インターネットの普及と技術革新に伴って、クラウドサービスを利用する企業が増加しています。2021年1月現在、さまざまなサービスがクラウド化しており、有効に活用できれば企業は大きなメリットを得ることができるでしょう。
本記事では、情報システム担当者であれば理解しておくのが好ましい、クラウドサービスのメリット・デメリットと最新トレンドを解説します。また、2021年に導入をおすすめするクラウドサービスも紹介します。
クラウドサービスは、インターネットを通じて提供されるソフトウエアやハードウエアのサービスのことを指します。
クラウドサービスが登場する前は、企業が自社でサーバーやソフトウエアを保有するオンプレミスという形態が一般的でした。しかし、クラウドサービスを利用すれば、自社でサーバーやソフトウエアを購入したり、管理したりする必要がなくなります。
クラウドサービスには、ソフトウエアを提供する「SaaS」、OSやハードウエアなどを提供する「PaaS」、ネットワークのインフラを提供する「IaaS」などの種類があります。ソフトウエアを自社で開発する企業であれば、「PaaS」「IaaS」を利用する機会もありますが、それ以外の一般的な企業であれば、ソフトウエアを提供する「SaaS」を利用することが多いでしょう。
クラウドサービスには、企業にとってのさまざまなメリットがあります。どのようなメリットなのかを解説していきます。
クラウドサービスを利用すれば、自社でサーバーなどのハードウエアを準備する必要がありません。インターネットにアクセスできる環境だけあれば、サービス提供者と契約するだけで利用開始できます。
また、クラウドサービスは月額課金制のものが大半です。初期費用として高額なソフトウエア代を支払う必要がないのはメリットだといえるでしょう。
クラウドサービスは、利用できる機能や人数などの条件を基にしたプランが設定されているのが一般的です。企業の規模が拡大するにつれてプランを変更することや、最初は一部の部署のみで利用して徐々に拡大していくといった使い方ができます。
自社でサーバーやソフトウエアを管理するオンプレミスの場合は、自社内で定期的なメンテナンスを行い、サービスが円滑に利用できるように維持・管理する必要があります。しかし、クラウドサービスであればメンテナンスをサービス提供者に任せることができるため、情報システム担当者の負担が軽減されます。
クラウドサービスは、インターネットに接続できる環境であれば会社にいなくても利用できます。外出先や出張先、自宅でも利用できるため、テレワークとの相性が良いサービスだといえます。
クラウドサービスには多くのメリットがありますが、デメリットも当然存在しています。デメリットについても正しく理解しておきましょう。
オンプレミスの場合は、自社で利用するのに最適な形にカスタマイズできるのが一般的です。しかし、クラウドサービスではカスタマイズができないか、できる範囲が限られていることが多いため、もし自社に合わないサービスを選定してしまうと不都合が生じる可能性があります。
クラウドサービスの主体はサービス提供者にあるため、バージョンアップによって自社では使いづらくなったり、価格が改定されたりする場合があります。滅多にないことですが、最悪の場合はサービス提供者の倒産などによってサービスが停止する可能性もあることは理解しておきましょう。
自社で既に利用しているシステムとクラウドサービスの間でデータを連携させたい場合に、制約を受けることがあります。連携することが前提であれば、クラウドサービスを契約する前に、サービス提供者に連携が可能かを確認しておくのをおすすめします。
総務省の「通信利用動向調査」によると、2019年に調査対象となった約2,000社のうち、クラウドサービスを利用している企業の割合は64.7%となっています。また、同調査ではクラウドサービスの効果についても調査されており、85.5%の企業が効果があったと回答しています。
これらの調査から、クラウドサービスを利用する企業は半数以上であり、ほとんどの企業が効果を実感していることが分かります。2020年の新型コロナウイルスの影響でITツールの導入が増加したことから、2021年現在ではクラウドサービスが更に普及していくことが予想できます。
また、ここ数年でデジタル技術の活用によって企業を変革し競争力を維持するDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が強く認識されるようになりました。DXへ取り組む上で、新しい技術や機能を素早く取り入れることができるクラウドサービスを積極的に活用することは有効なため、選択肢に加える企業は増加していくでしょう。
利用するクラウドサービスの内容としては、オンラインストレージやメールサービスの利用率が高い傾向にありました。しかし、最近では会計や人事などのバックオフィス業務を担うソフトウエアや、生産管理や在庫管理などの業務を行うソフトウエアも登場しており、クラウドサービスの幅は広がっているといえるでしょう。
クラウドサービスは、高速通信を実現する5Gや、インターネット上のビッグデータを解析するAIなどの最新技術との相性もよく、今後さらに普及していくと考えられています。
ここでは、情報システム担当者の方に向けて、2021年に導入をおすすめするクラウドサービスを紹介します。新型コロナウイルスの感染拡大がいまだに止まらない中、テレワークを推進している企業も多いのではないでしょうか。今回は、快適なテレワーク環境を整えるために役立つクラウドサービスを中心に紹介していきます。
Microsoftが提供するクラウド型の統合型ソリューションです。WordやExcelなどのOfficeソフトに加えて、メールサービスやオンラインストレージ、ビジネスチャット、オンライン会議システムといった、ビジネスにおいて必要な機能が一通り含まれています。テレワークをする上で課題となる円滑な情報共有やコミュニケーションは、このサービスを利用することで解決できるでしょう。
テレワークをする上で不安になるのが、情報漏えいやデータ消失などの情報セキュリティの問題だと思います。Shadow Desktopは、PCにインストールするだけでセキュリティ対策ができるクラウドサービスです。PC本体にデータを保存せず、自動的にクラウド上に保存されるため、PCが紛失したり、故障したりしてもデータを保護することができます。
テレワークの影響で需要が高まっているのが、「紙+押印」を無くすことができる電子契約サービスです。クラウドサインは、PDF形式の契約書をクラウド上にアップロードして取引先と共有し、取引先の担当者がクラウド上で押印・署名することで契約を締結できる電子契約サービスです。全てがクラウド上で完結するため、契約のスピードを早める、紙代や郵送代などのコストを削減するといったメリットがあります。
クラウドサービスには、初期費用を安く抑えられる、柔軟に拡張できるといったメリットがあり、うまく利用すれば効率的にIT化を進めることができます。また、情報システム担当者にとっても、メンテナンスの手間がなくなるというメリットは大きいです。
テレワークが定着すると予想されるアフターコロナの時代を考慮しても、早期にクラウドサービスを利用しておく方が好ましいでしょう。
本記事で紹介したおすすめのサービスも参考にしつつ、クラウドサービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。