ホームITマルチクラウド戦略とは?導入時の注意点を詳しく解説

IT Insight

マルチクラウド戦略とは?導入時の注意点を詳しく解説

レンテックインサイト編集部

マルチクラウド戦略とは?導入時の注意点を詳しく解説

近年、複数のクラウドサービスを組み合わせる「マルチクラウド戦略」を採用する企業が多く見られます。マルチクラウド戦略を採用すれば、各クラウドサービスの強みを最大限に活かし、柔軟かつ効率的な運用を実現することが可能です。

本記事では、マルチクラウド戦略の概要やメリット、導入する際の注意点について解説します。

マルチクラウド戦略とは

マルチクラウド戦略とは、複数のクラウドサービス(AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudなど)を組み合わせたIT戦略のことです。異なるクラウドサービスを併用することで、サービスの柔軟性やコスト効率、安全性などを高める効果が期待できます。

マルチクラウド戦略のメリット

マルチクラウド戦略の代表的なメリットは、下記の三つです。

サービス停止のリスクを減らし、信頼性を高められる マルチクラウド戦略を採用すれば、もし一つのクラウドサービスで障害が発生したとしても、ほかのクラウドサービスに切り替える選択肢を持つことができます。ダウンタイムを減らすことで、サービスの信頼性を高めることが可能です。

例えば、大規模なセールを実施すると多くのアクセスが集中します。サーバーが負荷に耐えられずにダウンすれば、復旧するためにサービスを一時的に停止せざるを得なくなるでしょう。 AWSをメインで使っている企業の場合、バックアップとしてMicrosoft Azureを使っていれば、アクセスの負荷を分散できます。AWSとMicrosoft Azureを同時に運用することで、サービス停止のリスクを減らし、安定して稼働させることが可能です。

コストを最適化できる

AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどは、それぞれ利用できる機能や料金が異なります。実施したい内容に合う中で最もコスト効率の良いクラウドサービスを選ぶことで、コストを最適化する効果が期待できます。

ベンダーロックインの回避

ベンダーロックインとは、特定のベンダーのサービスに依存してしまうことで、サービスや価格変更、技術進化などに柔軟に対応できなくなるリスクのことです。例えば、クラウドプロバイダーが突然料金を引き上げたり、提供していたサービスが廃止されたりすることで、それに対応するために高額な追加コストが発生するケースなどが該当します。

マルチクラウド戦略を採用すれば、複数のクラウドサービス間で柔軟にシステムを移行したり、サービスを切り替えたりすることが可能です。一つのベンダーに依存しないため、ベンダーロックインを回避することができます。

マルチクラウド戦略の進め方

マルチクラウド戦略は、下記の流れで進めるのが一般的です。

  1. 目的を明確にする
  2. 適切なクラウドサービスを選定する
  3. クラウド間の統合や管理方法を決める
  4. 継続的に運用・改善する

1.目的を明確にする

まずは、なぜマルチクラウドを採用するのかを明確にすることから始めます。例えば、下記のような目的が考えられます。

  • リスク分散
  • コスト削減
  • パフォーマンス向上
  • 規制・コンプライアンスの対応
  • 災害時のリカバリーを迅速に実施する

2.適切なクラウドサービスを選定する

続いて、目的に合ったクラウドサービスを選定します。ここでは、各クラウドサービスの特長や強みを考慮した上で選定することがポイントです。代表的なクラウドサービス三つの特長は、下記のとおりです。

  • AWS
  • グローバル企業に対して幅広いサービスを提供している。インフラのスケーラビリティが高いのが強み。

  • Microsoft Azure
  • Microsoft製品と密接に連携しているため、業務アプリケーションやエンタープライズ環境に強いのが特長。

  • Google Cloud
  • AIや機械学習、ビッグデータの処理に特化したサービスが豊富なのが強み。

3.クラウド間のデータ統合や管理方法を決める

次にクラウド間のデータの移動や、セキュリティの一貫性を保つための管理の仕組みを整えます。事前に移行テストを実施し、データの整合性を確認することで、移行時のデータ損失のリスクを減らせます。

4.継続的に運用・改善する

続いて、マルチクラウド環境を運用しつつ、定期的な見直しと改善を実施しましょう。クラウド技術は日々進化しているため、最新の技術やサービスを取り入れることで、さらに効率的な運用が可能になります。

定期的に各クラウドの利用状況をチェックし、必要に応じて調整することが重要です。

マルチクラウド戦略を導入する際の注意点

ここでは、マルチクラウド戦略を導入する際の注意点について詳しく解説します。

統合管理ツールを導入し、複数のクラウドサービスを一元管理する

マルチクラウド戦略で役立つのが「統合管理ツール」です。統合管理ツールを導入すれば、複数のクラウドサービスを一元管理できます。

例えば、Terraform(クラウドやオンプレミス環境などを一元管理するツール)やKubernetes(コンテナ化したアプリケーションを効率的に運用できるプラットフォーム)などを使うことで、クラウド間のリソース管理を円滑に実施できるでしょう。

セキュリティポリシーを統一する

複数のクラウドサービスを利用すると、セキュリティポリシーやデータの管理が難しくなります。また、データの保存場所が分散するため、各国のデータ保護法に合わせることも重要です。

マルチクラウド戦略では、セキュリティポリシーを統一し、すべてのクラウドサービスで一貫したセキュリティ管理を実施する必要があります。セキュリティ管理ツール(AWS GuardDutyやAzure Security Centerなど)を活用することで、不審なアクティビティを自動でモニタリングし、セキュリティインシデントを未然に防ぐことが可能です。

リアルタイムで使用状況とコストを把握できるようにする

複数のクラウドサービスを同時に運用すると、それぞれの使用状況や料金を追跡・管理するのが難しくなります。リソース管理を定期的に実施していないと、コストが予想外に膨らむリスクがあるため注意が必要です。

コスト管理ツールを導入すれば、クラウドサービスの使用状況とコストをリアルタイムで確認できます。例えば、AWS Cost ExplorerやGoogle CloudのCost Managementツールなどを活用すれば、クラウドサービスの利用コストを可視化することが可能です。

リソースの使用状況を定期的に確認し、不要なリソースがあれば削減するようにしましょう。

運用担当者のスキルアップも重要

クラウド技術は日々進化しているため、運用担当者は常に最新の技術やサービスを学び続ける必要があります。マルチクラウド戦略を採用する場合は、運用担当者がクラウドサービスごとに異なる仕様や操作方法に関する知識を身に付けることが重要です。各クラウドサービスの知識が不足していると、運用の効率が下がったり、セキュリティリスクが高まったりする可能性が高くなります。

運用担当者のスキルアップで役立つのが、各クラウドプロバイダーが提供しているトレーニングプログラムや資格制度です。これらを活用すれば、運用に必要な知識とスキルを習得できます。例えば、以下のような資格が提供されています。

AWS認定ソリューションアーキテクト

AWSの基本的な操作やアーキテクチャ設計に関する知識を証明できる

Microsoft Azure Administrator Associate

Azureの運用管理に関するスキルを証明できる

Google Cloud Professional Cloud Architect

Google Cloudの設計や管理に関する専門知識を証明できる

これらの資格を取得すれば、クラウド環境を効果的に運用・管理するために必要な知識を身に付けられるでしょう。

外部の専門家やパートナーのサポートを受けるのも一つの手です。クラウドサービスに精通したパートナー企業にサポートを依頼することで、運用の負担を軽減しつつ、専門的なアドバイスを受けられます。

自社の目的に応じてマルチクラウド戦略を検討しよう

今回は、マルチクラウド戦略の概要やメリット、導入する際の注意点について解説しました。複数のクラウドサービスを利用すれば、多くのメリットを得られます。その一方で、管理が複雑になり、コストが増える可能性も十分にあります。

マルチクラウド戦略を検討する際は、自社で解決したい課題や目的を明確にすることから始める必要があります。課題や目的を明確にし、計画的にクラウドサービスを活用することで、大きな効果を得られるでしょう。

IT Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next