この5年で最も大きな進歩があったテクノロジーとして評価できるのは、やはりAI領域でしょう。AIが扱える情報の量はもちろん、その精度も飛躍的に向上し多面的な観点から答えを導くことができるようになりました。
この記事では、そんな最先端のAI活用を実現する上では欠かせない、マルチモーダルAIとはどんな技術なのかについて活用ケースとともにご紹介します。
マルチモーダルAI(multimodal AI)とは、簡単に言えば複数の種類の情報を同時にインプットして、与えられているタスクに対しての最適解をアウトプットできるAIです。
これまでのAIは、テキストのインプットに特化したAI、画像のインプットに特化したAIのように、特定の種類の情報しか扱うことはできないというのが一般的でした。しかしマルチモーダルAIの場合、テキストと同時に画像や音声も処理できるようになったことで、それぞれから得られる情報を互いに関連付け、答えを出すことが可能になったというわけです。
マルチモーダルAIの登場は、AIを使ったハイテク開発を高いレベルまで押し上げることとなりました。
マルチモーダルAIの最大の強みは、人間により近付いた自律的で多面的なアウトプットが可能である点です。
人間が高度な判断能力を有しているのは、意思決定が可能な知能が備わっていることもそうですが、高度な五感を備えていることも重要な要素です。
視覚や触覚などの感覚を使い分けることで周囲の情報を迅速かつ正確に処理し、答えを出すことができるというわけです。
マルチモーダルAIは、いわば人間の五感を模倣するような特徴を備えているAI技術です。人間が五感を使い分けるように多様な情報を等しく分類しながらタスクに取り組むことができ、従来のAIでは辿り着けなかった高度な答えを導き出します。
マルチモーダルAIは、あらゆる領域での活躍が進んでいます。自動運転を筆頭に、産業レベルでは異常検知システムや次世代ロボットなど、すでに実践的な活用例も増えてきました。
自動運転技術の躍進に大きな貢献を果たしたのが、マルチモーダルAIです。車載カメラから取得した映像情報に加え、マイクからインプットした車周囲の音や衛星から得られたGPS情報などをもとにして、高精度な自動運転を実現しています。
自動運転技術は、今後カメラやマイクの性能向上に合わせ、さらに高度な技術へと進化していくことが期待できるでしょう。
工場やオフィスにおける異常検知システムも、マルチモーダルAIの実装によって強力な機能を発揮しています。
カメラの映像から異常を検知できるだけでなく、音や振動、温度や湿度などの情報をセンシングすることで、異常を早期かつ正確に把握できます。
ロボットアームの登場は製造業に革命をもたらしましたが、マルチモーダルAI搭載のロボットは、その可能性をさらに拡張できます。
物体の重さや硬さ、形状などをカメラやセンサーによって人間のように正確に認識することで、まるで人間のような手捌きを再現し、繊細な製品を高速かつ大量に生産できるでしょう。
人間のような高度な業務に従事できるマルチモーダルAIですが、一方で課題も残ります。マルチモーダルAIは多くの情報をインプットできる分、学習負担が大きいため誰でも簡単に作成ができるわけではありません。豊富なデータベースを持っている組織が開発を進めることで、「持たざるもの」との間にさらなる技術格差が生まれる可能性もあるでしょう。
とはいえ、マルチモーダルAI開発に耐えうる強力なデータソースや、学習済みのモデルが登場すれば、幅広いマルチモーダルAI活用も進むはずです。AI開発はオープンソース化することで急速に進むことも知られるようになってきている今、こういった機会が訪れる可能性も非常に高いといえるでしょう。
この記事では、マルチモーダルAIの概要や活用事例についてご紹介しました。マルチモーダルAIは多くの可能性を秘めており、AIの活用によって業務上の課題を解決できる可能性もあります。
今後10年ほどで広く一般化することも考えられるため、早期からこの技術に注目しておくことが大切です。