ホームIT「CCoE(クラウド活用推進組織)」とは? その目的や成功のポイントを解説

IT Insight

「CCoE(クラウド活用推進組織)」とは? その目的や成功のポイントを解説

レンテックインサイト編集部

「CCoE(クラウド活用推進組織)」とは? その目的や成功のポイントを解説

クラウドは社内インフラの一つとして大企業を中心に広く普及しています。

令和4年通信利用動向調査 』(総務省)によると、その普及率は72.2%に達しています(「全社的に利用している」と回答した44.9%と「一部の事業所又は部門で利用している」と回答した27.3%の合計)。

そこでご紹介したいのが、クラウドの導入とともに設置されることの増えた「CCoE(クラウド活用推進組織)」。その役割や目的、設立・運用のプロセスなどについて詳しく見ていきましょう。

CCoEは「企業や組織のクラウド活用を推進するための専門チーム」 その目的は?

CCoEは「Cloud Center of Excellence」の略称で、企業や組織内でクラウドコンピューティング技術の採用、運用、および最適化を推進するための専門チームまたは機能ユニットを指します。

クラウド活用推進の専門組織であるCCoEはシステム部門だけでなく、“部署の垣根を超えたクロスファンクショナルなチーム”として組織されることが少なくありません。
IT、セキュリティ、ファイナンス、事業部門、人事など各部門から人材が結集することで、クラウド活用を加速させるとともに情報共有をスムーズにすることがその目的として挙げられます。
また、他部門と連携することで思わぬクラウド活用のアイデアが生まれる土壌ともなります。

その役割はクラウド戦略やポリシー、ガバナンス戦略の策定から始まり、ベストプラクティスの展開や従業員の教育、トレーニング、クラウドコスト最適化(CCO)、クラウドを活用した新たなビジネスの創出まで多岐にわたります。

まさにクラウドを中心に結集した社内のスペシャルチームであり、同組織を設置することで企業のクラウド活用に向けた本気度が示されるのも効果の一つです。

とはいえ、CCoEはあくまで専門家集団と定義されており、クラウド活用の主役たる現場をときにリードしながらも、その定着をポートする立場ということは意識すべきでしょう。
企業や現場でのクラウド活用が進むにつれて、徐々に権限を委譲し、CCoEの活動を縮小──あるいは企業全体をCCoE化するのが発展ビジョンの一つとして示されます。

「CCoE(クラウド活用推進組織)」とは? その目的や成功のポイントを解説 挿絵

CCoE設立・運用の5つのプロセス

定義と目的が分かったら、次は企業がCCoEを設立・運用にあたって経ることになる5つのプロセスを見ていきましょう。


  1. CCoEチームの形成
  2. まずはCCoEチームの形成です。クラウド活用、セキュリティ、ガバナンス、実際にクラウドを活用する事業部門などから人材を募集し、チームを結成します。
    ここで重要なのがクラウド活用推進をミッションとし、CCoEを推進する熱意あるリーダーを任命するということです。CCoEチームのメンバーは、最初は~5名など少人数でも問題ありません。小規模なチームから成功体験を積み重ね、CCoEを育てるという意識も設立初期には重要です。


  3. 戦略とガイドラインの策定
  4. チームが形成できたら、次はクラウド戦略とガイドラインを策定します。組織のミッション、ビジョン、ポリシーを土台に、自社のビジネスやデジタル資産の内容に適した戦略を策定しましょう。
    ここで重要なのが、何をクラウドに移行するかだけでなく、何をクラウド化しないのか、目標に達しない場合の撤退戦略についてまで考えるということです。ここでセキュリティ、コンプライアンス、リソース管理などに関する明確なポリシーも定めます。


  5. プロジェクトを実行に移す
  6. クラウド戦略を実行に移し、PDCAを通してベストプラクティスの探究を進めます。
    ここで重要なのが、クラウド導入の効果が見込めたり、熱意ある導入推進メンバーがいたりする部署から小さく導入するということです。どんな戦略やガイドライン、仕組みであっても実行に移せば思わぬ範囲がカバーできていないことが判明するもの。実際の運用結果を反映してアジャイルに最適化を図るのが大きな失敗を防ぐ必須条件といえます。


  7. クラウド活用の輪を広げていく
  8. クラウド導入により小さな成功を達成し、ベストプラクティスが策定できたら、その輪を広げていくことに着手します。
    必要に応じてクラウドやITに関する知識・スキルを教育し組織のケイパビリティを高める、クラウドの使用状況とコストを監視・分析し、コスト最適化を進める、などCCoEに求められる役割はこの段階でも数多く存在します。


  9. クラウドのパフォーマンスを監視し、継続的な改善を続ける
  10. クラウド利用に関する自走状態の達成など、当初に設定したゴールに到達した段階で、CCoEは一旦その役割を終えることになります。とはいえ、クラウド利用のベストプラクティスは一度完成・定着すればそれでよい、というものではなく、その後もパフォーマンスを定期的に評価し続け必要に応じて改善策を実行することは欠かせません。
    この時点でCCoEを解散するとしても、そこでできた組織横断的なつながりや運用・改善の知見は組織の資産として残し続けることが求められます。

CCoEの成功に重要な「認知」と「コミュニケーション」

CCoEがその役割を発揮するにあたって重要なのが「社内に認知される」ということです。
クラウド活用推進プロジェクトの実行が進むにあたって、事業部門主体となってのクラウド利用が進められ、その相談窓口や技術的サポートとしての役割がCCoEには期待されることとなるでしょう。その際、そもそもCCoEの存在自体が社内で知られていなかったり、相談方法が知られていなかったりすれば当然ながら十分に役割は発揮されないのです。

したがって、CCoEの活動を成功させるためには、CCoEの認知向上とコミュニケーションのためのツール・場を用意することが求められます。
具体的には、相談用チャットや掲示板の開設、勉強会・ハッカソンの開催などがポピュラーな取り組みといえるでしょう。

令和2年情報通信白書』(総務省)には、2019年のアンケート調査における「クラウドサービスを利用しない理由」として「必要がない」(45.7%)「メリットが分からない、判断できない」(17.8%)などが上位に挙がっていることに言及されており、クラウド自体の意義とメリットの認知度を高めるためにもCCoEを通じたコミュニケーションは重要だと考えられます。

大きな変化を強いられるクラウド化には、チームでのプロジェクト推進が不可欠

クラウドの普及とともに、設置する企業やその事例報告も多く見られるようになってきたCCoEについて解説しました。

業務プロセスやルール、ファイル共有方法など多くの変化を社内に強いることになるクラウド導入にでは、その活用推進自体をプロジェクト化し専任のチームが取り組むことが、組織の規模が大きくなるほど不可欠になります。
これからクラウド化を進める、クラウドを導入したもののなかなか定着しない、いずれの段階でも、CCoEの設置を検討してみることをおすすめします。

IT Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next