電池技術はハイテクの発展と関わりの深い分野であり、日本のメーカーも独自のノウハウで高い競争力を有しています。この記事では、次世代の電池として注目を集めるコバルトフリー電池について、その概要や注目の背景を解説します。
コバルトフリー電池とは、簡単に言えばレアメタルであるコバルトを使わないリチウムイオン電池のことです。 コバルトは希少性が高く、日本国内では確保が困難であることから、輸入資源に頼らなければ満足に電池を開発・生産することができません。その上、近年コバルトの調達コストが上昇しています。そのため、コバルトフリー電池が実現すれば、コバルトに依存しない電池生産が可能になることから、大きな技術革新や市場競争力の強化につながることが期待されます。
コバルトフリー電池は何年も前から開発が続けられており、近年ではパフォーマンス改善や大容量化が進み、高い実用性が期待されています。
コバルトフリー電池が従来の電池に置き換わることで、社会は多くのメリットを期待することができます。コストの削減はもちろん、安全性の向上や環境負荷の低減など、時代が求める技術であることが期待される理由です。
コバルトフリー電池は、コバルトの調達コストを気にすることなく電池を量産できるので、電池や電池を使った製品のコスト削減につながります。
コバルトを産出できる地域は世界でも限られており、その一つがロシアです。ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、ロシアからのコバルトの輸入にもリスクを抱えるようになっていることから、コバルトフリー電池は地政学上のリスクを回避する上でも重要な役割を果たします。
コバルトフリー電池は、電池としての安全性も高いと言われる技術です。というのも元々コバルトは引火性が高い物質であり、コバルトを含む電池は発火の恐れもあることから航空機などへの持ち込みなどで制限を受けることがあります。
一方でコバルトフリー電池はそのような引火性を抱えておらず、より安全に電池を利用できるため、デリケートな環境での運用においても発火のリスクは最小限に抑えられるでしょう。
コバルトに頼らない電池が普及すれば、コバルトの採掘や生産に伴う環境リスクや人道的リスクを削減することにもつながります。コバルトの採掘には環境汚染の弊害が伴うだけでなく、劣悪な採掘環境によって現場作業員が危険に晒されているケースも少なくありません。
コバルトフリー電池の開発は、こういった倫理や環境上の問題を回避する上で重要な役割を果たし、企業のSDGsの達成にも有意義なものとなるはずです。
コバルトフリー電池の量産が実現した場合、具体的にどのような未来を期待することができるのでしょうか。
一つ注目したいのは、安価な電気自動車(EV)の登場です。電気自動車は環境負荷が小さく、騒音にも配慮し近年は長距離も走れるようになったと言われていますが、ネックとなるのが価格です。
ガソリン車と比べると価格が高い傾向にある電気自動車ですが、コバルトフリー電池の登場により、安価なバッテリーで十分な走行距離が確保できれば、より庶民的な価格で電気自動車を購入できるようになるでしょう。
また、コバルトに頼る必要のない電池の登場は、電池をより多面的に活用できる機会をもたらしてくれるかもしれません。ガソリンを使用して駆動する機器を電池駆動に置き換え、それでいて安価に購入できるようになるので、二酸化炭素排出量削減に貢献できる可能性も出てくるでしょう。
この記事では、コバルトフリー電池とはどのような技術なのか、なぜ注目されているのかについて解説しました。
コバルトフリー電池はパフォーマンスや実現可能性を懸念されていましたが、大手メーカーの東芝では今後数年で量産化の目処が立つとしています。
コバルトフリー電池の普及が実現すれば、日本はもちろん、世界のエネルギー事情やテクノロジー開発にも多大な影響をもたらすと考えられ、今後10年から20年で世界的なエネルギー革命が進んでいくことも夢ではないでしょう。