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HPCとは? 今、そして企業はどのように活用できるのか

レンテックインサイト編集部

HPCとは? 今、そして企業はどのように活用できるのか

企業のDXは、デジタル技術の導入、定着、活用、それを用いたビジネスモデル改革、と進展していくものです。
いわゆるスーパーコンピューターなどHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)の利用はその中でも先の領域にあるもの、と縁遠く感じられる方は少なくないでしょう。

しかし、今クラウドやAIの普及により、HPC利用は多くの企業にとって身近なものとなりつつあります。

HPCとはいったいどういったもので、今どのように用いられているのか。気になるポイントをまとめて押さえましょう。

HPCとは“非常に高速な計算を行うためのコンピューターシステム”

HPCとは1秒間に100京回など非常に高速な計算を行うためのコンピューターシステムであり、科学的研究、工学、気象予報など、高度で複雑な計算が必要な分野で重宝されています。
『京』『富岳』などが知られるスパコンもHPCとほぼ同様の意味で使われますが、HPCはスーパーコンピューターに限定されず、複数の高性能コンピューティングリソース(例えばクラウドベースのシステムや並列処理システム)を含むことがあり、より概念的なハイパフォーマンスコンピューティングの利用自体を指すこともあります。

近年、HPCの利用が身近になってきている背景には「技術の進歩」と「社会のDX」の影響があります。

「技術の進歩」とは、クラウドや高速通信ネットワークの実現により、安価かつ手軽にHPC利用が可能な環境が整ってきたということです。
月額数万円~数十万円などサブスクリプションの定額料金でHPCを利用したり、リソースが必要なタイミングで使いたい分だけ課金したり、その利用方法が多様化することでかつては導入における大規模なリソースの投資が前提となっていたHPC環境が身近なものとなっているのです。

「社会のDX」とは、設計における3Dモデリングの普及や研究・開発スピードや社会の変化スピードの加速、ビッグデータ活用への注目、SDGsを背景にした物理的リソース削減要請などによりHPCを用いたシミュレーションや計算へのニーズが高まったということです。

AWS、GCP、Azureの3大クラウドはもちろん、専用のHPCプラットフォームサービスを提供する企業も増加しており、選択肢がかつてなく広がっているのが現状といえるでしょう。

HPCは具体的にどのように利用されているのか

HPCは実際にどのような分野で活用されているのか、その典型的な事例をここでは見ていきましょう。

ものづくり・建築・建設における設計・テスト・モデリング

サプライチェーンにおける設計・テストのプロセスはコストが膨大かつ、工程全体のボトルネックとして指摘されることが少なくないため、CAEやCFDなどコンピューターモデルを用いたシミュレーションがかねてより求められてきました。
大規模な計算リソースが必要なこの領域に対してHPCが投じられるのは従来と同様ですが、そこにクラウドが導入されることでモバイルワークステーションからの操作など、新たな可能性も開かれています。
また、建築・建設業界におけるBIM導入の流れもワークステーションからのHPC利用に拍車をかけているようです。

創薬や化学領域における研究開発

薬の作用判定やヒトゲノムの解析、マテリアルズ・インフォマティクスなど、何十万ものパターンのシミュレーションや再現にあたって、創薬・化学業界で高いコンピューティングパワーが求められることはよく知られています。
フェーズによって必要な計算リソースの増減が激しい創薬や研究開発においても、オンプレミスからクラウドへとHPC利用のあり方が変化する流れが見られます。
研究開発はどれだけ早く結果を導き出し、検証した上で特許を得るかの激しい競争下にあり、HPC活用がコストに見合いやすいとも考えられます。

今注目を集めるデータ分析・AI開発

HPCが身近になったことで、自社独自のデータ分析システムの開発や金融システムにおいて与信分析や不審な動きの検知を行うAIアナライザーの開発などが進んでいます。一口にHPCと言ってもその規模や適したジョブは異なります。
CPU/GPUパワーを適した領域に割り当てることで全体最適が進み、結果としてほかの作業を進めるスピード増にもつながったという話も耳にします。HPCをかつてのイメージで固定化することなく、通常のDXの一環として利用する意識が重要です。

HPCのクラウド利用ではその特性が顕著となる

HPCは数あるITサービスの中でも、特にクラウドからの利用で発生するメリット・デメリットが顕著にみられる分野といえます。
それはコンピューティングパワーを多く消費するというその特性から考えればある種当然のことであり、クラウド経由での利用はサーバー代やスペース、電力消費などのカットにつながる一方、従量課金制の料金形態の場合、多くのリソースを消費すればその分運用コストは膨れ上がることになります。

また、パッケージ利用によってOSやミドルウエア、アプリの切り替えや最適化は容易になる一方、既存のシステム構成をそのまま再現することは難しいなどオンプレミスにはない不便さが生じることも少なくありません。

ハウジングなどオンプレミス・クラウドのハイブリッドな使い方も視野に入れながら、HPCでやりたいことの実現にも目を向けられるような高度な人材あるいはチームが必要になることは事前に押さえておきましょう。

研究機関や非営利団体によるHPC活用支援も広がっている

どんどん身近になりつつあるHPCについて、特に現在注目したいクラウドという観点にもフォーカスを当てつつ解説してまいりました。

東京大学のWisteria/BDEC-01や一般財団法人高度情報科学技術研究機構の『富岳』伴走型利用支援事業など、研究機関や非営利団体によるHPC利用の支援も行われています。
以前よりも身近なものとしてHPCを捉えなおし、活用の道を探ってみてはいかがでしょうか。

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