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AIの普及によって起きる電力の大量消費

レンテックインサイト編集部

AIの普及によって起きる電力の大量消費

近年、業務効率化や労働力不足対策としてChatGPTなどのAIの普及が進んでいます。AIの運用にはビッグデータが必要なため、今後も普及が続くと世界のデータセンターの通信量は2026年には2022年と比較して約2倍に達するという予測が国際エネルギー機関で試算されています。

データ通信量の増大は電力消費量の拡大に繋がります。Googleなどのネット検索では1回あたり約0.3ワットの電力を消費するのに対し、AIは大量のデータ通信量が必要になるため1回のリクエストで約2.9ワットとネット検索の10倍ほどの電力を消費します。

今後電力消費の増大が続くと地球温暖化の原因となる温室効果ガスの増加が起こるため、各国でデータセンターの電力消費対策が検討されています。

生成AIが消費するエネルギーとCO2排出

実際にAIがどれくらいの温室効果ガスを発生させるかということを、スタンフォード大学が研究発表しています。発表によると、例えば生成AI「BLOOM」が必要な情報を学習するときに発生したCO2(二酸化炭素)は25tに達したとされています。この量は日本人一人当たりのCO2排出量(日本全体のCO2排出量を日本の人口で割ったもの)の約2.5倍に当たります。

スタンフォード大学の研究結果によると、CO2排出量はAIによって大きく異なります。上述したBLOOMに対して、OpenAIが開発した自然言語処理モデル「GPT-3」は8倍以上のCO2約500tを排出します。この数字は日本の約100世帯分が出す年間CO2排出量と同等の量です。

生成AIの中には消費電力を抑えCO2排出量削減を可能にするモデルが登場しています。NTTが開発した言語モデル「tsuzumi」は、GPT-3に比べて300分の1にCO2排出量を抑えたと報告しています。従来のモデルは学習時に大規模なデータセットや計算リソースが必要でしたが、「tsuzumi」はデータの質と量を向上することで少ない容量のデータから高い言語処理能力を実現しています。

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国内外のデータ通信量

近年のデータ通信量は世界的に増加を続けています。2014年には世界の月当たりデータ通信量が60エクサバイトだったのに対して、2019年には201エクサバイトまで増加しています。スマートフォンの普及などが主な原因と考えられますが、今後はAIの普及によりさらなる増加が予想されています。

日本国内のデータ通信量を発表している日本政策投資銀行によると、2011年に1,512Gbpsであったインターネット・トラフィック量は2021年には23,899Gbpsに増加しています。今後のデータビジネスは年6.5%成長が予想されていて、年間消費電力は2022年の8,000GWhから2050年には41,200GWhまで増えることが予想されています。

こうした事情を背景として、海外の有名情報サービス業であるAmazonやMicrosoftといった企業が日本国内でのデータセンター投資計画を発表しています。

Amazon

・データセンターの建設やネットワーク関連への投資を2兆2,600億円計画
・生成AIの普及によるデータ処理量の増加に対応することを検討

Microsoft

・日本国内のAIやクラウド強化に2024年から3年間で約4,400億円の投資計画を発表
・今後日本で起きる労働力不足などに対してAIの需要が増加すると発表している

Google

・広島県や和歌山県で大規模な土地を取得しておりデータセンター用途への投資と考えられている

消費電力増加に対する国内外の取り組み

国内外で増加するデータセンターへの投資に、世界各国で地球温暖化への危惧が高まっています。化石燃料を燃やす火力発電所の建設に抑制がかかるように、データセンターの建設に対しても規制を取り入れる動きが始まっています。

アメリカやドイツ、中国などではデータセンターの建設に規制が導入され始めています。例えば再生可能エネルギーの使用を義務付けることや、電力網への新規通信を制限するなど規制が始まっています。実際にアイルランドでは100%再生可能エネルギーを導入したデータセンターの運用が開始される例も現れています。

日本国内では都市部に集中するデータセンターの稼働で、電力需要のバランスが悪化する問題が発生しています。特に関東地方、関西地方にデータセンターが集中しており、千葉県や神奈川県、東京都心などで電力不足の傾向が表れています。そうした中で政府は「デジタル田園都市国家構想」を発表し、地方へのデータセンター分散を推進しています。

例えば群馬県では大規模な太陽光発電施設を設置し、電力使用量が大きいデータセンターの電力使用量の30%を超える部分を再生可能エネルギーで供給する取り組みを開始しています。発電量が不安定な太陽光発電の電力を蓄電池に貯めて使用するシステムを採用しており、年間のCO2削減量は571tに達するとしています。

増大する通信量と電力、今後必要になる展開

今後AIの普及が進むと同時に、データ通信量増加と電力使用量増加が予想されています。政府は「エネルギー基本計画」の改定により電力使用量拡大に対する電源構成の策定を検討しています。原子力発電所の再稼働や、火力発電のカーボンニュートラル対策など多くの課題に取り組む必要となってくるでしょう。

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