できるようになっています。
AIだけでは難しかった外部データへのアクセスや、ほかのサービスとの高度な連携が、MCPによって容易に実現できるようになります。ユーザーがスマートフォンにアプリを追加するように、AIも必要に応じて新しい外部機能をインストールして使えるようになるのです。
MCPが普及すれば、AIの活用範囲はさらに広がると予想されます。興味のある方は、MCPを使ってみてはいかがでしょうか。