DX推進において重要なのが、デジタルツールの導入に伴うデータ活用体制の整備です。
特にDXが必要とされている製造業においてもそれは例外ではなく、高度なデータ活用ができる仕組みを取り入れることで、大幅な生産性向上などが期待できます。
この記事ではそんな製造業のDXに伴う「Manufacturing-X」とはどのような取り組みなのか、具体的にどんな施策が求められているのかについて、解説します。
Manufacturing-Xは、製造業において固有のデータ基盤を確立し、DX推進に役立てようというプロジェクトです。
Manufacturing-Xは、元々ドイツで提唱され、取り組みが始まりました。その先駆けとなったプロジェクトが自動車業界で行われた「Catena-X」と呼ばれるもので、これは自動車業界に共通するデータについて、共通プラットフォームを立ち上げることによってその共有を円滑にし、業界全体で恩恵を受けるための仕組みでした。
Manufacturing-Xにおいては、そんなCatena-Xの仕組みをより広い領域で実践しようというのがコンセプトとなっており、企業や国家の垣根を超えた製造業界全体でのデータ共有プロジェクトが進みつつあります。
Manufacturing-Xに企業が関心を寄せるようになったきっかけには以下の二つの背景があります。
世界ではさまざまな産業が相互に支え合いながら発展を続けてきましたが、その脆弱性が明らかになったのが新型コロナウイルスの感染拡大です。
ウイルスという国境に左右されない脅威が世界中で猛威を振るったことで、各企業は事業の停止を余儀なくされ、その結果事業継続の基盤を失ったり、競争力を失ってしまう事業者も少なくありませんでした。
また、サイバー攻撃の増加によるサプライチェーンの崩壊や、紛争・戦争の勃発による市場の混乱などによって、ここ数年は世界中で不安定な情勢が続いています。このような先行きが見通しにくい世の中においては、企業が安定して経済活動を行うことが極めて困難になるものです。
Manufacturing-X発祥の地でもあるドイツでは中小企業の数が多く、上記のような状況で致命的な打撃を受けるのも中小企業です。
こういった中小企業のリスクを低減し、社会全体で安定した事業を継続するために提唱されたのが、Manufacturing-Xというわけです。
Manufacturing-Xが目指すのは、製造業界全体で規格化されたデータを共有し、無駄のないデジタル化を各社で進めていくことにあります。
企業間のデジタル格差をなくし、全ての組織がデジタル活用に向けて前向きに取り組める基盤を確保することで、産業全体の成長を促進します。
競争力の高いビジネスモデルの構築に加え、リスクに強い、レジリエンスのある産業基盤を整備する上でもManufacturing-Xは注目されており、ドイツにおける強靭な経済基盤の構築の要となることが期待されます。
Manufacturing-Xの達成には以下の施策に重点を置く必要があります。
まずはデータを共有するための機能を開発し、ユースケースを例に共有すべき事項を業界ごとに整理していくことで、基盤を構築しなければなりません。
また、Manufacturing-Xにおいて重要なのが中小企業のデジタル化です。最も恩恵の大きい彼らへの技術的支援を提供してデジタル格差を解消することが、プロジェクトの達成に欠かせません。
加えてテクノロジーのオープンソース化やグローバルなネットワークの確保、共通の認証規格の策定をはじめとしたガバナンスの整備など、広範に連携と秩序を確保できる体制の構築も求められます。
この記事ではManufacturing-Xの概要や実現に向けて必要な取り組みとは何かについて解説しました。
Manufacturing-Xで得られるデータ活用基盤の構築は、製造業界にとって大きな追い風となることは間違いありません。
中小企業のデジタル化を主眼においたこの施策は、日本において今後のさらなるハイテク活用を推進する上でも、必要な取り組みといえるでしょう。