近年の労働者不足に悩む企業を中心に、DX化に向けた取り組みを開始する企業が増加しています。DX化により業務の効率化が進んで省人化に成功する事例がある一方で、予想外のトラブルにより思ったように効果が得られなかった企業も多く存在しています。
DX化を失敗しないためには過去の失敗事例を学び、注意点や事前準備事項などを確認する必要があります。
国内企業では「金融業」「情報通信業」を中心に、全体の2割強の企業がDX化に取り組んでいるという報告があります。最近では売上規模が小さい企業でもDX化に取り組む動きが生まれています。
地域別では関東地方、関西地方や東海地方などに集まる大企業で取り組み事例が多く見られる傾向があります。例えば関東地方では企業間連携によるDX化の動きが進められていたり、東海地方では製造業のデジタル活用により業務改革を推進する動きが見られたりするなど地域ごとの特色も見られます。
DX化に取り組む企業が増加する一方で、実際に効果が出ているという企業の割合は全体の6割程度に留まっています。同様の調査を行ったアメリカでは約9割が「結果が出た」と報告しており、両国で大きな差が発生しています。この結果からIT産業の本場であるアメリカに比べ、まだ十分にDX化を生かせていない現状が見られます。
ここではDX化の導入に失敗した事例をご紹介します。
セブン&アイホールディングスは、2019年7月にスマートフォンによるバーコード決済システム「7pay」の提供を開始しました。既存のセブンイレブンアプリを活用して、アプリ利用者は簡単に利用登録できて楽に支払いができるようになるという特徴がありました。
計画では2019年に2万店を超えるセブンイレブン店舗でサービスを展開し、2020年からはグループ各社への連携を予定していました。しかし、実際には想定外のトラブルにより3か月でサービス終了しています。
想定外のトラブルとは、あらかじめ入手したIDとパスワードを利用した不正アクセスによってされるリスト型攻撃と呼ばれるようなハッキングトラブルでした。調査報告では7payの認証レベルが十分でなかったことで、ハッキングへの防御力が弱かったことなどが報告されています。
アメリカの大手電力企業General Electric社では、2011年にIoTプラットフォーム「Predix」の開発をスタートしましたが完成とはなりませんでした。Predixは航空機のエンジンや生産設備などの産業用機器からデータを収集して、生産現場の効率化を目指していました。
しかし、Predixは開発段階でGeneral Electric内の各事業部間で意見の相違が生まれ、開発遅れやサービス停止などのトラブルが発生しました。主な原因は各事業単位で異なるベンダーや技術を用いていて、共通のプラットフォームを利用することが困難だったことにあります。
DX化に失敗する原因を解説します。
DX化は目的を達成するための手段なのに、ビジョンがはっきりしないままDX化だけが先行してしまい結果に繋がらなかった。
DX化の推進に必要な人材が社内にいないのに、外注にすべてのシステム開発/導入を委託して導入後の管理や運用がうまくいかなかった。
セキュリティ対策が不十分なサービスを導入して、外部からハッキングを受けた。
DX化後のツールやシステムを実際に使う部署の担当者の要望を聞かずに導入して、DX化後に作業の質や効率性が悪化した。
DX化を失敗しないためには失敗事例から学び、導入前に推進計画を作成することが重要です。まずはシステムやツールを導入して実現したいことを、はっきりと社内の各部署と共通認識を作ることです。
次に導入後にトラブルが起きないように、現場の担当者とコミュニケーションを取りDX化に伴う仕様決めをする必要があります。また、IT人材を確保して管理体制を整えることが長期的に安定した運用には重要です。
DX化は労働力不足が進む今後の日本では重要な課題となります。一方でDX化に失敗した経験を持つ企業も多く、これから導入を検討する企業は事前に多くの失敗事例を学ぶ必要があります。
失敗事例から学び、社内のコミュニケーションを十分に取ることがDX化を成功させるためには重要なカギとなります。