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電子取引において「タイムスタンプ」はなぜ重要か

レンテックインサイト編集部

電子取引において「タイムスタンプ」はなぜ重要か

2024年1月1日、ついに改正電子帳簿保存法の宥恕(ゆうじょ)期間が終了し、特定の条件に則った電子取引に関するデータの電子保存が義務化されることとなりました。企業がその対応に追われる中で「タイムスタンプ」について知ることとなった方は多いはずです。

本記事では、タイムスタンプとはどのようなテクノロジーなのか、電子取引においてどのような意味合いを持つのか、今知るべき基本事項について分かりやすく解説します。

タイムスタンプとは? その技術と制度を解説

タイムスタンプとは、“特定のイベントやデータが発生した正確な日時を記録・証明するテクノロジー”です。
「ハッシュ値」と時刻情報で構成されており、前者は元データからアルゴリズムによって導き出された固定の桁数の値を、後者はその名の通りタイムスタンプが発行された時刻の情報を指します。

元データからハッシュ値が導き出されるということは、元データが変更されればハッシュ値も必然的に変更されることになります。
それと時刻情報を組み合わせることで、ある時点で元データが確かに存在していたこと(存在証明)と改ざんなどが行われていないこと(真実性)を示すことが可能になります。

上記の要件を満たすにあたっては、タイムスタンプが信頼できる第三者機関によって発行されていることが不可欠です。2024年1月現在は総務大臣による認定制度が採用されており、その指定調査機関として『一般財団法人日本データ通信協会』が存在します。
令和3年4月に「時刻認証業務の認定に関する規程(令和3年総務省告示第146号)」が制定される以前は、日本データ通信協会が「タイムビジネス信頼・安心認定制度」に基づき、時刻配信業務認定事業者(TAA)や時刻認証業務認定事業者(TSA)を認定してきましたが、国による認定制度が新設されたことでその役目を終えました。

タイムスタンプはどのような場面で活用されるのか?

技術、制度面におけるタイムスタンプの位置付けについて解説してまいりました。
ここからは、より具体的に、タイムスタンプはどのような場面で活用されるのかについて見ていきましょう。

電子取引における存在証明と真実性の確保

見積書、請求書、領収書、納品書、注文書などの電子取引データにタイムスタンプを付与することで、その文書の存在証明と真実性の確保が可能になります。国税関連書類の電子保存について規定する電子帳簿保存法では、電子データのスキャナ保存や電子データで受け取った書類の保存において要件を満たすためにタイムスタンプが有効に働きます。
ただし、クラウドシステムなどの利用によりデータの改変防止や時刻の証明が可能であれば、タイムスタンプが必ずしも必要でない場合もあります。なお、改正電子帳簿保存法では電子化したデータへのタイムスタンプ付与期限は、3日以内から最長2カ月と概ね7営業日以内に延長されました。

e-文書法における完全性の達成

国税関係書類以外にも株主総会議事録、医療関連文書、工事監理報告書など幅広いデータの電子保存について定められたe-文書法における「完全性」の要件を満たすためにもタイムスタンプは効力を発揮します。
完全性とは、電子データの削除や改変がなされないという要件のことを指します。

図面、設計書など知財の管理

自社の商標権や特許を主張するにあたっても、ある時点で元データが確かに存在していたことを証明するタイムスタンプは大いに役割を発揮します。
また、電子契約にあたって契約内容が確かに存在したことを証明し、自社の正当性を証明するにあってもタイムスタンプが有効に働く場合があります。

タイムスタンプを発行するにはどうすればいい?

さて、実際にタイムスタンプを発行するにはどうすればいいのでしょうか。

最もポピュラーなのはタイムスタンプ付与機能を持つシステムを利用するという方法です。
現代のクラウド電子帳簿保存システムや図面・文書管理システムにはタイムスタンプ付与機能やデータの完全性を証明するための機能が備わっていることがほとんどですが、不安な場合は自社の利用するシステムも要件を満たしているか調べてみることをおすすめします。
また、タイムスタンプ発行事業者と直接契約し、タイムスタンプ発行サービスを利用するという方法も存在します。

公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)のサイトでは電子帳簿保存法の要件に適合している認定されたソフトウエアの一覧も掲載されています。システムの選定にあたっては、そちらも参考にしてみるとよいでしょう。

タイムスタンプを入り口に「電子取引」への理解を深めよう

ペーパーレス化や効率化の観点から、電子取引が活発になるにつれてより重視すべきタイムスタンプというテクノロジーと、そのメリットや利用方法について解説してまいりました。

電子帳簿保存法における検索機能の確保や見読可能性の確保など、電子取引において知っておくべき要件はタイムスタンプが関わるもの以外にも複数存在します。
タイムスタンプを入口に、今後ますます普及するであろう「電子取引」への理解を深めていきましょう。

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