ホームIT情報システム部門が知っておきたいファイルサーバーとNASの違いと構築・運用のポイント

IT Insight

情報システム部門が知っておきたいファイルサーバーとNASの違いと構築・運用のポイント

レンテックインサイト編集部

情報システム部門が知っておきたいファイルサーバーとNASの違いと構築・運用のポイント

現代の企業運営において、適切な情報管理・共有の仕組みを整えることは不可欠です。
ファイルサーバーとNASはどう違い、どのように導入・運用すべきかはその前提となる基本知識といえるでしょう。

本記事では上記のポイントについてご紹介し、社内ファイル共有環境の構築について最新の状況を反映しつつ解説します。

ファイルサーバーとNASの違いとは?

ファイルサーバーとNASの違いは、“前者はサーバーの使用法の一種であり、後者はネットワークを介したファイル共有に特化したストレージである”という点にあります。

ファイルサーバーはいわば、ファイルの共有・管理に特化したサーバーの使用方法であり、サーバー自体はその他の用途に用いることもできます。
そのため、カスタマイズ性が高く権限の細かな設定や柔軟な構成の変更が可能である一方、構築・運用を担当する従業員の負担は高まります

NASは“Network Attached Storage”の略称であり、その名の通りネットワーク上で接続されたストレージのことを意味します。
「NASを購入する」などと言い表されることからも分かる通り、ネットワークを介したファイル共有を可能にする機器の名称自体がNASであり、拡張性やセキュリティ対策の範囲に制限がある一方でファイルサーバーよりも導入の負担や運用コストが軽くなる傾向にあります。
とはいえ、NASの多機能化も進んでおり、ユーザー権限の設定やさまざまなアプリケーションの接続などが可能になっています。

ファイルサーバーが古くから存在する中で、ファイル共有に用途を特化して生まれた製品がNASと考えると理解しやすいでしょう。
ただし、クラウドの登場やSSDの普及など時代に合わせてそれぞれ変化・多様化してきた歴史があるため一つのイメージで固定できないことには注意が必要です。

情報システム部門が知っておきたいファイルサーバーとNASの違いと構築・運用のポイント 挿絵

ファイルサーバーにおいては「クラウド型」が存在感を高めている

ファイルサーバーには「オンプレミス型」「クラウド型」が存在し、現在はクラウド型の存在感が高まってきています。令和4年版『通信利用動向調査(企業編)』(総務省)では、クラウド利用企業のうち64.0%が具体的に利用しているサービスとして「ファイル保管・データ共有」を回答されています。

前述のファイルサーバーの特徴はオンプレミス型に当てはまるものであり、クラウド型は導入・運用の負担が軽減できる代わりにオンプレミスよりもカスタマイズ性は低いというNASに近い特徴を持ち、さらにリソース拡張の容易さや機器購入費用の低減などNASにはないメリットもあります。
ただし、通信障害やベンダー企業のインシデントの影響といったクラウドならではのリスクも存在するため、サービスの選定には注意が求められます。

データを自社内で保有でき、従来の資産(ハードウエア、ソフトウエア、知識など)を生かしながらファイル共有環境を構築できるというオンプレミスならではのメリットが見直される動きも一部には存在します。

ファイルサーバーと一口にいってもクラウドとオンプレミスでは大幅に特徴が異なるため、NASと比較する際もその点に注意が必要です。

NASキットやクラウドストレージとの組み合わせなどNASの可能性もさまざま

ファイルサーバーと同様、NASにもバリエーションが存在し、カスタム性や導入の容易さなどの優先順位によって選ぶべき製品は異なります。

すでにHDDやアプリなどの構成が決まっている「完成品」のNASは前述したようなNASの特徴に最も当てはまっており、カスタマイズ性は低い一方導入の手間やコストが抑えられます。
一方、「NASキット」などと呼ばれる製品は自作PCのようにHDD・SSDの組み込みや設定を自分で行える自由度がある一方、それ相応の手間が生じます。

また、テレワークやBCP対策の実現手段として、NASとクラウドストレージが組み合わされる例も増えてきています。
NASはその導入の手軽さやコストの低さから、部署ごとなど複数台導入されるケースも見られます。
ただし、台数が増えるにつれて管理の難しさや容量のムダが生じやすくなるのも事実であり、別製品への移行を検討するタイミングも訪れるでしょう。

もちろん、ファイルサーバー、NASを問わずバックアップ機能やRAID機能も貴重な社内のデータを安全に保管するにあたっては欠かせないポイントです。
バリエーションが増えたことで複数の対策を組み合わせ、より冗長性を高めることも可能になっています。

問題は、ファイルサーバーかNASかではなく、適切なファイル共有環境を描くこと

ファイルサーバーとNASの違いやそれぞれのバリエーションについて解説してまいりました。

両者ともに市場の成熟とともにバリエーションが広がり、いずれかを選択するのではなく自社の人材や規模に合わせて組み合わせるケースが増えてきています。
重要なのは、適切なファイル共有環境を、現時点から未来の状態まで予測して描くことです。

IT Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next