DXは一般企業だけでなく、各自治体にとっても不可欠な施策です。ここ数年で行政サービスの多くがデジタル化を実現し、サービスの利便性向上や運営効率の向上が見られましたが、その上で重要な役割を果たしているのがLGWANの存在です。
この記事では、そんなLGWANとはどのような技術なのか、なぜ自治体のDXにおいて重要な役割を果たしているのかについて解説します。
LGWANは「Local Government Wide Area Network」日本語では「総合行政ネットワーク」として知られている技術です。
通常のネットワークとは異なり、自治体間のコミュニケーションや相互サービス運用を強化することに特化した技術であり、閉域ネットワークを採用している点も特徴です。
普段私たちが生活や業務の中で重宝しているオープンなインターネットを使用しないことで、高品質なサービスを届けることに大きく貢献しています。
2000年代前半から徐々に普及が始まったLGWANは、クラウド技術の普及などに伴いその役割が当初よりも飛躍的に大きくなっていき、地方自治体のDXを支えるインフラとして欠かせない存在となりました。
LGWANのポテンシャルを引き出す上で重要な役割を果たすのがLGWAN-ASPの存在です。LGWAN-ASPとは、端的に言えばLGWANの回線を通じて利用できるアプリケーションのことを指し、民間企業や公益事業者が開発、提供しています。
ネットワークインフラが整備されていても、それを使いこなすためのサービスが普及していなければ意味がありません。LGWAN-ASPはLGWANの利用を前提としており、自治体のニーズに合わせて開発されているため、現場の課題解決において存在感を発揮しています。
LGWAN-ASPを用いることの最大のメリットは、各自治体が独自にアプリを開発する必要がなくなる点です。また、同じフォーマットや設計のアプリを日本全国で利用できるので、サービス品質の地域差や技術格差を埋める上でも役に立ちます。
LGWAN-ASPの代表例としては、電子申請システムやグループウエアや共通規格の納税サービスの提供などが挙げられます、
LGWANの導入は業務効率化や投資の重複回避、行政サービスの向上、セキュリティ強化など多くのメリットを行政や行政サービスを利用する市民に提供します。
DXによる恩恵を受けるのはもちろん、DXに必要な設備投資が自治体の間で重複してしまう事態を回避し、リソースの最適化を促せます。
また、全国で規格化されている質の高いサービスをどこからでも利用できる環境の整備に役立ち、行政サービスの品質向上を実現してきました。
加えて閉域ネットワークを使用しているので、第三者の不正アクセスをはじめとするサイバー攻撃のリスクを減らし、安全なサービス提供につなげています。
このように、LGWANの導入は多くのメリットを地方自治体にもたらし、行政のDXにおいて重要な役割を果たしてきましたが、一方でデメリットもあります。
LGWANは閉域ネットワークを採用するものであるため、通常のインターネット利用とは別個に運用環境を整備する必要があります。
そのため、ネットワーク管理のコストが大きくなり維持管理負担の増加につながることから、デジタル運用のコスト削減が確実に進むかどうかは議論の余地があるでしょう。
とはいえ今後行政のDXは不可欠なものであり、従来よりもデジタルコストが大きくなることは確実であることから、想定の範囲内の負担であるともいえます。
デジタル関連予算を多めに確保することによる、行政サービスの向上に期待したいところです。
この記事ではLGWANとはどのような技術なのか、LGWANの導入によって地方自治体のDXはどのような恩恵を受けてきたのかについて解説しました。
LGWANは自治体のDX推進に役立つだけでなく、住民サービスを向上し、より住みよいまちづくりを進めながら、コストの削減も実現できるという、魅力的な技術です。デジタルコストの増加は懸念されるものの、それはDXにおいては不可避の事態でもあるため、この点を深く懸念しないことも求められるでしょう。
積極的なLGWANやLGWAN-ASPの活用を促し、スマートな自治体作りを期待したいところです。