コンピューターを構成する5大装置(入力装置、出力装置、制御装置、記憶装置、演算装置)。その中でも、マウスやキーボード、モニターといった入力装置・出力装置の選定は、社員の生産性に直接的な影響を与えます。どれだけ生産性向上に向けた人材育成に取り組んでも、デバイスの操作性が悪かったりスペックが不足していたりすれば、業務効率は低下します。それでは、社員が快適に作業できる環境を整えるためには何に注意すればよいのでしょうか。この記事では、社内PC環境選定のポイントを詳しく解説します。
マウス、キーボードをはじめとして、オンライン会議で用いられるWebカメラ、マイクなど入力装置の重要性は増しています。早速、それぞれの選定ポイントを見ていきましょう。
日々のPC利用の操作性を左右するマウスは、機能や快適性が重視されます。その第一の選定基準としては「ワイヤレス or 有線」が挙げられるでしょう。近年はフリーアドレスやリモートワークといった制度の導入も進んでいることからタッチパッドやショートカットキーを用いた脱マウス化が推奨される場面もありますが、まずは適正な構造や操作性のマウスを選ぶことが生産性向上に対し、即時的な効果を発揮する場合があります。また、長時間使用しても手や手首への負担が少ない製品を選ぶことも長期的な生産性に寄与します。
入力装置としてマウス以上に不可欠なキーボードは、キー配列やフルサイズ or テンキーレスなどバリエーションがさまざまに存在します。さらにキーストロークの深さやキータイプ(メカニカル)にも差異が存在します。以下で、それぞれの違いを簡単に押さえておきましょう。
・フルサイズ/テンキーレスの違い
数字を多く扱う業務には、テンキー付きのフルサイズキーボードが便利です。しかし、デスクのスペースや使い勝手を優先する場合は、テンキーレスのコンパクトなモデルが好まれます。
・メカニカル/メンブレン/パンタグラフの違い
メカニカルキーボードは、個々のキーにスイッチがあり、耐久性や反応速度が高いため、プログラミングや文章作成が多い作業には最適です。一方、1枚のシートスイッチでできているメンブレンキーボードはコストが小さく、一般的なオフィス作業に向いています。パンタグラフはノートパソコンでよく使用されている方式で、軽い打鍵感と薄型設計が特徴です。
リモートワークやハイブリッド勤務が一般的になり、 ノートPCに付属するものも含め、Webカメラはもはや必須デバイスとなっています。一般的なWeb解像度はフルHD(1080p)以上が推奨されており、映像の質を左右するフレームレートは30fps以上が推奨されます。会議室の大型のモニターに対し複数人が向かって話すような形の会議を想定している場合は、90度~150度など広い画角の製品を選択することも必須要件となるでしょう。
オンライン会議の映像で伝わる視覚情報は相手の印象を大きく左右するため、ネットワーク環境と合わせて、ここまで述べたようなWebカメラの品質についても基準を満たすことが重要です。
Webカメラと同様、マイクもオンライン会議の質を大きく左右します。クリアで聞き取りやすい音声は、会議のスムーズな進行と効果的なコミュニケーションに欠かせません。ノートPCやWebカメラに内蔵されたマイクも便利ですが、音質や雑音処理の観点ではやはり専用の外付けマイクが推奨されるでしょう。
例えば、複数人が参加する会議では360度の音を拾える全指向性マイクが推奨される一方、騒がしい場所での使用が想定される場合には単一指向性やノイズキャンセリング機能を持ったマイクの方が効果を発揮する場面もあります。
モニター、スピーカー、プロジェクターなどの出力装置も入力装置と同様に、リモートワークや遠隔でのやり取りが当たり前となった現在、かつて以上に重要性を高めています。
一度に受け取れる情報量を大きく左右するモニターは、職種や用途によってその必要なサイズや枚数が異なります。24インチから27インチ程度が多くの作業に適していますが、プログラミングやデザイン、動画編集などより細かな作業が必要な場合は30インチ以上のモニターも効果的です。また、マルチタスクを行う場合は、デュアルディスプレイ以上、トリプルディスプレイの環境が求められる場合も少なくありません。推奨される解像度も業務の内容によって異なりますが、フルHD(1080p)・リフレッシュレート(一秒間に画面を更新できる回数の指標)60Hz以上を目安と考えましょう。
プレゼンテーションやオンライン会議、音声コンテンツの再生時の音質も受け取れる情報量や生産性を大きく左右します。Webカメラやコンピューター本体にはスピーカーが付属していることがほとんどですが、設置スペースに合わせてデスクトップスピーカーやサウンドバーなどを用意することが効果的な場合もあります。
オンライン会議で音声がこもったように感じられる場合、スピーカーで高音域がカットされている場合もあります。低音域・高音域のバランスとエコーキャンセラー機能は、オンライン会議などでの利用を想定している場合は、事前によく確認しておいた方がよいでしょう。
プロジェクターは、会議やプレゼンテーション、研修などで多くの人に情報を共有する場面において、非常に重要な出力装置です。モニター同様、一般的な会議やプレゼンテーションにはフルHD(1080p)以上が推奨されます。また、プロジェクターの視認性において重要なのが、表示する環境の照明条件に合わせて明るさを選ぶということです。暗い部屋であれば2000ルーメン程度でも実用可能ですが、明るい部屋で使用するならば3000ルーメン以上の明るさがあるプロジェクターが推奨されます。
また、部屋のサイズや設置場所に応じて最適な投影距離やスクリーンサイズは異なります。一般には「距離(cm) ÷ 2.5~3」が最適なスクリーンサイズの計算式と言われています。ただし、狭い会議室で便利な短焦点プロジェクターでは、わずか数十センチメートルの距離から大画面に映像を投影できるものもあります。
コンピューターの入力装置・出力装置の選定基準について具体的に解説してきました。ここまで語った内容はあくまで一般論であり、職種や個々人の特性によって最適なPC環境は変わってくるでしょう。
近年はIT人材需要の生産性向上に対する意識の高まりから社員が自由にPC環境を選べる制度を設ける企業も増加しており、キーボードやマウス、モニターなどの入力・出力装置についても同様の状況が見られます。「会社 キーボード 使いにくい」などのキーワードで検索すると、社内のPC環境が満足いく環境でないことへの不満の声が数多くあり、個人所有のデバイスを持ち込むことを検討する従業員も少なくないことが推察されます。
企業の把握していないIT機器を社内に持ち込むことを「勝手BYOD(シャドーIT)」と言い、サイバーセキュリティの大敵として知られています。生産性を高めるだけでなく、情報流出やウイルス感染のリスクを下げるためにも社内PC環境の快適さは不可欠です。ガイドラインを設けてエビデンスを提示した上で、社員個々のニーズに応じた環境構築を支援していきましょう。
シャドーITについて詳しくは「セキュリティを脅かす「シャドーIT」のリスク どのように防ぐべき?」をご一読ください。
マウス、キーボード、モニターなど、日々の業務の生産性に大きく関わる入力装置・出力装置を選定し、快適で安全なPC利用を実現するにあたって重要なポイントをまとめてまいりました。ほとんどの方が、会社のPC環境に不満を覚えた経験が一度はあるのではないでしょうか。ここで挙げたような基本的なポイントを押さえるだけでも、生産性に与えうる効果はけして小さくありません。ぜひ、本記事の知識を今後のOA機器調達やPC環境整備に生かしてみてください。