ECサービスの運営やさまざまな契約、なりすましの防止といった用途で活用されているeKYC。「コロナ禍でオンラインでのやり取りが普及したこともあり、そのメリットや導入方法を知ることは、利便性の高いサービスの確立や本人確認の効率化を図るにあたって不可欠と言っても過言ではありません。
本記事では、eKYCのそもそもの成り立ちからメリットまでを解説し、導入の流れや注意点についてもご紹介します。
eKYCとは「electronic Know Your Customer」の略で、顧客の本人確認プロセスをデジタル技術を活用して行う方法です。そもそもKYC(Know Your Customer)という用語は主に金融機関で顧客の本人確認を意味する用語として用いられていました。その構成要素は運転免許証などの身分証明書で個人を特定し、またその情報が確かかどうかを改める「身元確認」と、口座開設などの手続きを本人が実行しているかどうかを確かめる「当人認証」の二つです。
KYCはサービスの安全性や信頼性を確保する上で重要なプロセスですが、本人確認書類とそのコピーのやり取りや書面の記入、住所の確認など多くの手間が金融機関・利用者の双方にかかり、負担となっていました。そこで2018年11月に犯罪収益移転防止法施行規則が改正され、「eKYC」が導入されたことで状況に変化が訪れます。なお、その一方で郵送などを用いたオフラインでの本人確認は一部厳格化されました。
手間や時間の節約につながるeKYCは金融機関のほかでも広く活用されており、下記のようにさまざまな利用事例が見られます。
また、一度も対面することなくオンラインで仕事をすることも可能になった昨今、従業員の管理や業務委託にあたってeKYCの活用に注目が集まるケースも見られます。
eKYCのメリットについて4つのポイントで見ていきましょう。
デジタル化によりKYCプロセスを自動化・迅速化することで、大きな時間の節約につながります。従来のKYCが数日から数週間かかることもあるのに対し、eKYCは数分で完了することもあります。
eKYCは対面での本人確認にかかる時間的・人的コストや、物理的な書類の保管、処理、および運搬にかかるコストを丸ごと削減してくれます。顧客基盤が大きい企業や、複数の市場で活動している企業にとって、このコスト削減は大きな利点となります。
eKYCは多要素認証やマイナンバーカードを用いて、「身元確認」と「当人認証」の安全性を高められるよう設計されています。また、データの暗号化や不正アクセス防止機能を持つセキュリティシステムを活用することは、物理的な書類以上に効率的かつ徹底した顧客データなどの機密情報管理につながります。
eKYCにより迅速かつ低コストで本人確認を行えるようになるということは、顧客や従業員といったユーザーの手間・時間の節約にもつながるということです。面倒な手順を踏むことなくサービスの利用やシステムへの登録が可能になることで、新規顧客の獲得や既存顧客の維持につながる、迅速なオンボーディングなどが可能になります。
上記のように、eKYCは企業、顧客や従業員といった個人の双方にメリットをもたらします。
eKYCを自社サービスや社内システムなどいずれのパターンで導入するにあたっても、まずは要件定義が必要になります。eKYCを手軽に導入できるパッケージ型のシステムやeKYCの導入を支援するサービスは数多く存在します。また、例えば犯罪収益移転防止法に対応したeKYCの手法は下記のように個人向け・法人向けでさまざまに存在し、それぞれに対応できるシステム・サービスは異なります。
【1】本人確認書類の画像+容貌の画像
【2】IC チップ情報+容貌の画像
【3】本人確認書類の画像もしくはIC チップ情報+銀行等への顧客情報の照会
【4】本人確認書類の画像もしくはIC チップ情報+顧客名義口座への振込み
【5】公的個人認証サービスの署名用電子証明書(マイナンバーカードに記録された署名用電子証明書)
【6】民間事業者発行の電子証明書
【7】登記情報提供サービスの登記情報
【8】電子認証登記所発行の電子証明書
参考:犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法の概要┃金融庁
ほかにも古物営業法、携帯電話不正利用防止法などeKYCに関連する法令は複数存在し、まずは業界ごとにそれらへの対応の必要があるかどうかが一つのポイントとなります。対応すべき法律の次に考慮すべきなのが、コストとユーザーの負担のバランスです。eKYCは従来のKYCに比べて負担を軽減できるとはいえ、手法によって目視確認が必要だったり、ユーザーにとって画像の撮影やアップロードが負担になったりするという側面はあります。
KYCの目的に対し過不足のない手法を選定することに注意してください。
近年普及の進むeKYCについてその意味からメリット、導入の注意点に至るまで解説してまいりました。2023年03月には民間事業者10社とデジタル庁の連携により作成された『⺠間事業者向けデジタル本⼈確認ガイドライン』が公開され、法令等で本⼈確認について定めのないサービスでも利用できるeKYCの基礎知識が提供されました。このように、幅広い業界・企業への普及が後押しされているeKYCについて、今のうちに押さえておきましょう。