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連載コラム「フカヨミ 製造業界の今を切り取る」2021年はFA・自動化元年!重大な転換期に

レンテックインサイト編集部

 今回から日本の製造業やFAの最新動向や日々の取材活動で感じていることなどをコラム形式でお届けいたします。第1回目のテーマは「私たちは日本の製造業にとっての2021年という年を、どう捉え、どう活動していくか」について考えてみます。

製造業のデジタル化がはじまって約10年。日本も着実に進化

 製造業のデジタル化がトレンドとなってもう5年近くが経ちます。2011年にはじまったドイツのインダストリー4.0、またはその前年のメイカーズムーブメント、3Dプリンタブームを契機に、一気に製造業も新しい時代に突入し、変わっていかなければいけないという風潮が出来上がっていきました。日本では2015年の「ロボット新戦略」あたりから急激に加速してきました。それからIoTが流行し、ロボット、AIが来て、さらに今はDXの名の下に多種多様な製品やサービス、ソリューションが出てきています。わずか数年でここまで状況が変化するとは驚きです。
 とは言え海外に目を向けると、もっとスピードが速かったりします。例えば、JEITA(情報産業技術協会)とIDC Japanが2021年1月に発表した「2020年日米企業のDXに関する調査」では、DXに取り組んでいると回答した企業は日本20%、米国28%とそこまで大きな差はありませんでしたが、逆に、取り組んでいない・知らない・分からない企業は日本33%に対し、米国はわずか3%。米国ではDXは十分に認知されていることが分かります。
 すでにDXへの啓蒙が完了し、次は普及拡大に移っていける米国と、まだまだDXを広く理解してもらわなければいけない日本。この差はちょっと気になります。しかしながら、他所は他所、ウチはウチ。お互いに事情や状況は異なるので、海外に比べて日本は遅れていてダメだ!というつもりはありません。日本は日本として着実に進めていき、利益を創出できる体質を作っていけばいいと思っています。

コロナ禍を経て、2021年は勝負の年に

 2020年はコロナ禍で多くの製造業が大ダメージを蒙りました。工場が停止したり、物流が滞ったり、受注や納品が後ろ倒しになったりと大混乱でした。それでも中国市場や自動車関連が戻ってきて、明るい兆しも出てきています。
 厳しい2020年が明け、2021年は製造業全般にとって再起に向けた大事な年になるのは間違いありません。特にFA・自動化からすると、もっと強い口調で「勝負の年」、または「時代の分岐点になる重要な年」と言っても言い過ぎではないのかなと思っています。

人中心の製造現場

 これまでも長年にわたって人手不足を背景にFAや自動化の必要性が叫ばれ、自動化装置やロボット等が導入されてきました。特に近年は自動化技術の進歩と価格のこなれ感、熟練者やベテランの大量引退などが重なって、自動化市場は活況が続いてきました。
これはこれで良い傾向ですが、私のなかではいつも引っ掛かることがありました。
自動化が活況でも企業や製造現場の根底にあった考え方は「ヒト中心の製造現場」のまま。人でなければできない作業、人の方が効率が良い作業があり、作業の担い手の中心はどこまで行っても人。考え方は以前のままで、完全自動化や無人化工場の実現を見据えた取り組み、そこへの道として明確に捉えている人はごく一部だったのです。
よく日本のデジタル化や自動化は遅れているなんて言われますが、それはこうした意識が強く残り、ブレーキをかけながらアクセルを踏むような形だったことが影響していたのではないかなと思っています。

コロナ禍で180°変わった意識。完全自動化・無人化へ

 しかし2020年のコロナ禍で、人が動けなかったことで生産が止まり、人が中心であることがクリティカルなリスクになることが露呈しました。人が工場、製造現場で作業をするのは当然というこれまでの常識が覆りました。
言い換えれば、工場の目指すべき姿、コロナ対策や従業員の安全安心、顧客との信頼・取引、サプライチェーンを守るためには完全自動化や無人化工場に取り組むべきであるということを、今回は多くの人と企業がはっきりと理解したのです。さらに、テレワークをはじめ、業務継続のために多くの試行錯誤が行われました。絶対にムリとかたくなだった現場作業でも、それでも一部の作業なら自動化やテレワークでできるんじゃないかといって、とりあえず始めてみる企業も出てきています。この意識と行動の変化は何よりも重要なターニングポイントです。

2021年は機械・自動化中心の現場づくりのスタート

 まさに2020年は、作業は人から機械へと考え方が変わった年であり、それに続く2021年は、それを実践していく年になります。製造業全体がFA・自動化は必要である、やりたい、どうやればいいんだろうという雰囲気に包まれています。コロナはいまだ収まらずの状況ではありますが、期待は大きく、重要な年になるのは間違いありません。
 これからの工場が目指す姿は、完全自動化の無人工場、いわゆるスマートファクトリーです。いよいよアクセルを踏める時が来たのです。そこに向かうスピード感、取り組みの強化はこれまでとは全然違うレベル。自動化やデジタルが当たり前からのスタートです。
 withコロナでは、自動化は「may」ではなく「must」。顧客を守り、従業員を守り、会社を守るためにも、自動化は必須。とは言え、状況に合わせ、一歩一歩進めていく。焦らず着実にやっていきましょう!

■著者プロフィール
剱持知久
オートメーション新聞 編集長/ものづくり.jp株式会社 代表取締役 
1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。2007年に日最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜FA・制御・自動化、製造業DXの専門メディア「オートメーション新聞」編集長(現職)となり、2016年に製造業に特化したWEBサービスを展開するスタートアップ・株式会社アペルザの立ち上げに参加。2016〜18年「ものづくりニュース by aperza」編集長。2020年に独立し「ものづくり.jp株式会社」を設立。日本の製造業の利益創出をテーマに取材活動を行っている。趣味は釣り。

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