パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社
モバイルソリューションズ事業部 増冨 千明氏
モバイルソリューションズ事業部 明石 正高氏
パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社
パートナー営業本部 上中 一也氏
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、急速に普及したリモートワーク。普通の働き方として受け入れられる一方で、労務管理や生産性低下の課題が浮き彫りになっています。このような状況の中、より良い働き方に変えていくことをコンセプトとして開発されたのが「しごとコンパス」です。先の見えないニューノーマルの時代において、しごとコンパスが働き方にどのような指針を示しているのか、パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社のモバイルソリューションズ事業部 増冨 千明氏、明石 正高氏、システムソリューションズジャパン株式会社 パートナー営業本部 上中 一也氏に伺いました。
今回伺ったのは、パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社です。同社はパナソニックグループ全体のBtoBソリューション事業を担っています。
同社の事業は大きく分けて二つあります。一つは現場プロセスイノベーション領域のソリューション提供です。空港のゲートでAI画像認識処理による顔認証を行いパスポートと照合する「顔認証ゲート」や、物体認識技術とプロジェクションマッピング技術を組み合わせた「荷仕分け支援システム」など、数々のプロジェクトを手掛けています。「決まったソリューションを提案するというよりは、お客様の課題を解決するためにどうしたらいいのか、ディスカッションを通して解決策を導いていくというプロセスを大切にしています」(上中氏)。
もう一つがBtoB向けのAV機器やセキュリティカメラ並びにIT関連のプロダクツ事業であり、その中でも今回ご紹介させて頂くのはモバイルに特化したノートパソコン「Let's note(レッツノート)」シリーズと関連するサービスソリューションです。Let's noteは、落下時の非故障率91.2%、超軽量・長時間稼働を実現しており(※出所:IDC Japan, Japan Personal Computing Quarterly Model Analysis 2020Q2 Share By Company 13インチ未満のノートPC+コンバーチブルPC (Ultra Slimを除く))、16年連続で国内モバイルノートPCシェアNo.1を誇ります。リモートワークが爆発的に普及したことで、場所を選ばない働き方の手段としてノートPCのニーズが高まりました。それと同時に「働いているのか見えないのでわからない」といった労務管理の難しさが浮き彫りになっています。こうした労務管理の課題を解決するだけでなく、生産性を向上させるためのツールが「しごとコンパス」です。
「しごとコンパス」は前身のサービスを経て2019年4月に提供開始されました。当時と比べると、しごとコンパスに対するニーズは大きく変化していると増冨氏は語ります。「当時は残業時間の抑制を目的として導入するお客様が多かったのですが、リモートワークが普及した今では勤務エビデンスとして活用するお客様が多くなりました」(増冨氏)。
労働基準監督署では労働時間の適正な把握のための客観的なデータとしてパソコンの使用時間の記録等を企業に求めています。また上司も部下の働いている様子がわからないと不安を抱く結果になります。しごとコンパスではPCの稼働状況の収集・分析機能を備えており、PCの稼働状況は10分間隔でクラウドに収集されるため、ほぼリアルタイムに把握することができます。また管理者だけでなく自分自身でもレポートを確認し、作業の振り返りをすることが可能です。さらに勤怠データと連携することで、勤務時間の申告と実態の乖離を検出することもできます。
①スケジュール状況 ②PC操作状況 ③申告勤務時間 ④アプリ使用状況がひと目でわかる画面が提供されており、仕事の振り返りに活用できる。
その次のステップとして期待されているのが、生産性の向上です。「リモートワークが続く中で、生産性が下がっているという声も聞かれます。この状況でいかに生産性を上げるかについてご相談をいただくことが多くなっています」(増冨氏)。
しごとコンパスでは、スケジューラーと連携することでPCを使わない移動時間、お客様への訪問時間、ブレインストーミングや情報共有の時間を可視化しています。またアプリケーションの使用状況も確認できます。「会議の区分やアプリケーション別に集計することで、どの作業に時間がかかっているかといった分析も可能です」(増冨氏)。
①スケジュール状況分析 ②アプリ状況分析 がグラフ化されており、傾向を分析して改善策を打ち出すことができる。
同社では社内でしごとコンパスを使った生産性向上に取り組んでいます。その名も「爆生(ばくなま)プロジェクト」。爆発的に生産性を向上させたいという思いで名付けました。
爆生プロジェクトで実施したのは、「会議」「営業」「コミュニケーション」「学び方」の改革です。例えば会議では1時間の会議を45分に短縮し、アジェンダを作ったりファシリテーターを立てて時間内に結論を出せるように進行したりする取り組みを行いました。「難しい改善ではありませんが、それでも会議時間を25%減らすことができ、87%の人が『会議の質が向上した』と回答しました」(明石氏)。
また営業活動ではコロナ禍により顧客接点時間が少なくなっていました。そこでオンライン商談を増やす取り組みをしたところ、コロナ禍以前よりも顧客接点時間を1.3倍増やすことができました。「以前は移動時間の方が顧客接点時間よりも多かったのですが、今は移動時間が減り、顧客接点時間を増やすことに成功しています」(明石氏)。
爆生プロジェクトでは、しごとコンパスを活用することで、実行施策による成果の見える化をしている
しごとコンパスはPCの稼働状況を収集し分析するものであり、導入したからといって生産性が向上するわけではありません。しかし適切な改善策を見つける足掛かりとなると明石氏は語ります。「KPIを設定し、改善したらしごとコンパスでビフォーアフターの数値を比較することが大切だとわかりました」(明石氏)。
また定量的な成果が周囲を説得させる材料になります。「数値で成果が表れるため、次第に反対する人も納得してくれるようになり、取り組みが広がりました」(増冨氏)。
しごとコンパスのユーザー企業は、どのような使い方をしているのでしょうか。事例をもとにユースケースを紹介していただきました。
ある企業では勤務場所を固定しない制度を導入するにあたり、勤務エビデンスを収集することを目的として導入しましたが、隠れ残業が多く発見されるという思わぬ効果がありました。なぜ隠れ残業が多いのかをデータをもとに掘り下げた結果、担当ではない仕事が割り振られていたり、納期があまりにも短く業務が深夜に及んでいたりしていたことがわかりました。「単に残業を削減するのではなく、残業の原因を掘り下げることができた好例です」(増冨氏)
コールセンターの事例では、熟練の担当者と、新人の担当者とでしごとコンパスを使って処理の比較をするという取り組みを行いました。しごとコンパスでは「提案書という名前のファイルを編集していた」「対応履歴というファイルで表計算をしていた」など、その人がどんな仕事をしていたのかが類推できるようになっています。こうした詳細なログを分析することで、熟練担当者と新人担当者がそれぞれどのように処理しているかを比較したところ、新人担当者は一連のプロセスの中で関連のない画面を見て情報を探すといった無駄な作業をしていることがわかりました。「分析結果をもとに処理の標準化を行うとともにシステムの改善も行い、業務を効率化することができました」(増冨氏)。
しごとコンパスでさらなる生産性向上に貢献するために、同社は「RPA適正診断ソリューション」を提供しています。RPAは定型的な作業を自動実行し働き方改革に貢献するソフトウエアロボットとして大きく注目を集めています。しかしRPAの対象業務を洗い出そうとして担当者にヒアリングしても、そうした作業が当たり前となっているためなかなか候補が出てこないという声も聞かれます。
RPA適正診断ソリューションでは、しごとコンパスで記録したログを同社が解析し、反復している作業や長時間作業を洗い出してレポートします。企業はリストアップされた作業からRPAが適用可能な作業か、費用対効果があるか等を判断してからRPAを導入できます。(増冨氏)。
残業抑制から生産性向上へという働き方改革の変化に、企業はどのように向き合っていくべきなのでしょうか。「やはり働き方を可視化するのが一番大切なことだと思います。ウィズコロナの現在では先行きも不透明ですが、定量的に現状を把握して進むべき道を見つけることが、アフターコロナの働き方を作っていくと考えています」(明石氏)。「働き方改革は、企業が利益を上げ、社員が働きがいを持つための手段でしかありません。当社はそのゴールに向けて働き方を良くしていこうとする企業さまと共に考えながら伴走支援していきたいと考えていますので、ぜひご相談ください」(増冨氏)。