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EUVリソグラフィとは?先端半導体の微細化を支える技術について解説

レンテックインサイト編集部

EUVリソグラフィとは?先端半導体の微細化を支える技術について解説

半導体はこれまで微細化を求めて技術進化を続けてきました。最先端の半導体は数nmオーダーのプロセスルールに達しており、この微細化を可能にしているのがEUVリソグラフィ技術です。本記事では、現代の半導体製造には欠かせないリソグラフィ技術の概要と、EUVリソグラフィ装置を製造できる唯一のメーカーであるASMLについて解説します。

リソグラフィ技術とは

リソグラフィ技術は微細な回路パターンを形成する工程に関する技術で、半導体の微細化において肝となっています。EUVリソグラフィ技術の実用化により、数nmオーダーの回路パターンの転写が可能になりました。

リソグラフィ技術の発展

半導体製造においてリソグラフィ(露光)とは、ウエハーと呼ばれる基板上に微細な回路パターンを形成する工程のことです。ウエハー上にフォトレジストと呼ばれる感光材料を塗布し、回路パターンを掘ったマスクの上から光を照射します。その後、現像液を用いて不要なフォトレジストを除去すると、ウエハー上に回路パターンが形成されます。光の波長が短くなるほど細く解像度の高い光となるため、微細な回路パターンを転写できます。

リソグラフィ技術は、より短い波長の光源を利用できるよう進化を続けてきました。1980年代には436nmの紫外線、2000年代には193nmの深紫外線が主流でしたが、2010年代に入ると13.5nm波長のEUV(極端紫外線)が実用化されました。リソグラフィ技術の進化によりトランジスタの集積密度の向上を可能とし、チップの性能向上と省電力化を実現しています。

EUVリソグラフィとは

EUVリソグラフィは、半導体リソグラフィ技術の歴史の中で最も短い波長の光源を使用する最先端技術です。これにより、従来の技術では不可能だった数nmオーダーという微細な回路パターンの形成が可能になりました。EUVリソグラフィを実現するにはさまざまな課題があったため、実用化に成功しているのはオランダにあるASMLの1社のみです。

なお、半導体のプロセスルールは元々トランジスタのゲート長を示す値でした。しかし近年は定義が変わってきており、実際のところは加工精度の目安の数字と捉えておくとよいでしょう。加工精度は光の波長に大きく依存するため、13.5nm波長のEUVで数nmオーダーの線幅を実現するのは困難です。

EUVリソグラフィには多くの技術的挑戦がありましたが、特に光源の生成や光の吸収問題の克服が課題でした。EUVを生成するために、スズにレーザーを照射して温度50万度のプラズマを発生させる技術が確立されました。

また、波長が短い光ほど物質に吸収されやすくなるため、生成したEUVがレンズや空気中の成分で吸収されてしまい、ウエハーまで届きにくいという問題もあります。そこで、発生したEUVがチップに届くよう、ミラーを複数枚使用してEUVの経路を調整する光学システムが開発されました。このようにさまざまな課題を解決してEUVリソグラフィ技術が生まれたのです。

EUVリソグラフィとは?先端半導体の微細化を支える技術について解説 挿絵

ASMLとEUVリソグラフィ装置

EUVリソグラフィ技術が抱える課題を解決し、実用化に成功したのがオランダのリソグラフィ装置メーカーであるASMLです。EUVリソグラフィ装置を製造できるのは世界でもASMLの1社のみで、世界中の半導体メーカーに装置を供給しています。これまで日本をはじめとするさまざまな国のメーカーがEUVリソグラフィ装置の開発に挑戦しました。しかし技術的な課題を克服できたのはASMLのみで、他社は実用化にまで到達できていません。

ASML が開発したEUVリソグラフィ装置は1台あたり40万個以上の構成部品があり、価格は数百億円にも達します。ASMLは自社のみでEUVリソグラフィ装置をすべて開発したわけではなく、多くの部品は世界中の5000社以上の供給業者から調達しています。ASMLの成功はこれらの関連企業との連携によるものであり、多くの企業を束ねて管理するシステムを構築していることがASMLの強みです。

EUVリソグラフィで最先端の微細化が可能に

EUVリソグラフィ技術は、半導体製造プロセスのうち回路パターンを形成する工程に用いられ、微細化を求める半導体産業において不可欠な技術です。微細化が進むほどチップの性能向上や省電力化といったメリットがあるため、多くの半導体装置メーカーが開発を続けてきました。そして波長13.5nmの極端紫外線を使うEUVリソグラフィ装置の誕生により、数nmオーダーという最先端の半導体製造が可能になりました。

EUVリソグラフィ装置の製造に成功した唯一のメーカーがASMLで、この分野において世界をリードする存在となっています。装置の部品を製造する供給業者は5000社以上にも達し、EUVリソグラフィ装置は世界で最も高額な装置とも言われています。未来の半導体技術の発展の鍵となるEUVリソグラフィの進化について、今後も注目してみてはいかがしょうか。

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