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CFETとは?トランジスタの歴史と次世代の製造技術を紹介

レンテックインサイト編集部

CFETとは?トランジスタの歴史と次世代の製造技術を紹介

トランジスタの製造技術は半導体の微細化に伴い進化を続けており、その最前線にあるのがCFET(Complementary Field-Effect Transistor)です。従来の技術を超えた集積化と省エネルギー性を実現するCFETは、次世代の半導体デバイスに不可欠な技術として注目されています。本記事では、トランジスタ技術の歴史を振り返りつつ、FinFET、GAA、CFETといった最新技術の特徴とその意義について解説します。

トランジスタ技術の進化

トランジスタ技術は、半導体業界において長年にわたり微細化と高性能化を目指して進化してきました。この過程で、FinFETやGAA、そして現在注目されているCFETといった新技術が登場しました。

FinFETの登場

FinFET(Fin Field-Effect Transistor)は、2000年代後半に微細化の限界に挑戦する技術として登場しました。従来のプレーナー型トランジスタが2次元的な構造を持つのに対し、FinFETはチャネル領域を3次元的に立体化し、その形状が魚の背びれ(fin)に見えることからFinFETと名付けられました。

FinFETは電子の通り道であるチャネルを、ゲートが3方向から囲む構造をしています。この構造によりチャネルのオンオフをより正確に制御し、半導体の損失であるリーク電流の抑制に成功しました。FinFETの登場により、半導体の微細化は25nm以下のプロセスに進展しました。2011年には、Intelの22nm世代CPUにも導入されています。

しかし、近年ではより高い性能を持つ半導体が求められるようになり、FinFETでは十分とはいえない場面も増えています。そこで、より優れたリーク電流抑制能力を実現する技術が必要とされるようになりました。

GAAトランジスタの登場

FinFETの限界を超える次世代技術として登場したのが、GAA(Gate-All-Around)トランジスタです。GAAは、ゲートが4方向からチャネルを囲む構造を持ち、さらに高い制御性と微細化を実現します。

2022年には、Samsungが3nmプロセスでGAAトランジスタの量産を開始し、TSMCもこの技術の導入を計画しています。また、日本の半導体企業Rapidusは、2027年にGAAを使用した2nmプロセスの半導体量産を目指しています。このように、GAAは量産化が可能になった最先端の半導体製造技術として、業界全体での導入が進んでいます。

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CFET(Complementary FET)技術の概要

CFETは、PMOSとNMOSという2種類のトランジスタを垂直に積層する技術です。この技術により、従来の半導体よりもさらに高い集積度と省電力化の実現が可能となり、微細化の限界を超えることが期待されています。

CFETの技術的特徴と利点

CFETの最大の特徴は、PMOSとNMOSを垂直に積み重ねる構造です。これにより、トランジスタのセルサイズを従来の構造と比べてさらに縮小でき、同じチップ面積内により多くの機能を詰め込むことが可能です。また、トランジスタ間の距離が短くなるため、動作速度が向上し、エネルギー効率も高まります。

CFETは特にエネルギー効率に優れており、バッテリー寿命の延長や省エネ設計が求められるモバイルデバイスやウエアラブル機器において重要な役割を果たすと期待されています。例えば、スマートフォンやIoTデバイスでは、CFETを活用することで、バッテリー消費を抑えつつ高性能を維持することが可能です。

さらに、CFETは2030年代には1nm以下のプロセスノードでの実用化が見込まれており、半導体の微細化における新たな道を切り開く技術として期待されています。

CFET実用化に向けた課題

CFETの実用化には多くの技術的課題があります。まず、PMOSとNMOSを垂直に積層するという独特の構造に対応するために、材料選定やエッチング技術、さらには製造プロセスの精密な制御が必要です。また、製造工程が複雑になることで、コストの増加も懸念されています。

これらの課題を解決し、量産体制を整えるためには、半導体メーカー各社の研究開発が鍵を握ります。現在、多くの企業がCFETの商業化に向けた取り組みを進めており、製造プロセスの最適化に取り組んでいます。CFETが実用化されれば、次世代の半導体デバイスにおいて、さらなる微細化と高性能化が実現され、デジタル社会の基盤を強固にするでしょう。

CFETで半導体のさらなる微細化が期待される

トランジスタ技術は、FinFETからGAA、そしてCFETへと進化を続けており、各技術はそれぞれの時代において半導体産業を支える重要な役割を果たしてきました。特にCFETはこれまでの微細化の限界を突破し、より高性能でエネルギー効率に優れたデバイスの実現を可能にすると期待されています。

CFETは今後さらに進化を遂げ、いずれ1nm以下のプロセスでの実用化も想定されています。半導体技術の最前線に立つCFETについて、今後の発展に注目し、業界の動向をキャッチアップしておくとよいでしょう。

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