2021年現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)があらゆる業界のトレンドとなっています。製造業においてもDXは重要なテーマであり、「インダストリー4.0」「スマートファクトリー」などのDXに関わるキーワードが注目されています。
しかし、製造業のDXといっても、「何を目指せばよいのか分からない」「何から手をつければよいのか分からない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
本記事では、製造業にとってのDXのメリットや、DXで解決すべき課題、DXの始め方について解説します。
まずは、製造業にとってのDXのメリットを考えてみましょう。製造業のDXが実現したときのイメージをご紹介します。
製造業では、受注入力や生産実績の記録、在庫状況管理、出荷実績の記録などのさまざまな管理業務がありますが、これらの業務をITツールやIoT機器の導入によって効率化することで、生産性が向上します。その結果、生産コストや人件費の削減といったメリットを得ることができるでしょう。
製造業では、一般的には営業やマーケティングによって把握した市場ニーズを基にして新製品の開発・製造を行っています。しかし、多くの企業では部門別でシステムが構築されており、部門をまたいだ情報共有がタイムリーにできていないケースが多いように思います。市場ニーズに合致した製品を開発・製造するのに時間がかかってしまうと、先行者利益を失ってしまうかもしれません。
DXによって部門間の連携を強化し、リアルタイムで情報共有ができるようになれば、市場ニーズに合致した製品の開発・製造をよりスピーディに実現できるようになると期待できます。
DXによって製造現場の生産性が向上すれば、より多くのリソースを新たな製品やサービス、ビジネスモデルを創出するために割けるようになります。
新たな製品やサービス、ビジネスモデルによって顧客満足度を向上させることができれば、企業の競争力は増すことになるでしょう。
DXが製造業にもたらすメリットについては上述したとおりですが、DXはすぐに実現できるものではありません。まずは目先の課題から少しずつ取り組んでいく必要がありますが、具体的に製造現場がどのような課題を抱えているかをご紹介します。
一昔前の大量生産の時代とは異なり、現在は個々の顧客ニーズに合わせた多品種少量生産が主流になりつつあります。さらに、需要変動の波が激しいため、生産計画や生産体制をうまく調整できなければ、過剰に在庫を抱えてしまったり、反対に欠品による機会損失が発生してしまう可能性があります。
日本では少子高齢化に伴う人手不足が深刻化しつつあります。製造現場にはその人でしかできないような属人的な業務や、人の手に頼った製造工程が数多く残っており、大きな課題となっています。
多くの製造現場では、紙の帳票への記録やエクセルでの集計作業などのアナログな業務がまだまだ残っています。このようなアナログな業務にかかる工数が多いままでは、生産性を向上させることは難しいでしょう。ITツールの導入によってアナログな業務をデジタルに置き換えることが求められています。
ここでは、製造業がDXを始める場合にどのようなステップで進めるのが良いかを解説します。DXの実現は簡単なことではありませんが、最終的なゴールを描いて少しずつステップを進めれば、成功させることができるでしょう。
DXは、ITツールを導入すれば実現できるというものではありません。DXで解決すべき課題が何かや、DXによってどんな企業を目指すのかというイメージを最初に定めることが重要です。
また、DXは個々の部門が独自に取り組んでいても実現することは難しく、全社が一丸となって取り組む必要があります。そのため、経営陣がリーダーシップを発揮して推進していけるかどうかが、成否を分けるといえます。
DXは、製造業において肝である製造現場の課題を解決することから始めるのが望ましいと考えられます。ITツールやIoT機器の導入によってアナログな業務を効率化したり、さまざまなデータを収集して製造現場の見える化と改善を進めることによって、製造現場の生産性を向上させていきます。
DXをうまく進めるコツは、「スモールスタート」です。小規模な取り組みからスタートして都度効果の検証を行い、問題なければ次のステップに進むという流れを繰り返すことで、過剰な投資を防ぐとともに、失敗のリスクを軽減することができます。
まず製造現場の生産性向上が進めた上で、DXの取り組みを全社に拡大していきましょう。営業部門、マーケティング部門、資材部門などとの連携を強化することで、企業全体としての生産性を向上させるとともに、市場ニーズに合致した製品をスピーディに生み出せるようになるでしょう。
DXによって多くのデータが収集されて活用できるようになれば、新製品やサービス、ビジネスモデルの創出がしやすくなります。ここまでたどり着くことができれば、DXは成功だといえるでしょう。
また、新製品やサービスを創出するだけではなく、既存の製品の付加価値を向上させることもDXの目的となります。コストダウンやリードタイムの短縮、性能の向上、アフターサービスの充実といった付加価値を付けることで、顧客満足度を高めることができます。
今回は、製造業にとってのDXのメリットや解決すべき課題、DXの始め方について紹介してきました。
日本の製造業は少子高齢化による人手不足をはじめとするさまざまな課題を抱えており、国際的な競争力が低下することが懸念されています。しかし、DXに取り組んで生産性を向上させたり、顧客満足度を向上させることで、競争力を取り戻すことができるでしょう。
どのようにDXを始めたらよいか分からないという方は、本記事で紹介したことを参考にして、少しずつでも取り組みを進めていただきたいです。