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IoTを用いた生産設備の効率改善

レンテックインサイト編集部

IoTを用いた生産設備の効率改善

近年インターネットの普及が進み、私たちの暮らしや企業の中でIoTの活用が進んでいます。IoTはモノのインターネットと呼ばれており、身近なところでは家電製品に搭載され生活の利便性を向上させています。また工場の生産設備にも導入が進められており、トヨタ自動車、コマツ、富士通など大企業を中心に展開され始めています。

生産工場へのIoT導入の背景

IoTは2015年にドイツで始まったインダストリー4.0で必要となる技術で、センサーのデータをインターネットで収集し、ビッグデータからさまざまな解析を行い課題解決する技術です。従来の情報処理システムでは作業者による手入力で、多くの工数がかかっていた分析作業が驚くほど高速で手間なく処理することが可能になります。

さらに工場の生産ラインへIoTを導入することで、コストや品質などの改善に繋がると期待されています。

生産ラインで導入されるIoTとは、複数のセンサーから得られるデータを用いてインターネットを介してビックデータを構築します。そして構築されたビッグデータは分析支援ソフトによって生産ラインの実態を明らかにします。その後課題解決するソフトウエアによって生産ラインの抱える問題を解決する仕組みです。

近年ではさらにAI(人工知能)によってビッグデータを分析、解析、評価することで革新的な生産ラインの改善に取り組む企業が現れています。AIはまだまだ発展途上の技術ですが、大量のデータを高速で処理するだけの技術であったところから、ニューラルネットワークを活用したディープラーニングへと進化を遂げています。

例えば大量の画像データを与えると、画像分類を行い特定の動物を探し出すことに成功した事例があります。つまり与えられたビッグデータの中から、違いを発見し自ら解決策を見つけ出すという役割を果たすことが可能になるということです。

IoTによる生産設備の総合効率診断システム

生産設備を最大限に使いこなしているかを示す指数が設備総合効率で、IoTの導入により総合効率を効率的に改善することが期待できます。

設備総合効率を求める具体的な計算式は以下の通りです。

設備総合効率 = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
= (稼働時間/就業時間) × (設備実速度/設備最高速度) × (良品数/全生産数)

従来の生産ラインでは設備総合効率を求めるために、作業者が記録した稼働時間や生産数などのデータを基に生産管理部署が計算していました。一方IoTを導入した生産ラインでは、設備総合効率は生産ライン内の各センサーからのデータを収集して自動的に算出できます。どのようなセンサーを用いて算出するかは生産ラインの種類や構成などにより異なりますが、基本的な考え方は以下のようになります。

時間稼働率

稼働時間は設備起動から出来高がカウントされている時間で算出します。例えば作業者が設備起動ボタンを押したところでカウントを開始し、停止ボタンで終了します。これらから就業時間を割ることで時間稼働率を算出します。

性能稼働率

その設備の実速度と設備最高速度で動作した時の時間を用いて性能稼働率を算出します。

良品率

良品率は、全生産数とその中でセンサーが不良品をカウントした数を差し引いた良品数を元に算出します。

IoTを用いて設備総合効率改善する方法

IoTを導入して設備総合効率を改善する方法を一つずつ解説します。

時間稼働率の改善方法

時間稼働率は非稼働時間を減らすことで改善されます。IoTを導入した生産ラインでは、設備ごとに異常停止時間や異常内容のデータが蓄積されているので、非稼働要因のパレート図を自動作成できます。パレート図をもとに優先度の高い対策を検討することで、コストや労力を極力かけずに時間稼働率を改善できます。

性能稼働率の改善方法

性能稼働率の改善には設備の動作時間を短縮する必要があります。短縮した場合は製品の品質への影響が起きる可能性があり、事前にリスクを検討し、場合によっては回避策が必要になります。例えば加工設備の場合、ビッグデータから製品の寸法精度がどの程度ばらつきがあるのか調べた上で、最大限上げられる加工速度を見極める方法が考えられます。

良品率の改善方法

良品率の改善には、不良品の削減が必要となります。IoTで集計した不良発生要因のパレート図をもとに、優先度の高い対策を実施します。さらにビッグデータから気温や湿度などの外部環境、設備のさまざまな稼働条件の中から不良発生につながる原因を見つけ出して対策します。

IoTを用いた生産設備の効率改善 挿絵

IoT導入の今後の流れ

国内の製造業では人手不足や高齢化で技術の継承が進まない問題が顕著になってきています。IoT化は生産ラインの工数削減や品質の安定化などが可能で、これらの問題の一つの解決策になる可能性があります。大手企業を中心に活用の場が広がっており、今後さらに幅広い業種や企業で導入されていくことが予想されています。

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