エンターテインメント領域において、近年最も注目を集めている技術の一つがメタバースです。仮想空間をまるで現実世界のように運用できるメタバースは、暗号通貨の普及とともに成長しつつあり、産業面での運用にも期待されています。
この記事では、そんな産業用メタバースに注目しながら、活用のメリットや具体的な産業用メタバースの種類について解説します。
産業用メタバースとは、その名の通り産業分野での運用を目的としたメタバースのことです。
メタバースとはインターネット上に構築された3次元の仮想空間を現実空間のように運用するための技術ですが、産業用メタバースは工場やロボットの運用などにそれを活かします。
生産ラインの開発・設置検討や、製品のシミュレーション、不具合の確認・対応の実施、実証実験の実施など、多彩な活用方法が存在するのが特徴です。
また、XRデバイスを装着した現場関係者がメタバース空間で合流し、共同でシミュレーションを実行したり、ミーティングを実施したりするような使い方もあるなど、開拓の余地が大きい領域です。
産業用メタバースは多くの活用メリットが想定されており、今後の発展に業界から根強い期待が寄せられています。
例えば、開発製品の品質向上は、産業用メタバース活用によって得られる代表的なメリットの一つです。
プロトタイプの開発をメタバース空間で完結できるので、最小限の材料費や設備、スペースで質の高い開発を進められます。
また、製品のシミュレーションもメタバース空間なら高い精度で、何度でも実行できます。
従来であれば、巨大なテストスペースと高価なプロトタイプ開発が必要とされてきましたが、産業用メタバースがあれば、仮想空間でそれを実行できます。
加えて情報共有も仮想空間で完結でき、海外出張などの移動負担や費用負担が発生しなくなることから、やはり開発コストの削減と品質向上において、重要な意味を持つ技術であるといえるでしょう。
産業用メタバースは、すでにさまざまな企業で開発が進んでいます。以下の事例は、世界の代表的な産業用メタバース関連のサービスです。
ドイツの大手電機メーカーであるシーメンスは、ソニーやAWSと連携したオープンデジタルビジネスプラットフォーム「Siemens Xcelerator」を用いた産業用メタバースサービスを発表しています。
ソニーと連携して開発した製品設計ソリューションである、「NX Immersive Designer」は、没入性の高いデザイン制作を可能にするエンジニアリング機能を備えるとして、提供の開始が待たれるところです。
またAWSとのパートナーシップにおいては、シーメンスのプラットフォームにおける生成AIのアプリ構築とスケーリングをより簡単に行えるような仕組みの実装が発表されました。
AWSが提供する「Amazon Bedrock」とシーメンスの「Mendix」を主要なローコードツールとすることで、開発のしやすさを飛躍的に向上させるとのことです。
フランスの大手3Dソフトウエア開発会社であるダッソー・システムズは、工場の生産設備や自律搬送ロボット(AMR)などを仮想空間に3Dモデルで再現するソフトウエアを発表しています。
工場における生産ラインのレイアウトをメタバース空間で設計したり、設備の動作を仮想的にシミュレートしたりすることで、コストの削減と業務効率化を実現できる画期的なソリューションです。
このように、産業用メタバースは多くの可能性を秘めたテクノロジーであることには間違いありません。しかし産業分野におけるメタバース活用はまだ発展途上であり、土台となるデジタル活用が十分に進んでいないケースも日本では見られます。
産業用メタバースは、高度に現場でデジタル技術が導入され、XRなどのハイテクを使いこなせるようになった企業からその活用が進んでいくと考えられるでしょう。
そのため、まずは基本的なDXから段階的にハイテクを浸透させていくことが企業には求められます。アナログ業務が主体の現場でいきなりメタバースを運用するのではなく、まずは現場の状況に合ったソリューションの導入することが重要です。
この記事では、産業用メタバースとは何か、どのような活用メリットがあるのかなどを解説しました。
産業用メタバースは多くの企業が注目している反面、まだ本格的な運用に耐えうる企業は少なく、十分なサービスの普及も進んでいないのが現状です。
まずは基本的な業務のデジタル化から進め、現場の習熟度や市場のニーズに応じて、メタバース運用を進められるのが理想といえるでしょう。