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OTAはどのように世界を変えるのか

レンテックインサイト編集部

OTAはどのように世界を変えるのか

自動車業界を中心にあらゆる産業でソフトウエア・ファーストの革新が進んでいます。従来のハードウエア中心のものづくりから、ソフトウエア・ファースト時代に移行することで、クルマや家電はアジャイル、かつ個々人の使い方に合わせてアップデートすることが前提となります。
そこでカギとなる技術がOTA(Over The Air)です。

本記事では、OTAとは何なのか、どのような活用可能性を秘めているのか、活用において何に注意すべきなのかなど、今知っておくべきポイントについて解説します。

OTA(Over The Air)=“無線通信を使用してデータを送受信する技術”

OTA(Over The Air)は、無線通信を使用してデータを送受信する技術です。
それはほとんど無線通信技術そのものではないか、と感じられるかもしれませんが、OTAはそれまで有線で行われることが前提にあったファームウエアのアップデートや、従来は難しかったり手間がかかったりしたソフトウエアの調整やセキュリティパッチの適用、クライアント証明書の配布などが無線で行われる点がポイントとなります。

我々の日常でOTAが活用されている事例の筆頭として挙げられるのがスマートフォンやPCです。
企業のMDM(モバイル端末管理)においてもOTAでデバイスの構成やアプリケーション管理、情報取得、盗難・紛失時のロックなどが行われるのが当たり前となっており、Windows Server Update Services (WSUS) や、Windows Update for Businessを用いたアップデート管理などでもOTAは用いられます。

その領域は、“走るソフトウエア”とも称されるコネクテッドカーやIoT機器にも広がっており、その台数が増加してできることが増えるにつれて、更新の手間やコストを削減できるOTAへの注目も高まっています。
例えば米EV大手テスラのリコール対応がOTAによるソフトウエア更新を通じて行われた事例も2023年に話題となっており、製品を売って終わりではなくアプリケーションやコミュニケーションを通じてアップデートを続ける今後のものづくりにおいて、OTAは欠かせないポイントとなることが目されているのです。

OTAはどのような利用可能性を秘めているのか

ここからは、より具体的にOTAの利用可能性を見ていきましょう。

コネクテッドカー

コネクテッドカーにおけるOTAの活用は、車両の機能とサービスを革新的に拡張します。常時インターネットに接続されているコネクテッドカーは、OTAを通じてリアルタイムでソフトウエア更新が可能です。
これにより、最新のナビゲーションデータの更新、運転支援システムの改善、エンターテインメントシステムのアップグレードなど、車両の機能を継続的に向上させることができます。

さらに、OTAはセキュリティ面での利点も提供します。
脆弱性が発見された際、迅速にセキュリティパッチを配布し、車両を保護することができます。これは、車両のサイバーセキュリティを維持する上で極めて重要です。

また、コネクテッドカーにおけるOTAの活用は、新しいビジネスモデルの展開にも寄与します。
例えば、顧客は追加機能やサービスを購入し、OTAを通じて車両にインストールすることが可能です。これにより、自動車メーカーは車両販売後も継続的な収益を生み出すことができます。

このように、OTAはコネクテッドカーの機能拡張、セキュリティ強化、新しいビジネスチャンスの創出という点で、非常に大きな可能性を持っています。

IoT・組込みシステム

その性質上、分散して配置され物理的にアクセス困難な場所に設置されることの多いIoT分野においても、OTAは多岐にわたる可能性を秘めています。

まず、OTAを利用することで、IoTデバイスに対して遠隔からソフトウエアのアップデートやバグの修正を行うことが可能になります。これにより、メンテナンスの効率化とコスト削減が実現します。

また、コネクテッドカーと同様OTAを通じて新機能を追加したりパフォーマンスの最適化を行ったり、セキュリティ面で脆弱性が発見された場合に迅速な対応を行ったりすることも容易になります。IoTデバイスは多種多様で、それぞれ異なる要件や機能を持っています。
OTAは、これらのデバイスに特化したカスタムアップデートを提供することにより、各デバイスの特性を最大限に活用することを可能にします。

結論として、OTAはIoTデバイスのメンテナンスの効率化、機能の拡張、セキュリティの強化に大きな役割を果たし、IoT技術のさらなる発展と普及に貢献する重要な技術です。

OTAの運用において申請手続きとセキュリティ対策の遵守は不可欠

車両運送法において、OTAによる車載ソフトウエアアップデートの手続きを規定する制度が創設されたのは2020年11月のこと。
下記の要件を満たし、国土交通大臣の許可を受けることで、駐車支援機能や自動車線変更機能などの特定改造も制度に組み込まれました。


  1. 申請者が、適切なソフトウェアアップデート及びサイバーセキュリティを確保するために必要な業務管理能力を有すること。
  2. 申請者が、ソフトウェアアップデートに起因した不具合の是正を適確に実施するために必要な体制を有すること。
  3. ソフトウェアアップデートされた自動車が保安基準に適合すること。

上記とともに下記の遵守事項も定められています。


  1. 許可の申請書等に所定の変更事項が生じた場合における国土交通大臣への届出
  2. ソフトウェアアップデートの実施状況、当該アップデートに関する情報の記録・保管
  3. アップデート車両のサイバーセキュリティに対する脅威及び脆弱性の監視、検出及び対応
  4. アップデートの目的及び内容、新しい機能の使用方法に関する情報の使用者への提供 等

引用元:自動車の特定改造等の許可制度を本年11月より開始します―適切なソフトウェアップデートを確保するための環境整備について― |国土交通省

OTAはその有用性と裏腹に、申請手続きやセキュリティ対策を怠れば、盗聴やサイバー攻撃の格好の的となりかねません。
IoT機器のセキュリティにおいてもSSL(TLS)が主流となりつつある今、通信時のみならず開発~廃棄まで視野に入れたルール作りとツールの導入が必要となるでしょう。

今後10年でコネクテッドカーなどとともにOTAは大きく躍進する

すでに我々の日常で活用されており、今後自動車業界やIoT産業に大きな影響を与えつづけるであろうOTAについて解説してまいりました。

第73回基本政策部会 配付資料』(国土交通省)では、2035年に新車販売台数の約9割(88%)をコネクテッドカーが占めることを予見するデータが紹介されています。
今後大きく重要性を高めるであろうOTAに、今のうちから目を向けておきましょう。

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