企業がデジタル化、DXを通じて競争力を高めるにあたって、IT部門や情報システム部門が中心的な役割を果たすのは間違いありません。長年IT開発を外部化してきた日本のユーザー企業が、内製化やベンダーとの密な協業を進めるために有効な手段が求められています。 そこで、効果的と考えられる施策の一つが「ハッカソン」です。 本記事では誰でも理解できるよう平易、かつ具体的にハッカソンを開催・運営するためのポイントをご紹介します。
ハッカソンとは、「チーム単位で短期集中的に一つの製品やサービスといった成果物の開発に取り組むイベント」です。そもそも1990年代~2000年代前半にシリコンバレーを中心に開催され始めたイベントであるハッカソン。ハック(システムの開発や改良に取り組むこと)をその名前に冠していることからも分かる通り、ソフトウエアエンジニアやプログラマー、プロジェクトマネージャーといったIT人材が中心となるイメージの強い施策ですが、デザイナーなどのクリエイティブ人材や営業、企画などのビジネス人材とともにチームが形成されることもありその形態はさまざまです。
そのハッカソンのメリットとして挙げられるのが、以下の5つのポイント。
1.新たな事業やアイデアの創出につながる
2.スキルアップやケイパビリティ獲得につながる
3.メンバーのエンゲージメント向上やコミュニケーションの活発化に効果がある
4.採用やブランディングにおいてプラスの影響をおよぼす
5.他社や外部の人材との協業や交流につながる
ハッカソンでポイントとなるのが、一つのテーマを設定し、数日から一週間の短期間で、明確なゴールに向かって、多様な人材が協力するということです。ときには審査員による評価が行われ、優れたプロジェクトには賞や賞金が授与されることもあり、マラソンに例えられるように楽しみながらチーム感覚を醸成し、スキル獲得やアイデア創出を達成できます。
外部に向かって広く募集を行えばそれがそのまま自社の広報となり、採用やブランディング、他社や外部の人材とのネットワーキングの効果を発揮します。もちろん、ハッカソンには社内向けの小規模なもの、外部企業と共催で行うもの、産学連携で地域の課題を解決するために行うものなどさまざまな形式が存在し、それぞれに目的や効果は異なります。
それでは、ハッカソンの具体的な実施方法に話を進めましょう。
ハッカソンをはじめて開催するにあたってどのように進めればいいのか分からない。 ここでは、そのような悩みを持つ方に向けて基本的な計画と運用の流れをご紹介します。
ハッカソンの成功には、開催することで何を達成したいかという目的の設定が不可欠です。その目的に従って、ハッカソンの課題や参加者の定義、ルール、日数などを決めることになります。例えば、そもそもハッカソンの効果を測定したい、イノベーション文化を社内に根付かせたいという目的がある場合は、社内ハッカソンを試金石とし、そこでの効果測定を次回以降に活かすことを前提としてテーマを設定することも少なくありません。採用や社内交流を目的とするならば、数時間程度でアイデアのプレゼンまでに取り組むアイデアソンが効果的な場合もあるでしょう。運営チームの規模も目的に応じて変わります。
目的の設定、運営チームの形成ができたら、開催形式とテーマを具体化していきます。ハッカソンの形式は大きく三つの種別に分けられ、それぞれに共通する目的もあるものの、下記の通りマッチする目的の性質は異なります。
・社内ハッカソン:新規アイデアの創出・社員のチーム力強化・イノベーション文化の醸成
・一般ハッカソン(広く社外からの参加も公募する一般的なハッカソンの形式):新規アイデアの創出・社外人材とのネットワーキング・採用・自社の広報・ブランディング
・共同ハッカソン・産学連携ハッカソン:新規アイデアの創出(オープンイノベーション)・社会課題の解決・他社との共同開発・関係性構築
それぞれの開催形式について多くのレポートが公開されているため、その中からモデルケースを複数選定し、さらにイメージを具体化していきます。
形式が決まったらいよいよモデルケースを参考に下記のような詳細を具体化していきます。
・ルール
・部門
・チームの人数
・提供されるリソース(データセット、ソフトウエアなど)
・成果物の発表形式
・賞金や賞品の内容
・開催日時
・会場
・交流会の開催の有無・内容
・当日のオペレーション
・ネームプレートや筆記用具、ホワイトボードなどの準備物
・効果測定方法
募集期間は開催形式や成果物の内容にもよりますが、開催の3カ月前には詳細を具体化し、参加者の募集に取り組みたいところです。大規模なハッカソンでは説明会を兼ねたセミナーが開かれ募集要項が共有されることもあります。
いよいよ、当日のハッカソン実施・運営に入ります。「アイスブレイク→インプットセミナー(ルールや求める成果など概要を伝えるためのセミナー)→アイデア・プロダクト作成→評価→表彰」といった一連の流れがうまくいくかどうかは事前の準備にかかっています。
ハッカソンはその準備や実施と同等かそれ以上に効果測定とフィードバックの段階が重要になります。必ずアンケートを実施し、今回の良かった点・改善点などの意見を募り、今後の採用やハッカソン開催に活かせるインサイトを獲得しましょう。また、当日やその後の展開をレポートとして公開することで広報やエンゲージメント向上の効果はさらに高まります。
最後に、ハッカソン運営のポイントを社内・社外別に見ていきましょう。
社内ハッカソンは開催の自由度が高く、最初に開催するハッカソンとして選ばれることが多いです。そのため、課題にぶつかることも少なくなく、複数回を通じてハッカソン自体の知見を蓄積・共有していくという姿勢が求められます。参加者が集まらなければ開催自体が難しくなり、知見も蓄積されないため最初はハードルを低く設定し、徐々にハッカソン文化を社内に浸透させていく努力を意識してください。また、回数を重ねるごとにマンネリ化してしまうことを避けるため、勉強会を兼ねる、成果や参加者の声を社内で共有するなどの工夫が求められます。
一般ハッカソンや共同ハッカソンなど外部の人材も参加するハッカソンでは、どれだけ目的・テーマに沿った準備ができるかに成功がかかっています。経験のあるエンジニアやプログラマーなどの人材の採用やプロダクトの創出につなげたいのか、広くアイデアを募りながら自社について知ってもらう機会としたいのかによっても、参加ハードルの設定や賞品・賞金の設定は異なります。また、創出されたアイデアの権利について参加同意書やFAQなどで明確化しておくことも、社外の人材の参加するハッカソンでは重要になります。
ハッカソンのメリットから計画の手順、運営のポイントに至るまで解説してまいりました。開催・運営にあたっては予算や人員が求められることもありIT企業や大企業が開催するもの、というイメージの強いハッカソンですが、ハッカソンやアイデアソンを開くことはエンゲージメント向上やアイデア創出において企業規模、業界を問わず効果を発揮します。ぜひ、企業に変化をもたらす施策の一環として、開催を検討してみてください。