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DeepSeekとは?企業での活用方法と注意点を解説

レンテックインサイト編集部

DeepSeekとは?企業での活用方法と注意点を解説

OpenAIのChatGPTやAnthropicのClaude、GoogleのGeminiといった大規模言語モデル(LLM)が市場を席巻する中、中国発のLLM「DeepSeek」が新たに注目を集めています。DeepSeekは低コストでありながら、OpenAIに匹敵する高度なAIモデルを開発したことで話題となりました。本記事では、DeepSeekの概要や企業活用の可能性、導入時の注意点について解説します。

DeepSeekの概要

DeepSeekは2023年に中国の浙江省杭州で設立されたAI企業で、創業者である梁文峰氏が率いるチームによって開発が進められています。高性能なGPUを使うことなく、低コストでOpenAIに匹敵する性能のLLMを開発した点が大きな特徴です。

ChatGPTの開発には数十億ドルが投じられたとされていますが、2024年12月に登場したDeepSeekの「V3」モデルはわずか560万ドルの開発費で開発されました。これは、Mixture of Experts(MoE)と呼ばれる技術を用いることで、計算リソースを大幅に削減したためです。MoEは、大規模モデルの全パラメータを常に使用するのではなく、必要な部分のみを動的に活性化することで効率的に処理します。

DeepSeekの開発は、AI開発において高度なハードウエアが必ずしも必要ないことを示唆しており、より多くの企業が高度なAIを開発できる可能性を広げています。また、DeepSeekはオープンソース戦略を採用し、AIモデルを無償で公開しています。ChatGPTやClaudeといった競合AIモデルは商用利用を前提としており、そのAPIを使用するためには高額なコストが発生します。一方で、DeepSeekは開発者や企業が自由にカスタマイズできるオープンソースモデルとして提供されています。

企業でのDeepSeek活用法

DeepSeekの特徴を活かし、企業においてどのような活用ができるかを考察します。DeepSeekがオープンソースであること、エッジ技術による軽量版AIを活用することに着目しました。

オープンソースの利点を活かした社内専用AI

DeepSeekは無償で提供されており、企業は商用利用も含めて自由にカスタマイズできるため、企業独自の環境に合わせたAIを構築できます。一般的なクラウドAIサービスはAPI経由でアクセスする必要がありますが、DeepSeekはオープンソースであるため、オンプレミス環境やプライベートクラウド上での運用が可能です。これにより、社内の機密情報を外部に送信せずにAIを活用できます。

また、DeepSeekは独自のデータセットで再学習(ファインチューニング)できるため、企業の特定業務に最適化されたAIモデルを構築できます。例えば、法律事務所では専門書類の自動作成、製造業では品質管理の異常検知など、用途に応じたAIの構築が可能です。

軽量モデルを活かしたエッジデバイスでのAI活用

DeepSeekは2025年1月に「DeepSeek-R1」と、より軽量なモデル「DeepSeek-R1-Distill」を提供しています。これは知識蒸留技術(Distillation)を用いて開発されたもので、高性能なLLMの知識を小型のモデルに転移できます。これによりクラウド環境に依存することなく、容量の小さいエッジデバイスでも高精度なAI機能を利用できるようになります。

軽量モデルを使うと、工場の品質管理システムやIoT機器、車載コンピューターなど、低リソース環境でもAIの活用が可能です。ネットワーク接続が制限される航空機や遠隔地の監視システムにおいても、リアルタイムでAIを稼働できるようになり、通信コストの削減や応答速度の向上につながります。

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DeepSeek導入時の注意点

DeepSeekは商用利用が可能とされていますが、DeepSeekがOpenAIのモデルを用いて開発されたという疑惑があり、将来的なリスクとなる恐れがあります。また、セキュリティ上の懸念から、DeepSeekのアプリの利用を禁止する国もあります。

OpenAIのモデルを利用して開発された疑惑

DeepSeekが提供するAIモデルは、代表的なオープンソースライセンスであるMITライセンスのもとで提供されており、商用利用も可能となっています。ただし、知識蒸留技術の活用において、競合企業の技術やデータを参照して開発された可能性が指摘されています。

DeepSeekによって自社のAIモデルが蒸留された可能性があるとして、OpenAIが調査を進めているという報道もあります。真偽は定かではありませんが、DeepSeekを商用サービスに組み込む場合は、将来的にライセンスや知的財産権の問題が発生する可能性を考慮し、慎重に判断しましょう。

セキュリティの注意点

DeepSeekのセキュリティに関して、データの管理とプライバシーリスクが懸念されています。特に中国発のAIであることから、データの取り扱いに関する透明性が十分でない可能性が指摘されています。一部の国では、DeepSeekのデータ収集方法やサーバーの管理体制について疑問視しており、政府機関や企業が使用を制限する動きもあります。

米国では、NASAや海軍において、個人情報保護および安全保障上のリスクのためDeepSeekの利用を控えるよう指示が出ています。また、韓国では、データ保護規則に適合しないとして、政府がDeepSeekアプリをGoogle PlayやApp Storeから削除させました。ほかにも、イタリアでは国内におけるDeepSeekのアプリの使用を制限し、台湾では公的機関の職員に対して使用禁止を命じています。

DeepSeekの導入で高性能なLLMが利用しやすくなる

DeepSeekは、オープンソース性や低コスト、低容量という特性を活かし、企業の業務効率化に活用できるでしょう。しかし、モデルの開発時に他社のデータを参照した可能性や、セキュリティ上の懸念があることに注意しなければなりません。自社のシステムに導入する場合は、これらのリスクを確認した上で慎重な運用をおすすめします。

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