地球温暖化やエネルギー価格の値上がりなど、近年企業のエネルギー利用に関する課題は重要性を増しています。省エネルギー化や再生可能エネルギーへの切り替えなど、今後も各企業はエネルギー問題に取り組まなければいけません。
エネルギーマネジメントシステムは再生可能エネルギーの利用と、電気使用量の削減を進める取り組みとして注目されています。この記事では特にAIを活用したエネルギーマネジメントシステムについて解説します。
エネルギーマネジメントシステムとは、発電設備や蓄電池などからなる電力システムを効率よく運用して省エネルギー化するシステムです。近年、企業において省エネルギーが求められる中で、今後必要な技術として注目されています。
例えばオフィスビルなどで施設内の太陽光発電量と消費電力をディスプレイに表示している取り組みがよく見られるようになりました。このようなシステムの課題は日中に太陽光発電が余剰となって使い切れないのに、発電量が減る夜間には昼間の余剰電力を使えないといったことです。こうした問題にエネルギーマネジメントシステムはエネルギーの効率化で対策ができます。
エネルギーマネジメントシステムは、エネルギー使用量を計測してモニタリングすることと、モニターしたデータを分析して効率化することの二つから成り立っています。
エネルギー消費を削減するための最初のステップとして、エネルギー使用量を計測することが重要です。エネルギー監視用のセンサーを使用して、システム内の機器類が消費するエネルギー量を計測します。例えばオフィスビルや商業施設向けのシステムでは、受変電設備や空調設備、照明設備などが計測対象となります。
最近企業が取り組んでいるエネルギーマネジメントシステムでは、太陽光発電などの再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせたシステムでAIを活用した実証が開始されています。こうしたシステムの導入は企業のIT活用とカーボンニュートラルへの取り組みとして今後も増加することが予想されます。
こうしたシステムにおけるAIの役割とは、例えば天気予報や施設の電力使用予測量から太陽光発電の充放電計画を立てて、効率的な運用でコストを削減することです。AIの学習機能によってデータが蓄積されるにつれて、正確な計画立案が可能になりコスト低減に繋がります。
そのほかにもAIによってシステム内の使用機器の故障予測を行うケースも検討されています。機器が使用するエネルギーが増加する傾向を見て、AIが故障を事前に判断して早期対策によって長期間のシステムダウンを防止する効果が期待できます。
AIを活用したエネルギーマネジメントシステムの具体例をご紹介します。
大阪ガスが取り組むAIエネルギーマネジメントシステム「Energy Brain」は、空調設備の電力消費量を市場の電力需給バランスを見て自動制御するシステムです。AIは気象予測データや消費者の電力需要予測、機器の稼働状況、電気・ガス料金などの情報を基に効率的な運転パターンでシステムを制御します。実際に約2000台のエネファームを使った実証で、発電量の最適化を実現しました。
日立製作所では研究開発拠点において独自のエネルギーマネジメントシステムを実証しています。目的はコスト削減とCO2排出量削減を両立するシステムの構築です。その特徴は発電設備の故障予測や長寿命化や、蓄電池の充放電を無駄なく計画することなどです。
村田製作所の例は自社工場の使用電力をすべて再生可能エネルギーにした取り組みです。金津村田製作所では太陽光発電と蓄電池のシステムを「efinnos」によって制御して、実際に2021年11月には再エネ電力100%を実現しました。「efinnos」はAIによって太陽光発電の効率的な充放電を行ったり、電力使用がピーク時には電力購入を止めてコストを削減したりする機能があります。
AIを活用したエネルギーマネジメントシステムはCO2排出量削減などが強く求められるようになると、企業のエネルギー利用効率化のために必要な技術となります。 また再生可能エネルギーを設置するスペースには限界があり、エネルギー利用の効率化は重要なテーマとなることが予想されます。