昨今のIT環境の複雑化に伴い、IT運用管理のやり方を見直す企業が多く見られます。効率的な運用管理を実現する手法として注目されているのが、AIOps(エーアイオプス)です。本記事では、AIOpsを活用した効率的なIT運用管理をご紹介します。AIOpsを導入する際の注意点も解説しますので、参考にしてください。
AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)とは、AI技術を活用してIT運用管理の効率化・自動化を図るアプローチのことです。アメリカの調査会社であるガートナー社が提唱した概念であり、AIやビッグデータ、機械学習(ML)などの最新技術を組み合わせた手法となっています。AIOpsは、システム管理を効率化・自動化すること、IT運用管理における手作業の負担を減らすことを目的としています。
従来のIT運用管理は、データ処理やシステムの監視を自動化するのが難しく、人手による作業が中心でした。例えば、複数の担当者が24時間365日体制でシステムを監視し、異常が発生した際には担当者が手作業で問題を特定したり、復旧作業を実施したりすることが一般的でした。
しかし、近年ではオンプレミスやクラウド、仮想化環境など、企業のIT環境は多様化・複雑化しており、扱うデータ量も増加しています。そんな昨今では、従来の手作業を中心としたIT運用管理には限界が見え始めています。この課題を解決するために登場したのがAIOpsです。
AIOpsを活用することで、IT運用管理に関わる膨大なデータを効率的に処理できます。さらに、機械学習によって異常なパターンを自動で検知し、潜在的な問題を予測して事前に警告を出すといったことも可能です。
IT運用管理でAIOpsを活用すれば、下記の効果が期待できます。
・リソースの最適化
・障害の予測
・障害の原因分析
・セキュリティの強化
・ヘルプデスクの自動化
それぞれの内容を見ていきましょう。
例えば、企業がクラウド上でアプリケーションを運用している場合、アクセス数や利用者数によって必要なリソース(CPUやメモリ、ストレージなど)が変動します。AIOpsを利用すれば、利用状況に合わせて自動的にリソースを調整することが可能です。例えば、アクセスが増える時間帯にはCPUやメモリを増やし、アクセスが少ない時間帯にはリソースを削減できます。必要なときに必要な分だけのリソースを確保できるため、リソースの最適化につながるのです。
AIOpsを活用することで、ITシステムの障害を未然に予測し、トラブルが発生する前に対策を講じることが可能になります。AIOpsでは、機械学習やビッグデータ解析を利用してシステムの異常を予測することが可能です。例えば、通常のシステム稼働時と異なる兆候やパターンが見られた際に、異常として検知する仕組みが挙げられます。
AIOpsでは、障害の兆候を検知した際にすぐに対策を講じられる仕組みも整備できます。例えば、特定の異常パターンが検出された際に担当者にアラートで通知したり、自動で対応したりする仕組みを構築できます。前述したように、負荷が増加し始めた際にリソースを自動で追加して負荷分散を行うといった機能も実現可能です。このように、障害が発生する前に自動で対応できる仕組みを構築できるため、障害による影響を最小限に抑えられます。
AIOpsでは、ITシステムで障害が発生した際に過去の障害データを参考にしながら迅速に原因を分析できます。例えば「過去に同じようなエラーが発生したときには、何が原因で、どのように解決したのか」というデータを自動で参照し、今回の障害に同じ解決策が適用できるかどうかを判断することが可能です。過去の類似事例とすぐに比較できるため、原因分析のスピードを早められます
AIOpsを活用することで、ヘルプデスクの問い合わせ対応を自動化できます。ユーザーからの問い合わせに対し、迅速かつ的確に対応することが可能です。例えば、AIチャットボットを導入すれば、ユーザーからのよくある質問への回答や簡単なトラブル対応を自動で行う仕組みを構築できます。
チャットボットが即時対応することで、問い合わせの待ち時間がなくなり、ユーザーが迅速にサポートを受けられるでしょう。また、チャットボットは24時間対応が可能なため、時間を問わず対応できるメリットもあります。AIチャットボットを導入することで、ヘルプデスクの担当者は複雑な問題や専門的な対応に集中できます。担当者の業務負担を軽減できるのもメリットです。
AIOpsを導入する際は、下記の注意点を押さえる必要があります。
・データ品質の確保
・システム間のデータ連携・統合
・IT担当者への教育
それぞれの内容を解説します。
AIOpsでは、システムから収集される膨大なデータを分析し、そのデータに基づいて異常を検知したり、問題の原因を特定したりします。仮にデータが不正確な場合、システムが正常に稼働しているにもかかわらず、AIOpsが異常として認識するといったケースにつながるため注意が必要です。
データの品質を確保するためには、不正確なデータや重複しているデータを削除し、データ収集の仕組みを整備する必要があります。データの品質を確保することで、無駄なアラートやAIの誤判断がなくなり、IT運用管理の効率を高められるでしょう。
AIOpsの効果を高めるためには、企業内のさまざまなデータを統合して管理する必要があります。複数のシステムからデータを収集し、一元化することで、AIOpsがシステム全体の状況を的確に把握できます。異なるシステムのデータを連携・統合するには、データ統合プラットフォームの導入が効果的です。
AIOpsはAIや機械学習、ビッグデータ解析といった高度な技術に基づいています。AIOpsを導入する際は、IT担当者がAIOpsの仕組みや技術を十分に理解していることが重要です。まずは、AIOpsを実現できるツールの操作方法や、設定・カスタマイズの方法を理解し、適切に使いこなせるようにしましょう。IT担当者がAIOpsを効果的に活用することで、システム全体の安定性やパフォーマンスを向上させることができます。
今回は、AIOpsを活用した効率的なIT運用管理について解説しました。IT運用管理でAIOpsを活用すれば、下記の効果が期待できます。
・リソースの最適化
・障害の予測
・障害の原因分析
・セキュリティの強化
・ヘルプデスクの自動化
IT運用管理の効率化・自動化を進めることができれば、システムの安定性は大幅に向上します。AIOpsツールを導入した後は、IT担当者がツールの操作方法や、設定・カスタマイズの方法を理解し、使いこなせるようにすることも重要です。IT運用管理の効率化、負担軽減を実現するためにも、AIOpsの導入を検討してみてはいかがでしょうか。