日本政府は2050年のカーボンニュートラル達成目標を掲げ、達成に向けた国内企業の取り組みを促進しています。そのためにはまず、各企業が自社のCO2排出量を把握することがカーボンニュートラル実現の入り口となります。
排出量の算出は各企業が独自で取り組む場合が多く、算出ルールの取り決めや手動でのデータ収集に多くの工数がかかっています。この記事では、最近大企業で採用され始めた、排出量算出自動化サービスについて解説します。
CO2排出量算出は、2015年にパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)をきっかけに推進されるようになりました。COP21において、地球の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えるという目標が設定されたことが要因です。世界の200近い国や地域が参加する大規模な国際会議でルール化されたことで、各国の対応が求められています。
近年の地球温暖化による異常気象や自然災害は増加しています。2023年は大規模な干ばつや森林火災など世界的な異常現象が発生し、日本でも記録的な猛暑や海水温の上昇、台風の大規模化など多くの問題が増加しています。その原因はCO2をはじめとする温室効果ガスにあると考えられています。
日本政府は2050年にカーボンニュートラルを達成するため、国内企業にCO2排出量削減を求めています。そのため各企業は今後、自社が発生させているCO2排出量の算出と定期的な報告が必要になってきます。それ以外にも欧州など環境先進国の企業と取引する場合には、CO2排出量の開示などが求められます。さらに環境意識の低い企業は、投資家からの資金調達が困難になるという大きな課題が発生する可能性があります。
CO2排出量の算出方法の一つにカーボンフットプリント(以下、CFP)があります。CFPは製品の製造、物流、使用、廃棄など、一連の流れをライフサイクルアセスメントで評価する方法です。使用する原材料や、物流方法、廃棄処理方法などが関連することから、取引先におけるCO2排出量も算出に必要な情報となります。
CO2排出量の算出には実測値を用いる方法と、公開されているデータベースを使用する方法があります。データベースを使用する方が手間はかかりませんが、自社で実施したCO2排出量削減活動などが反映されず正確性が劣るという欠点があります。精度の良いCO2排出量算出には実測値を用いる必要がありますが、手間やコストが増えるという問題があります。
多くの企業ではCO2排出量を算出する部署と実際に排出する部署は異なるため、情報を複数の部署間でやり取りする手間が発生します。例えば工場で使用する電力量を算出する場合、環境部署と製造部署間で情報共有が必要ですが、スムーズにやり取りできない場合があります。さらに原材料メーカーや配送業者など、取引先からCO2排出量を入手する場合は情報収集がより困難になります。
手間のかかるCO2排出量算出を、自動化サービスで対応する企業が増えています。導入にはコストがかかりますが、工数削減や算出精度の向上などのメリットがあります。ここでは三つの自動化サービスの機能や特長を解説します。
アスエネはクラウド上でCO2排出量を見える化して、削減計画作成や情報開示を支援するサービスです。AIを活用してCO2排出量の算出工数を約70%削減可能であり、国際基準や温対法に遵守した報告レポートの自動作成が可能です。そのほかに再エネ、省エネサプライヤー、カーボンオフセットなどさまざまな手法から最適な選択を行うワンストップソリューション機能が特徴です。
e-dashは請求書の画像データをアップロードして、CO2排出量を可視化できる手軽さが特徴のサービスです。排出量以外にもコストや使用量を可視化する機能や、目標設定や進捗管理が可能です。省エネ法やSBT認証取得支援が可能な報告書をワンクリックで作成できます。
zeroboardはCO2排出量算出の工数を削減しながら、サプライチェーンや製品、サービスごとの排出量に分類分けが可能なサービスです。それにより重点的に排出量削減が必要な項目が判断できます。算出に使用した証憑管理や、承認・申請機能によるガバナンス強化などの特徴があります。またGHGプロトコルなど国際的な規約や、国内の環境法などに基づいた報告書を自動作成できます。
2023年にグラスゴーで開催されたCOP26で、地球平均気温が過去最高水準を記録したことが報告されました。これによりCO2排出量算出はさらに緊迫感をもって企業に取り組みが求められることが予想されます。排出量算出の自動化サービスは導入コストがかかりますが、工数削減や算出精度向上・排出量削減の効果改善などメリットがあるため、総合的な判断で導入を検討することが重要です。