AI技術の発展に伴い、多くの企業が業務効率化や生産性向上を目的にAIの導入を進めています。AI開発を進める上で欠かせないのが「AIプラットフォーム(AIシステム開発基盤)」です。AIプラットフォームにはさまざまな種類があるため、用途や目的に応じて最適なものを選定することが重要です。
本記事では、AIプラットフォームの概要や種類、特長について解説します。AIプラットフォームを選ぶ際のポイントもご紹介しますので、最後までご覧ください。
AIプラットフォームとは、AIの開発・運用に必要な環境やツールを提供するシステムのことです。AIを開発する際は、まずAIが動作する環境を構築し、学習データを準備したり、モデルを構築したりする必要があります。AIプラットフォームを活用すれば、これらの準備作業を効率化でき、開発者はすぐにAI開発を進められます。
AIプラットフォームに搭載されている主な機能は下記のとおりです。
機能名 | 役割 |
---|---|
データ管理機能 | データの収集、前処理、分類、保存などを効率化し、AI学習に最適な形で管理する |
モデル構築機能 | 機械学習・ディープラーニングのモデルを作成する |
演算リソースの提供 | クラウド上のGPUやTPUなどの演算リソースを利用し、大規模なAIトレーニングを高速化する |
API連携機能 | 外部システムとの連携を容易にする |
デプロイ機能 | 開発したAIモデルを本番環境へ展開する |
AIプラットフォームは、PaaS系の総合型AIプラットフォームと特化型AIプラットフォームの2種類に分類できます。それぞれの特長を解説します。
PaaS(Platform as a Service)系のAIプラットフォームは、クラウド上でAIの開発・運用に必要な環境を提供することが可能です。 演算リソースや開発ツール、APIなどが統合されており、開発者はインフラ構築の手間をかけずにAI開発に集中できます。自社でサーバーや演算環境を準備する必要がなく、スケーラビリティや保守性にも優れているのが特長です。
代表的なプラットフォームは、Google Vertex AIやAWS SageMaker、Microsoft Azure Machine Learningなどです。
特化型AIプラットフォームは、画像認識や音声認識、自然言語処理(NLP)といった特定の用途に最適化されたAI開発環境を提供することが可能です。例えば、画像認識に特化したプラットフォームでは、顔認識や物体検出、画像分類などの機能が充実しています。一方、自然言語処理に特化したプラットフォームでは、テキスト分類や翻訳・要約、感情分析といった機能が提供されています。
用途が明確な場合、特化型プラットフォームを選ぶと良いでしょう。
AIプラットフォームを活用することで、AI開発を効率的かつ柔軟に進めることが可能です。ここでは、AIプラットフォームの特長について解説します。
AIの開発では、環境構築やデータ収集、モデルの設計・学習、評価、デプロイ(本番運用)など、さまざまな工程が必要です。 AIプラットフォームを利用すれば、これらのプロセスを統合的かつ自動化された環境で管理できるため、開発スピードを大幅に向上させることができます。
AIの開発や運用には、高性能な演算リソースが必要であり、従来はサーバーなどの初期投資が大きな負担となっていました。しかし、クラウドベースのAIプラットフォームを利用すれば、必要な分だけリソースを使用し、従量課金で利用できるため、コストを最適化できます。
AIプラットフォームには、ほかのアプリケーションやデータベースと簡単に連携できるAPI(Application Programming Interface)が用意されています。APIを活用することで、既存の業務システムやWebサービスにスムーズにAI機能を組み込むことが可能です。
例えば、CRM(顧客管理システム)やERP(統合基幹業務システム)、カスタマーサポートツール、ECサイトなどにAIを統合することで、業務の自動化や分析の高度化が実現できます。
AIプラットフォームを選定する際は、下記のポイントを押さえる必要があります。
それぞれのポイントを解説します。
はじめに実施するべきことは、AIプラットフォームを導入する目的を明確にすることです。AIの活用方法は企業によってさまざまであり、導入目的によって適切なプラットフォームも異なります。
例えば、社内全体の業務効率化やデータ分析など、幅広い用途にAIを活用したい場合には「総合型AIプラットフォーム(PaaS系)」が適しています。画像認識や自然言語処理、予測分析などさまざまな機能が統合されており、AIの開発から運用までを一貫して実施することが可能です。
特定の業務にAIを導入したい場合は「特化型AIプラットフォーム」を選ぶことをおすすめします。例えば、カスタマーサポート業務にAIチャットボットを導入する場合は、自然言語処理(NLP)に特化したプラットフォームを選ぶことで、高精度で実用的なAIを構築できるでしょう。
AIプラットフォームの料金体系は、利用方法や用途によって大きく異なります。多くのプラットフォームでは「従量課金制」が採用されており、利用する計算リソースやデータ量に応じて費用が発生します。
例えば、AIモデルを学習させる場合には、高性能なGPUなどの演算資源が必要です。その結果、コストが高くなる傾向があります。一方、学習済みのモデルを使って予測や判定をおこなう「推論」フェーズでは、比較的少ないリソースで済むため、コストを抑えやすくなります。
そのため、プロジェクトの期間や使用頻度、必要な処理速度などの観点から事前にコストシミュレーションを実施することが重要です。
AIの活用が進むにつれて、処理するデータ量が増加したり、運用するAIモデルの数が増えたりする可能性があります。そのため、小規模から始めて段階的にリソースを拡張できるAIプラットフォームを選ぶことが重要です。
クラウド型のAIプラットフォームであれば、必要に応じて計算リソースを簡単に拡張できるため、将来的な負荷増加にも柔軟に対応できます。
今回は、AIプラットフォームの概要や種類、特長、選定方法などを解説しました。AIプラットフォームには、幅広い用途に対応できる総合型(PaaS系)と、特定の用途に特化した特化型の2種類があります。それぞれの特長を理解した上で導入することが重要です。
AIの活用が進む現在、自社の課題や目的に合ったプラットフォームを選定することで、業務の効率化はもちろん、新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。本記事を参考に、自社にとって最適なAIプラットフォームの導入を検討してみてください。