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マルチモーダルAIとは?活用例、導入する流れを分かりやすく解説

レンテックインサイト編集部

マルチモーダルAIとは?活用例、導入する流れを分かりやすく解説

近年、多くの企業がAIを活用し、業務効率化や生産性向上を目指しています。AIの種類は多岐に渡り、さまざまなシーンで活用されていますが、特に注目を集めているのが「マルチモーダルAI」です。

本記事では、マルチモーダルAIの概要や特長について解説します。マルチモーダルAIの活用例や導入する流れについても解説しますので、最後までご覧ください。

マルチモーダルAIとは

マルチモーダルAIとは、異なる種類のデータを同時に解析し、総合的な理解・判断を行うAI技術のことです。

従来のAIは、テキストや画像などの単一のデータを対象としていました。マルチモーダルAIでは、テキストや画像、音声、動画といった複数のデータを組み合わせて解析します。例えば、映像と音声を組み合わせて異常を検知したり、画像情報を基に質問応答を行ったりなど、より複雑で高度な認識・推論が可能になります。

マルチモーダルAIは、製造や物流、防犯、医療、サービス業など、幅広い業界で有効活用されることが期待されています。

マルチモーダルAIの代表例

現在、さまざまなタイプのマルチモーダルAIが開発されています。マルチモーダルAIの代表的なモデルは下記のとおりです。

モデル名 特長
GPT-4V OpenAIが開発したモデル。テキストと画像を同時に理解し、画像に基づく質問応答が可能
Gemini Googleが開発したモデル。テキスト・画像・音声を統合処理し、高度な推論力を発揮する
CLIP OpenAIが開発したモデル。画像とテキストを同一空間にマッピングし、高精度な画像検索を実現する。
LLaVA オープンソースの軽量マルチモーダルモデル。画像理解と自然言語処理に対応可能

マルチモーダルAIの特長

マルチモーダルAIは複数の情報源を組み合わせて判断するため、より正確な意思決定や状況把握が可能になります。製造業や物流、防犯、医療など、さまざまな業界に適用できる汎用性の高さも大きな特長です。

マルチモーダルAIの活用例

汎用性が高いマルチモーダルAIは、さまざまなシーンで活用されています。ここでは、マルチモーダルAIの活用例を4つご紹介します。

防犯用の監視カメラ

従来の監視カメラシステムは、映像データのみを解析するのが一般的でした。マルチモーダルAIを搭載した監視カメラでは、映像だけでなく音声やセンサー情報も統合的に解析できます。不審な動きだけでなく、不自然な音や異常振動などもリアルタイムで検知することが可能です。従来よりも高い精度で異常を発見でき、迅速な対応につなげられます。

設備・製品の異常検知

製造業やプラント施設では、機械設備や製品に対する異常検知が課題となっています。映像による外観検査やセンサーによる温度・振動モニタリング、音響センサーによる異音検知など様々な情報を基にした異常検知が必要です。マルチモーダルAIを活用すれば、これらを組み合わせることで単独の情報では検知できなかった微細な異常を迅速に発見することが可能です。

産業用ロボット

マルチモーダルAIを産業用ロボットに搭載すれば、視覚(カメラ)や触覚(圧力センサー)、聴覚(動作音)など複数の要素を総合的に判断して作業を実施できます。例えば、組み立て作業において部品の向きや圧力を細かく調整したり、異音から異常を検知して自主的に作業を停止したりすることが可能です。

自動運転

自動運転システムでは、カメラによる映像情報や距離情報、レーダーによる障害物検知、GPSによる位置情報など、複数のセンサーデータなどを組み合わせる必要があります。マルチモーダルAIはこれらのデータを統合してリアルタイムに解析し、周囲の状況を正確に把握しながら最適な運転判断を行うことが可能です。

マルチモーダルAIを導入する流れ

マルチモーダルAIを導入する流れは下記のとおりです。

①自社のニーズや課題を明確にする ②データを収集・統合する ③適切なAIモデルを選定・トレーニングする ④AIモデルをシステムに実装・統合する ⑤継続してモニタリング・改善する

それぞれのポイントを見ていきましょう。

①自社のニーズや課題を明確にする

まずは、マルチモーダルAIを導入する目的と、解決したい業務課題を明確にします。漠然と「AIを導入したい」と考えるのではなく、例えば「製造ラインの異常検知精度を高めたい」「防犯体制を強化したい」といった具体的な目標を設定しましょう。目標が明確になれば、それに応じたデータの収集やAIモデルの選定、導入後の効果測定がしやすくなります。

②データを収集・統合する

次に、マルチモーダルAIが学習・推論に利用するためのデータを収集しましょう。対象となるデータは、画像や音声、センサー情報、テキストデータなど多岐にわたります。どのデータが必要かを整理し、質の高いデータを確保することが重要です。

さらに、異なる種類のデータをAIが一貫して扱えるように、データ形式やタイムスタンプを揃えましょう。データを統合しないと、AIの学習精度や推論結果に影響がおよびます。

③適切なAIモデルを選定・トレーニングする

続いて、自社のニーズや収集したデータに適したマルチモーダルAIモデルを選定しましょう。モデルを選んだ後は、収集・統合したデータを使ってトレーニングを実施し、実業務に適した精度・性能を目指します。

④AIモデルをシステムに実装・統合する

続いて、トレーニングしたモデルを実際の業務システムやインフラに組み込みます。特にリアルタイムでの処理が求められる場合、既存システムとの連携を丁寧に実施することが重要です。データ連携や処理スピード、システム間の整合性に注意を払いながら、業務に支障が出ないように統合作業を進めましょう。

⑤継続してモニタリング・改善する

AIモデルは導入して終わりではありません。運用開始後もモデルの性能を定期的にモニタリングし、必要に応じて改善を続けることが重要です。

業務環境や取り扱うデータが変化すると、モデルの精度も低下する可能性があります。そのため、再学習やパラメータ調整などを定期的に実施しなければなりません。継続的なモニタリングと改善を重ねることで、マルチモーダルAIを長期的かつ効果的に活用できるようになります。

マルチモーダルAIを導入して企業の競争力を高めよう

今回は、マルチモーダルAIの概要や特長、活用例、導入する流れについて解説しました。マルチモーダルAIは、異なる種類のデータを統合し、高度な判断や柔軟な対応を可能にする技術です。製造や物流、防犯、医療など幅広い業界で導入が進んでおり、業務効率化や新たな価値創出などさまざまなメリットをもたらします。

競争が激しい現代において、マルチモーダルAIの導入は企業の競争力強化につながります。自社のニーズや課題を明確にした上でマルチモーダルAIの導入を検討してください。

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