クラウド化が進む中でも、USBメモリやHDD/SSD、SDカードなどの記憶デバイスは多くの業務で利用されています。これらのデバイスは安価に手に入れられるのに加え、インターネット接続がない、あるいは不安定な環境でも使え、転送速度の安定が期待できるのがそのメリットです。
本記事では、そのメリットが十分に得られない場合の対処法について、現実的に取るべきステップに沿って詳しく解説します。
USBメモリやHDD/SSD接続時の転送速度が遅い場合、まずは使用しているUSBデバイスのUSBの種類を確認し、以下の対処法を試しましょう。
種類 | 概要 | 問題点(遅い場合) | 対処法 |
---|---|---|---|
USB Type-A | 長方形の従来型コネクタ。主にPCで広く使用。USB 1.0からUSB 3.2まで対応。 | ・ポートがUSB 2.0(最大480Mbps)に制限されている場合。 ・ケーブルが古い規格で速度が制限される場合。 |
・USB 3.0以上対応のケーブルとデバイスに交換。 ・デバイス側のUSBポートを確認し、高速規格のポートを使用。 |
USB Type-B | 周辺機器(プリンターや外付けストレージ)向けの正方形コネクタ。USB 1.0からUSB 3.2まで対応。 | ・USB Type-BケーブルがUSB 2.0規格の場合、速度が制限される。 ・使用しているデバイスが古い規格の場合。 |
・USB 3.0以上対応のケーブルとデバイスに交換。 ・デバイス側のUSBポートを確認し、高速規格のポートを使用。 |
USB Type-C | リバーシブル設計の最新型コネクタ。USB 3.1、USB 3.2、USB4対応で、映像出力や電力供給も可能。 | ・ケーブルが低速規格の場合、速度が制限される。 ・高速データ転送用の認証ケーブルでない場合、USB4やUSB 3.2 Gen 2x2の性能を発揮できない。 |
・USB-C認証済みのケーブルを使用。 ・デバイスとポートがUSB4またはUSB 3.2 Gen 2x2対応であるか確認。 |
USB 3.0(USB 3.1 Gen 1・USB 3.2 Gen 1) | 最大転送速度5Gbps(625MB/s)。青色ポートが一般的。 | ・ケーブルまたはポートがUSB 2.0規格で接続された場合、速度が480Mbpsに制限される。 | ・デバイス、ケーブル、ポートの全てがUSB 3.0対応であることを確認。 ・別のUSB 3.0以上対応ポートに接続してテスト。 |
USB 3.2 Gen 2 | 最大転送速度10Gbps(1,250MB/s)。高速デバイス向けの規格。 | ・USB 2.0規格のポートやケーブルで接続すると速度が制限。 | ・USB 3.2 Gen 2以上対応のケーブル、ポート、デバイスを使用。 |
USB 3.2 Gen 2x2 | 最大転送速度20Gbps(1,250MB/s)。USB-C専用規格。 | ・ケーブルが非対応の場合、速度が10Gbps以下に制限される。 | ・ USB 3.2 Gen 2x2対応のケーブル、ポート、デバイスを使用。 |
USB4 | 最大40Gbpsの転送速度とThunderbolt 3互換。USB-C専用で映像や電力供給も統合。 | ・デバイスやポート、ケーブルがUSB4またはThunderbolt 3/4対応でない場合、速度が制限される。 | ・USB4認証済みのケーブルを使用。 ・デバイスとポートがUSB4対応か確認。 |
上記を試して変化が見られない場合は、下記の対処法を試してみてください。
USBポートやデバイスに関連するドライバが古い場合、転送速度が制限されることがあります。
【対処法】
1.デバイスマネージャーを開き、「ユニバーサル シリアル バス コントローラー」を確認。
2.対象のUSBデバイスを右クリックし、[ドライバの更新] を選択。
3.メーカーの公式サイトから最新ドライバをダウンロードし、インストール。
電力供給不足は外付けHDDやSSDなど、電力を多く消費するデバイスで速度が低下する原因となります。
【対処法】
・電力供給型のUSBハブを使用し、十分な電力を確保。
・PC背面のUSBポート(マザーボード直結)に接続してテスト。
・USBデバイス付属のケーブルを使用し、電力補給用のポートに接続。
書き込みキャッシュが無効になっていると、USBデバイスの転送速度が低下します。
【対処法】
1.デバイスマネージャーを開く。
2.「ディスクドライブ」から対象のUSBデバイスを右クリックし、[プロパティ] を選択。
3.[ポリシー] タブで、「パフォーマンスを優先する」を選択し、設定を保存。
4.設定変更後、必ず「安全な取り外し」を実行してデータ保護を徹底。
USBデバイスやPCのUSBポートのファームウエアが古いと、速度低下が起こることがあります。
【対処法】
1.デバイスメーカーの公式サイトにアクセス。
2.対象デバイスの型番を入力し、最新のファームウエアがあるか確認。
3.指示に従いファームウエアを更新。
USBポートにほこりや異物が詰まっている、または接触不良が起きている場合、転送速度が安定しません。
【対処法】
1.USBポートをエアダスターや柔らかいブラシで清掃。
2.別のUSBポートに接続し、速度が改善するか確認。
3.ポートが物理的に破損している場合、専門業者に修理を依頼。
小さなファイルが大量にある場合、大きなファイルを転送するよりも効率が悪くなることがあります。
逆に、容量の大きすぎるファイルを一気に転送しようとすると、それもまた効率が悪くなってしまいます。
【対処法】
・小さなファイルが大量にある場合はまとめて、ZIP形式などに圧縮して転送。
・大きすぎるファイルとなってしまった場合は、ファイルを分割し転送を数回に分けることで1回の負荷を軽減。
USBコントローラーの設定が不適切または破損している場合、転送速度に影響を与えることがあります。
【対処法】
1.デバイスマネージャーを開き、「ユニバーサル シリアル バス コントローラー」を展開。
2.各USBホストコントローラーを右クリックし、[デバイスのアンインストール] を選択。
3.PCを再起動すると、USBコントローラーが自動的に再インストールされます。
外付けHDDやSSDが劣化していると、速度低下やエラーが発生する可能性があります。
【対処法】
1.CrystalDiskInfoなどの診断ツールを使用して健康状態を確認。
2.「注意」や「異常」と表示された場合、速やかにデータをバックアップし、ストレージを交換。
ファイルシステムが適切でない場合、データの断片化や速度低下の原因となります。
【対処法】
HDDの場合:
1.Windowsの「ディスクデフラグと最適化」を使用して断片化を解消。
SSDの場合:
1.Trimコマンドが有効であることを確認(Windowsでは通常自動で有効)。
2.コマンドプロンプトで fsutil behavior query DisableDeleteNotify を実行し、「0」が表示されていれば有効。
近年はスマートフォンが業務で使われる機会も多くなりました。PCに接続して画像やPDFなどさまざまな形式のデータを転送する際、速度が遅く感じる場合もあります。以下では、スマートフォン接続時の速度低下の原因と対処法を解説します。
スマートフォン接続時、デバイスは通常「充電モード」や「ファイル転送モード(MTP)」など複数のモードを選べます。「充電モード」のままだと、データ転送速度が制限されたり、そもそも転送が行われなかったりといった症状につながります。
【対処法】
1.スマートフォンをPCに接続し、スマートフォンの通知バーを下にスワイプ。
2.「USB設定」または「接続モード」をタップ。
3.「ファイル転送(MTP)」または「高速ファイル転送」を選択。
USBケーブルが充電専用(データ転送非対応)の場合や、規格が古い場合、破損している場合、転送速度が遅くなったり、そもそも転送が行われなかったりします。
【対処法】
1.データ転送対応ケーブルを使用(パッケージに「データ転送対応」または「USB 3.0/3.1対応」と記載されているもの)。
2.ケーブルが破損していないか確認し、必要に応じて交換。
PC側のUSBポートがUSB 2.0(最大480Mbps)以下の規格の場合、スマートフォンが高速規格(USB 3.0以上)に対応していても速度が制限されます。前掲の表に従い、USBポートの規格を確認してみてください。
【対処法】
1.PCのUSB 3.0以上のポートに接続
2.それでも改善しない場合、別のポートで試す。
スマートフォン内のストレージがいっぱい、または断片化していると転送速度が遅くなることがあります。
【対処法】
1.不要なアプリやデータを削除し、ストレージの空き容量を確保。
2.スマートフォンの設定でストレージの「最適化」や「キャッシュクリア」を実行。
スマートフォン接続に必要なドライバがPCに正しくインストールされていない場合、速度や接続が不安定になることがあります。
【対処法】
1.スマートフォンメーカー公式サイトからPC用ドライバをダウンロードしてインストール。
2.または、接続時にPC側で自動インストールが行われることを確認。
スマートフォンとPC間のファイル転送方式には、MTP(Media Transfer Protocol)やPTP(Picture Transfer Protocol)があります。PTPは画像専用で速度が遅い場合があります。
【対処法】
1.スマートフォン接続時の「USB設定」で「MTP(メディア転送プロトコル)」を選択。
2.PC側でスマートフォンの接続先が「デバイス」または「外部ストレージ」として認識されているか確認。
スマートフォンのOSやファームウエアが古い場合、データ転送速度に影響を与えることがあります。
【対処法】
1.スマートフォンの設定で「システム更新」をチェックし、最新バージョンに更新。
2.更新後、接続速度が改善するか確認。
デジタルカメラやスマートフォン、タブレット、PCなど、さまざまなデバイスで利用されているSDカードでも、転送速度が十分でなく作業効率に影響がおよぶ場合があります。以下では、SDカードの速度低下の原因と、その対処法を解説します。
SDカードは、長期間使用するとセクタの劣化が原因で速度が低下することがあります。
【対処法】
1.「H2testw」や「SD Insight」などを使用し、カードの状態を確認。
2.劣化が進んでいる場合は、データをバックアップし、新しいカードに交換。
SDカードには、速度に関する規格(Speed Class、UHS Class、Video Speed Classなど)があり、対応デバイスでなければ本来の速度を発揮できません。
【対処法】
1.SDカードに記載されている「Class 2/4/6/10」や「UHS-I/UHS-II/UHS-III」、「V6/V10/V30/V60/V90」などの表示を確認。
2.使用中のカメラやPC、カードリーダーが、SDカードの規格に対応しているかを取扱説明書やメーカーの公式サイトで確認。
3.規格が一致しない場合は、対応するカードやデバイスを利用する。
SDカードリーダーがUSB 2.0ポートに接続されていると、速度が480Mbpsに制限されます。
【対処法】
1.USB 3.0以上のポートに接続。
2.速度が改善しない場合、ほかのUSBポートやデバイスで試す。
カードスロットや端子が汚れている場合、転送が不安定になります。
【対処法】
1.柔らかい布や接点クリーナーで金属端子を拭き取る。
2.カードスロット内のほこりや異物を取り除き、別のデバイスで試す。
ファイルシステム(例: FAT32、exFAT)が適切でない場合、速度が低下する可能性があります。
【対処法】
1.WindowsでSDカードを右クリック → [プロパティ] で「ファイルシステム」を確認。
2.32GB以下のカードはFAT32、64GB以上はexFATを推奨。変更する場合はデータをバックアップした上で、フォーマットを実行。
USBデバイスやHDD、スマートフォンやSDカードの「転送速度が遅い」場合の対処法についてステップごとにご紹介しました。適切な手順を踏んでハードウエアの規格や状態を確認したり、ソフトウエアを更新したりすることで、長時間悩まされていた問題がたちどころに解決されるかもしれません。それでも問題が解決しない場合は、デバイスの劣化や規格の不適合を疑い、必要に応じて新しい製品への移行をご検討ください。